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「夕方の番組だから」

「夕方の番組だから」

若手のディレクターになったばかりの男が言う。

こいつはこんなに若いのに、なんでこんなにつまらない“規範”を内面化しちまってるんだと思った。

“規範”とは、無論、政治的に議論があり、批判を呼びそうなテーマをできるだけ正面から扱わないという、今のテレビ業界におけるそれである。

飼い慣らされているな、と思った。

教育の過程でなのか、あるいは、業界に入ってからなのか、恐らく前者であると思うが、彼は知らず知らずのうちに、その“規範”を内面化し、自らの中に監視塔を作り、自己規制するようになったのだろう。それは、無意識のコントールであり権力の寄生に違いない。

「夕方の番組だから」の続きには、できるだけ刺激の多い話題は避けるべきであり、その根拠は視聴率が下がるから、ということになるのだろう。視聴率が上がる下がるですべてが正当化される局内は、ある種異常な世界なのかもしれない。

視聴率という、目に見えない、聴衆。果たして、その聴衆は本当に存在するのだろうかと、疑問に思わない時はない。テレビは、誰のために電波を預かり、番組を作っているのか。

視聴率が下がるから、という都合の良い理由を盾にとって、本来やらなければならない、視聴者と正面から向き合うことを避けているだけなのではと、この頃よく思う。

人それぞれではある。人それぞれではあるが、ディレクターになったばかりの若手が、何も疑問を感じていないことが、なんだかとてもショックだった。

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