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第2回となる建設DX勉強会を開催しました!

【はじめに】

初回記事でもご紹介したとおり、建設DX研究所では、建設業界が抱える様々な課題を解決する一助として、建設DXに関する情報その他建設業界の未来に関する情報を定期的に発信しておりますが、建設DX勉強会では、情報発信に留まらない取り組みとして以下の目的を達成するための活動を行っています。

・建設DX推進に関する現状及び課題の共有
・建設業界の今後のあり方・課題解決方法等について検討・ディスカッション
・産官学での垣根を超えたフラットな意見交換
(スタートアップ企業・行政・アカデミア等)

こうした活動の一環として、2021年8月31日、前回に引き続き、建設DX研究所の主催で「第2回建設DX勉強会」を開催しましたので、今回はその模様をお伝えしたいと思います。

【勉強会の概要】

第2回 建設DX勉強会
主催:建設DX研究所
会場:Zoomでのオンライン開催
参加企業:
株式会社センシンロボティクス、CalTa株式会社、セーフィー株式会社、VUILD株式会社、株式会社アンドパッド
オブザーバー:廣瀬 健二郎 氏(国土交通省 大臣官房 技術調査課建設生産性向上推進官)、野城 智也 先生(東京大学生産技術研究所 教授・工学博士)

今回は「建設業界の人手不足への対応~建設現場におけるドローンの活用」をテーマに掲げており、ドローンを活用した様々な取り組みをされている株式会社センシンロボティクスの北村氏、CalTa株式会社の井口氏にメインスピーカーとして登壇して頂きました。また、セーフィー株式会社の布井氏、VUILD株式会社の秋吉氏等にもご参加頂いています。

【センシンロボティクス社の取り組み】


株式会社センシンロボティクス
産業用ドローン等を活用した業務用ロボティクスソリューションを提供
https://www.sensyn-robotics.com/
スピーカー:代表取締役社長 北村 卓也 氏

- センシンロボティクスはソフトウェアカンパニー。世界中のドローンやロボットといった優秀なハードウェアを民主化し、顧客や社会の課題を最短・最速で解決するため、ハードウェア操作の簡易化や獲得データの利活用によって価値提供ができるソフトウェアを開発していきたいと考えている。
- 中長期で実現させたいのは、PCやタブレットを数タッチすればドローンやロボットが稼働して人に代わって危険な場所から安心・安全にデータを収集し、集めたデータをAIで解析することで変状・異常を発見した上、蓄積されたビッグデータをもとにした予防・保全あるいは計画修繕につなげていくといった世界観。
(1) 建設現場におけるドローンの完全無人運用例(株式会社フジタ様との取り組み
フジタ様とは、①施工進捗の管理のための巡視や警備、②測量の自動化、③遠隔臨場への対応、④災害発生時の状況確認など、複数の用途をカバーする形でドローンの完全無人運用を活用している。
例えば、①では、スケジューリング機能(飛行ミッション予約機能)により、定刻になるとドローンが自動的に稼動して事前指定したルートを飛行して巡視を行い、③では、ドローンからの映像を、建設現場と本社の2拠点から経験豊富な担当者が遠隔で確認することで安全面を担保することが可能となる。
実際の映像は以下の様なもので、次の映像や機能を備えている。

左上:ドローンの発着基地を映す映像
左下:地図情報とドローンの飛行位置をマッピングさせた映像
(テレメトリー)
右下:ドローン搭載カメラを遠隔拠点から操作するためのパネル

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(2) 屋内環境(非GPS)におけるUAV建設管理ソリューション(株式会社竹中工務店様との取り組み
次に、竹中工務店様との事例。そもそも屋内環境ではGPSを用いた衛星からの観測ができないため、ドローンが自身の飛行位置を把握して自動で航行することがとても難しいという前提があるところ、本件では、BIMデータ及びドローン搭載カメラから取得したデータをもとに空間情報を認識し、自身の位置を推定しながら自動で飛行させる取り組みを行っている。

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【CalTa社の取り組み】

CalTa株式会社
小型ドローンを活用した点群取得事業、デジタル化事業を展開
https://calta.co.jp/
スピーカー:COO 井口 重信 氏

- CalTa株式会社は、「Physical(実物)をdigital(デジタル)に」というスローガンのもと、JR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社、株式会社Liberawareの三社合弁により2021年7月1日に設立された。
- JR東日本グループでは以下の課題意識を持っていたが、Liberaware社が強みとする小型ドローン技術による課題解決の可能性が見出されたことでCalTa社の設立に至った。

【課題①】既存施設の状況(位置・寸法)を把握する必要がある
例えば駅の天井裏のケーブル配管状況を把握しようと考えたとき、これまでは個別箇所を撮影した画像データを集めて対応方法を検討してきたが、現地の状況(位置・寸法)を点群データや3D画像で確認することで効率的な把握ができる状態にしたい。

