IPO路線を歩み続ける、その心は
どうも、すっかりコラムニスト、田村です。
株式会社アンドゲートというIT推進の会社の代表をやっています。
今回は「思想・事業・組織・金融」の中の「金融」編、特にIPOに関する考えをまとめていきます。
社内で「思想・事業・組織」は話せていても、「金融」についてはなかなか話せてなかったな、と思い、隠すことでもないので社内向けの説明をnoteで公開してみよう!という流れでお届けします。
6400字になってしまった!すまん!
IPO路線の「路線」とは何か?
アンドゲートの金融的な方針はIPO路線で進行しています。
この「路線」というニュアンスはなかなか難しいんですよね。
「目指している」かと言うと、ちょっと違う。
いや、目指してはいるんですけど。
弊社はベンチャーではありますが、スタートアップではありません。
2つの大きく異なる要因は「外部資本が入っているか?」です。
アンドゲートは外部資本が入っていません。
外部資本が入っていないからこそ「株主 = 経営者」の構図が成り立ち、柔軟で迅速な経営判断が可能となります。
その反面、外部からの圧力がなく「マッタリしてしまう」というデメリットもあります。
「マッタリ」とはスピード感のことだったり、事業規模のことだったり。
気持ちの問題と言われればそれまでですが、成長意欲の高い私でさえ「マッタリしてしまったな」という感覚はあります。
未経験なので偉そうなことは言えませんが、外部からの圧力というものは諸刃の剣、劇薬・ドーピング、悪魔との取引…そんな感覚があります。
その手段を用いてまで成し遂げたいビジョンがある、ということになります。
なお、外部資本は絶対に入れないぞ!というこだわりもなく、自己資本で生き延びてきてしまった、という解釈が正しいです。
そんな環境で7年間生き延びてきたワケですが、経営観で言えば、鼻息荒くして「IPO目指すぞ!」というイケイケ感はなく、「IPOって、別に目指すものじゃないよね。自然となるもんだよね。」という斜に構えているのは昔から変わりません。
「良い会社」の証明をするために「IPOする」という気持ちはブレずに持ち続けています。
つまらないでしょう?そういう奴なんです、田村って男は。
なぜIPO方面へ向かうのか?
倍々ゲームの納得感不足からスタート
そもそもなぜIPOの発想に至ったかと言えば、4期目のことです。
1期目から4期目まで売上が倍々で増えていき、それ自体は良いことではあるものの「このまま5期目・6期目を目指したら、数字の魔力に囚われて崩壊するな。」という漠然とした不安を感じたことがありました。
4億円の次は8億円で、8億円の次は16億円ですからね。普通に考えて無理でしょう。
そういう奴なんです、田村って男は。
では、1.4倍成長を維持すれば良いのか?
すると今度は「1.4倍」の根拠は何?とかはじまってしまうのです。
そこで見えてきたのが、東証グロース(当時: 東証マザーズ)の上場基準である「時価総額10億円以上」でした。
時価総額の算出方法は様々な方法がありますが、ざっくり言えば「売上15億円・利益率8%くらいを満たせば基準を超える」というものでした。
今思えば、これは基準は下限なので、もっと戦略的にやらなければいけませんが、会社の成長の指標にするにはわかりやすく、経営方針も立てやすいので便利な方向性だと感じていました。
「会社の終わり」は結局2択しかない
いやいやいや、そんなことでIPOを目指してどうする?という自己ツッコミもありました。
しかし「会社の終わり」もしくは「経営者・田村の終わり」はたまた「命・田村の終わり」を考えると、悪くない選択ではないかと思いました。
プロジェクト推進の専門家としては「このプロジェクトはどう終われば成功か?」を考えることが癖になっています。
何か物を買う時や、新しい趣味を始める時、人間関係でさえ、終わることを先に考えています。
「会社」についても例外ではありません。
私は、起業家・経営者に「会社をどう終わらせるつもりか?」と聞くことが趣味です。
「終わりのことを考えたことがなかった」「ずっとやり続けたい」「IPOしたい」「バイアウトしてもう一周ビジネスをやりたい」様々な回答がありますが、気がついたことがありました。
それは、究極的に言えば
「会社の終わり」は「M&Aする」か「IPOする」の2択しかない。
ということです。
ずっとビジネスを続けることはできない
「いやいや、オレはずっと今のビジネスをやっていたいけど?」
わかります。私も同じです。
しかし、私たち人類・生物には寿命があります。いずれ死にます。交通事故に遭ってしまうかも知れません。
自分が死んでも、会社は残ります。どうなるのか?
株が親族へ相続されます。相続されたらどうなるのか?
相続税を支払わなければいけません。
株は資産性がありますが、キャッシュではありません。
相続税を支払うために株を売ることになります。
はい!ここでM&Aと同じことが起こります!
