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お父さん、にやられる…

浜口倫太郎さんの新作「お父さんはユーチューバー」を読了。

この丸紅茜さんの表紙イラストとタイトルでついつい手にとったけど、176ページ目からラストに向かっていく展開、素晴らしい。感動。この軽いタイトルからのこのラスト、本当にやられる。やられた。

現在の宮古島と、お父さんの勇吾が若い頃に東京で芸人を目指して苦しい貧乏生活を営んでいた12年前の東京。2つの時間と場所を超えたストーリー展開のテンポの良さは、浜口さんの巧みなストーリー作りが見られてすばらしい。

そして、宮古島ならではのお酒の交流「オトーリ」や、訪れたら誰もが不思議に思う「宮古まもる君」など、宮古島あるあるも随所に散りばめられて、沖縄ファンだけでなく、県民や島民も楽しめるあたり、さすがです。

一見、能天気そう(失礼!)なお父さんがお金儲けのために思いつきで始めたと思っていたユーチューバーが、このためだったなんて。。。そして、お父さんと娘の海香がこんな関係だったなんて、もう。。

ある事情で勇吾が1歳の赤ちゃんを抱き、「軽い。一歳の子供はまだこんなに軽いのだ。」と、同じ命でもこれほどか弱く、大事にいたわらないといけない存在なんだということを勇吾らしい言葉で表現したり、ぶっきらぼうに見える勇吾だけど、世話になった先輩の気持ちを些細なことで汲み取ったり、勇吾と海香を“初めて”見た勇吾の母親が「よう似てる」と言った言葉の裏を理解したり…。

勇吾のキャラクターを通して語られる言葉や勇吾の考えを表現する文章に、人間性や繊細さが滲み出ていて、そんなところも感情を動かされる。

そして、そんな勇吾のキャラクターだけでなく、海香、元気、一休、唯、虎太郎、東京時代の正樹も冴子も早苗も、浜口さんの描くキャラクターは読んでいるだけでも「あー、こんな人なんだろうなー」とイメージが頭に浮かんでくる…しっかりとキャラクターが立つ描写力もさすがのひと言。

いい作品だった。


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