【課題②】施工中の状況(位置・寸法)を把握する必要がある
これまで、説明文章を記載した黒板とともに対象工事箇所を撮影した写真や検査記録など、膨大な量の帳票により管理してきたが、点群データや3D画像を用いて時々刻々と変化する施工状況の変遷を管理できるようしたい。

- 上記課題に対してLiberaware社の小型ドローン技術を用いたところ、①との関係では狭小空間である天井裏の撮影・三次元化に成功したことで従来手法(利用客がない夜間帯という制限下、天井を開けては中で写真を撮影することを複数日かけて行う)に比べて約70%の工数削減が期待され、②との関係でも、遠隔での施工管理に十分耐えうる3D画像や点群データの取得に成功した。また、熱供給設備内でも同様のデータ取得に成功し、既存設備の維持・管理への有用性も確認されている。

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【ドローンを巡る法規制の動向】

続いて株式会社アンドパッドから、ドローンに関連する近年の法規制の動きについての説明がなされました。

①飛行禁止空域に関する規制:
国土交通大臣の許可が必要であり、主に人口集中地区(都市部ほぼ全域)における飛行の際に問題となる。
②飛行方法に関する規制:
指定されたいくつかの飛行方法については、国土交通大臣の承認が必要であり、主に「目視外飛行」(ビルなどの遮蔽物により人が目視できない環境での飛行)や「30m規制」(人や建造物などから30m以上の距離をとらなければならない)などが問題となる。

- 上記に関連して、直近、主に以下の改正議論がなされている。
いわゆる「レベル4」について
現行規制下では認められていない「レベル4」(有人地帯における目視外飛行)を認めるための制度が本年の通常国会で整備され、2022年度より施行予定。具体的には、[1]機体認証制度(機体の安全性に関する認証制度)に基づく認証、[2]操縦ライセンス(操縦者の技能に関する証明制度)の取得により、従来であれば必要であった飛行ごとの逐次の許可・承認の取得を不要とする制度が整備されつつある。

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- 上記の他、昨年でいえば、[3]航空法の改正によりリモートID(機体から登録情報を常時発信する機能)を備えることによるドローン所有者の登録制度が創設されたこと、[4]高構造物周辺でのドローン飛行に係る規制緩和(150m以上のビルの外壁検査に際して許可を不要とする省令改正)、[5]現在バラバラに行う必要がある航空法や電波方に基づく各種申請に係るシステム連携による手続の簡易化などがトピックとして挙げられる。

【オブザーバーからのコメント】

野城 智也 先生(東京大学 生産技術研究所 教授・工学博士)

数年前、屋内環境でのドローン活用の取り組みを行っている会社があると聞き、その意義に疑問を持っていたが、今日現実の成果を見て、その可能性を認識することができた。
建設産業の裾野は大変広く、一つの仕組みで何でも解決できるものではない。例えば点群データとBIMデータを統合する仕組みを作る際に、それぞれに実績と強みを持つベンダーが有機的に連携することで「1足す1」が3、4、5とより大きな価値を実現することができる。この建設DX研究所を介して有力なプレイヤー同士がつながっていき、DXの動きがさらに活発になること期待している。
廣瀬 健二郎 氏(国土交通省 大臣官房 技術調査課 建設生産性向上推進官)

ドローンを活用する場所という観点で、建設工事は山間部で行われることが多い実態に鑑み、夜間に暗闇の中で正確なデータを取得することができれば非常に生産性も向上させることができるのではないかと考えており、そうした取り組みについても期待している。
また、ドローンを飛行させる場所という観点で、最初は「公共用地」をドローンの飛行経路として開放しようといった動きが高まってくると予想している。国交省内でもよく議論に上がるのは、道路や川の上空空間であるとか、鉄塔の下などの三次元空間をいかにして活用していくかといったこと。こうした空間の活用に関して、民間事業者がいかなるニーズを有してるかをきちんと拾い上げていくことが重要と考えている。

【まとめ】

以上、今回は「建設業界の人手不足への対応~建設現場におけるドローンの活用」をテーマとして、様々な取り組みの紹介や今後解決すべき課題についてご紹介しました。
ドローン技術を活用した建設DXについては、法規制の仕組みも整備途上ではありますが、当該技術による様々な効率化や従来手法ではなし得なかったことの実現がなされつつあり、依然として目が離せない領域であることがご理解頂けたのではないでしょうか。
建設DX研究所では、今後も多様なステークホルダーをお招きし、建設DXにかかわるテーマに沿って有益な情報を提供するための勉強会を開催していく予定です。現存する様々な課題を一歩ずつ解決し、建設業界の未来をより良いものにすべく、その実現に向けた活動をこれからも続けていきたいと思います。