買い手が良い人・良い会社なら良いですが、創業社長を失い他社に買収されるとなると影響が小さいとは言えません。
結局困るのは社内のメンバーとその家族じゃないですか。
何かしらの対策を考えておかなければいけません。
ま、その時、私は死んでいるんですけどね。ガハハハハ。
そんな話しを社内にしたら
「社員は自分で選んでアンドゲートに入社しているんですよ。自己責任で何とかします。そこまで考えなくて良いです。」
と言われました。
え?みんな、そんなにソルジャーなの?
IPOしてもMBOして上場廃止したり、M&Aした後にIPOするスイングバイIPOがあったりしますが、結局はM&AとIPOを繰り返しているに過ぎません。
そんな運命であれば、IPOしてパブリックカンパニー化することで、公的な会社として運営する方が健全であり、何より理念をより長く社会に広めることができるのではないかと考えるようになりました。
先輩方からのアドバイスという名の吐露
ありがたいことに、経営者の先輩方から様々なアドバイスをいただきます。
スモールビジネスで会社を20年以上運営してきたKさん
「IPO目指している人を"上場屋"とバカにしてきたけど、目指せるなら、目指しておけば良かった。」
2桁億円で会社を売却したHさん
「何不自由なく金を使えるようになって、ゴルフ三昧の日々だけど。張り合いがないね。自分の会社じゃないとやる気にならないし。でも、今から始めるのはしんどい。結局働きたいなら売らなきゃ良かったな。」
会社を上場させたTさん
「上場審査のときにトラブルが発生してね、大変だったね。今は市場から好き勝手言われる。もっと成長させないとね。プライベートで悪いことできないけどw その分、得たものは大きいね。」
他、様々な先輩方からアドバイスと称した吐露を頂きますが
スモールビジネス・M&Aで後悔している人はいるけど、IPOして後悔している人はいない。
ということに気が付きました。
もしかすると、M&A組はウハウハがバレないようにそう言っているだけ、IPO組は頑張ったから後悔したくない・そんな姿は見せられないという心情があるのかも知れませんが、チャレンジできるときにチャレンジすることは素晴らしいことだと思います。
M&Aされた会社の末路
あ、ここ、センシティブなので、サラッと行きます。
M&Aされた会社は、色々変わります。変わったほうが良いこともありますし、変わってはいけないことまで変わったり、変わったからこそ違う景色が見えることもあります。
しかし、それが合わないこともあります。
働く人にとっても、大きな転換期となります。以上です。
究極の2択から魂を込めて選ぶ
上記のことから、究極的にはM&AとIPOのどちらかの路線を歩むことになります。
「えー、じゃあ、IPOにしよっかな?」「じゃあ、私はM&Aだ!」
そんな軽々しく決めて上手くいくはずがありません。
それぞれに戦略があり、片方の戦略に進めば、もう片方は遠くなります。
残念ながら田村の思想は強めなので、業界や国をより良くしたい、そのためにはIPO路線を歩むことが最適だ、と判断しました。
「思想」編ではないので文章は割愛しますが、代わりにYouTube動画を貼っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=UetfNHH8QJM
IPO路線に進んで見えた景色
IPO路線に進むことを決めると、やることの山が目の前に現れます。
その山を切り崩し、1つずつ処理し、自社の糧にしていきますが、途方もない量です。
しかし、そのお陰で「良い会社」に近づいたので紹介します。
財務・中島くんが帰ってきた
これを言い始めたらメンバー全員分を言わないといけない気もしますがwIPOの準備をし始めようと考えていたとき、弊社の元メンバーで財務のプロとして独立していた中島くんが帰ってくることになりました。
タイミング的にバッチリで盗聴を疑いました。
IPO路線に入っていなければ、また一緒に働くことはなかったでしょう。
その後、IPOに関わる作業をバリバリ進めるソルジャーと化しますが、その話しはまた別の機会に。
パーパスができた
IPO準備の1つに「企業理念の浸透」があります。
ミッション・ビジョン・バリューは策定してあったものの、より良い企業理念を作る必要がありました。
取締役・北川さんが知り合いから「パーパス経営」を教えてもらったことがキッカケだった気がします。
その結果、今では採用施策に効果テキメン。
バリューに至ってはネタ扱いで浸透しています。
ビジネスモデルの方向性が見えた
何も考えなければ仕事と人をバランス良く増やしていく経営ゲームだったところ、IPO路線に入るとビジネスモデルを組み替えなければいけないというミッションが生まれました。
普通のビジネスモデルではIPOする意味がありませんからね。
別途修得したアート思考もあり、ビジネスモデル変革の方向性が定まり、中期経営計画に反映させることができました。
(実現にはまだ時間がかかりそうです)
ガバナンスが強化された
この組織規模ではやりすぎなくらい、ガバナンスが整っています。
超まともです。
「ルールはブレーキではなくガードレール」の考え方のもと、規程やワークフローが整備されました。
ちょっと手間がかかるかな?と思う面もありますが、その手間以上の効果が出ています。
利益体質になった
予実管理の一環で導入したERPによって、案件ごとの損益やメンバーごとの負荷状況がわかるようになりました。
売上があればなんとかなる!という脳筋経営から、インテリジェンスな経営に進化したように思います。
利益が安定して出るようになったことで、メンバーへの賞与も増えました。
トップラインは穏やかに
良いことばかり書いていても説得力がないので悪いことも書いておきましょう。
新規営業の組織化や案件のフィルタリングにより、売上の増加は穏やかになりました。
穏やかにでも伸びてるのはすごいんですよ!すごいんですけどね!
「売上を伸ばす時期」と「利益を伸ばす時期」が別であることを学びました。
器用であれば両立できるのかな。
ノウハウ継承が分断された
経営が現場に入ら(れ)なくなったので、ノウハウの継承が止まりました。
過去に作ったはずのワークフローはいつの間にか消滅し、伝えた知識もどこかへ行ってしまいました。
経営課題として取り扱い、再度ノウハウ作りに勤しみ始めました。
昔のノウハウを越えてやる!
IPOするメリットを見失う
揺れ動く株式市場
SaaSバブルが弾けて以来、株式市場、特にグロース市場はどんよりとした空気が漂っています。
IPOしたは良いものの、その後の業績が振るわず低迷し、結果的に「上場ゴール」扱いされてしまう多くの企業たち。
最近では株価が乱高下し、その混乱は一般の人にもわかるほどです。
そんな株式市場に公開することは、相当な勝ち筋を持っていなければ挑めません。
今IPOしている会社は「IPOせざるを得ない状況にあるから」です。
外部からの圧力、ですね。
エクイティ調達するほどの資金需要がない
IPO準備を進める過程で利益体質に変換しましたが、その事がIPOから遠ざけることになります。
なぜなら、黒字で運営できているのであれば資金は自分たちで作れるからです。
社外取締役からも「利益を爆発させるプランが必要」と指摘がありました。
黒字でも、エクイティ調達によって利益が10倍になる想定があれば、第三者から見ても「やるべきだ」という判断になります。
資金の使い道が見えなければ、また、その実現可能性がなければ、エクイティ調達する意味はありません。
金融機関や周りの経営者からも「黒字ならIPOしなくて良いのでは?」と言われる始末です。
それに対して、私はこう言ってやりましたよ。
「ですよね!!!」
お前が儲けたいんちゃうんかい
IPOすると、漠然と創業者が金持ちになるイメージがありますよね。
でも、んー、まぁ、そんなに良いものでもないかな、と思います。
だって、私、株を売ることができないですから。
創業者が株を売ることは、創業者がその会社の成長性に限界を感じていると捉えられて、株価が暴落します。
一部は売っても許して貰えるみたいです。
それくらいは許して欲しいところです。
リスク取ってますから、命削ってますから。
そもそもね、この仕事が好きで起業しているんですよ。ええ。
IPO準備に金がかかる
IPO準備を進めて会社が進化したことは間違いありませんが、ある程度底が見えてくると、最初ほどの投資対効果は得られません。
監査にも年間数千万円の費用がかかります。
その金額分をメンバーへの還元や事業投資に回したほうが良いのでは?という考えに至るのに時間はかかりませんでした。
路線は変えていない、しかし、目指していない
現状、N-2期と呼ばれるフェーズで手続きを止めています。
何故かというと、これ以上進めるとN-1期・N期と止められず、費用がかかるからです。
費用がかかるということは、本当はまだIPOしたくないけど、もったいないからIPOする、といった迷いが生まれます。
「IPOはできるうちにしておけ」派と「IPOできるのは1回だけだから慎重にやれ」派がいますが、現在は後者の流派に属しています。
折角、外部の圧力がない状態でここまで来れたのです。
強固なビジネスを作り、資本投下をすれば事業成長が見込める状態、即ち、資金需要が生まれた状態にし、満を持してIPOするストーリーも魅力的だと思いませんか?
「今だ!」と思うタイミングから3年かければIPOできる状態になっています。
内部統制は経営管理部が整えてくれました。
あとは事業部がフルスロットルでかっ飛ばすだけです。
そして、意志を持ってIPO準備を止めているからこそできることがあります。
管掌役員制度の一時解除、役員の現場介入禁止の一時解除、社長の単独行動禁止の一時解除(牽制付き)。
迷惑な話しかもしれませんがw現場に役員が現れて引っ掻き回します。
もちろん、IPO基準での企業運営は継続します。
中期経営計画を作って、予実管理をして、月次で決算を締めて。
でも、これって、IPOに関わらず「良い会社」なら当たり前にやるんですよね。
当たり前のことを当たり前にやる。
顧客と市場に向き合う。そして、仲間に向き合う。
結果的に事業が成長したとき、株式市場の方から「こっちへ来てくれませんか?」という声がかかるはずです。
そんな声がかかるまで、目の前の人のお困り事に向き合い、1つ1つ解決していこうではありませんか。
IPOは目的ではない、ただのマイルストーンである。
そんな想いを伝えたくて、6400字のポエムを書いてしまいました。
1年後にはすべてをひっくり返して「死ぬまで生きる!ソリッドベンチャーこそ至高!」と言っているかも知れません。
現に今はソリッドベンチャーですし。
そういう奴なんです、田村って男は。
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