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第1回目となる建設DX勉強会を開催しました!

【はじめに】

去る2021年6月24日、建設DX研究所主催で「第1回建設DX勉強会」を開催いたしました。今回の記事では皆様に勉強会の模様をお伝えしたいと思います。

過去の記事でもご紹介した通り、建設DX研究所では、建設業界が抱える様々な課題を解決する一助として、建設DXに関する情報、その他建設業界の未来に関する情報を定期的に発信しております。

建設DX勉強会は、単なる情報発信に留まらない建設DX研究所の取り組みとして、以下の目的を達成するために始動いたしました。

・建設DX推進に関する現状及び課題の共有
・建設業界の今後のあり方・課題解決方法等について検討・政策提言
・産官学での垣根を超えたフラットな意見交換(スタートアップ企業・行政・アカデミア等)


【勉強会の概要】

第1回 建設DX勉強会
主催:建設DX研究所
日時:2021年6月24日(木)
会場:株式会社アンドパッド本社
参加企業:株式会社アンドパッド、セーフィー株式会社、VUILD株式会社
オブザーバー:廣瀬 健二郎氏(国土交通省 大臣官房 技術調査課建設生産性向上推進官)、野城智也先生(東京大学 生産技術研究所 教授・工学博士)


【当日の模様】

第1回勉強会では、参加企業各社から建設DXの推進事例についてのプレゼンテーション、及びオブザーバーを交えた意見交換等が行われました。

株式会社アンドパッド
施工管理アプリ「ANDPAD」を展開 https://lp.andpad.jp/
スピーカー:代表取締役 稲田 武夫氏

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建設業界が抱える様々な課題、低生産性・低粗利率・人材不足・長時間残業などを、クラウドによって業務一元化・見える化することで解決するANDPAD。2015年のサービスリリース以降、デジタル化・クラウド化による建設業界の課題解決への貢献を続けている。

AP受発注

2021年5月には電子受発注システム「ANDPAD受発注」をローンチ。工事請負契約を電子化する際に求められる法令の基準を、経済産業省の「グレーゾーン解消制度(※)」によって確認し、適法性を担保したうえで、紙・電話・FAXでやり取りすることが多かった見積・発注・請負契約・請求などの業務のぺーバーレス化を実現し、現場作業の効率化にとどまらないサービス価値を提供している。
※グレーゾーン解消制度の詳細はこちら

ANDPAD導入事例①:某建設会社様
2018年にANDPADを導入後、現場監督1人あたりの年間担当案件数が劇的に増加、デジタル化による生産性向上の好例となった。

ANDPAD導入事例②:某ハウスメーカー様
ANDPADの導入により、月間の移動時間や電話/FAXにかかる時間が大幅に削減、業務効率UPだけではなく、現地調査にリソースを割くことができるようになったことで施工品質向上といった副次的な効果も生まれた。

「事例のように、導入効果は期待できるものの、ANDPADのようなデジタルツールを導入するにあたって【現場が使ってくれるかどうか】が障壁となりやすい」と稲田氏。


社内にデジタル担当を置くと同時に、当該担当者が熱意をもってやりきることの重要性を指摘するとともに、その好例としてANDPADユーザー自らが発足した推進会の事例も紹介されました。

リブウェル様

リブウェル株式会社様「ANDPAD推進会の発足」:https://one.andpad.jp/magazine/2111/


セーフィー株式会社
クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を展開 https://safie.link/
スピーカー:執行役員 パートナー営業本部長 鈴木 竜太氏

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撮影した映像をPCやスマートフォンからいつでも・どこでも閲覧できるクラウド録画サービスを展開するセーフィー。当初は自宅の見守りや、店舗等における防犯目的での利用が中心でしたが、ウェアラブルカメラ「Safie Pocket2(セーフィー ポケット ツー)」の登場を契機に、ゼネコンやハウスメーカーといった建設業界からの引合も増え、利用シーンが拡大しているとのことです。

safie_ユニバーサルホーム

建設現場での導入事例:株式会社ユニバーサルホーム様
ウェアラブルカメラを装着した現場の新人監督に対し、経験を積んだ現場監督が遠隔で指示出し、管理を行うことで新人育成・業務時間削減に貢献。移動時間の関係で1日に2つの現場しか回れなかった従来のやり方に比べ、遠隔であれば40もの現場を見ることができるようになった事例も出てきており、その効果は大きい。

ステップ

「建設業界を含む現場DX成功の鍵としては、『AI』のような技術の導入は目的ではなく、あくまで目的達成のための手段であると意識することが必要。本質的な課題解決につなげる為には、クラウドカメラを用いた現場の見える化や遠隔業務の推進といった足元の課題解決からはじめ、映像データと既存業務ツールとの連携や、AIによる映像解析へと歩みを進めていくことがポイントとなる」と鈴木氏。

VUILD株式会社
建築設計者向けクラウドサービス「EMARF」・デジタルファブリケーションによる家づくり等を展開 https://vuild.co.jp/
スピーカー:代表取締役CEO 秋吉 浩気氏

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木製モノづくりのデザインから加工までの工程を、オンラインで完結できるクラウドサービスである「EMARF」というプラットフォームを通じて建物の造り方そのものを変え、専門知識を持たない人でも建築に取り組める社会を目指しているとのことです。

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複雑かつ大規模な構造物につき、EMARFで設計・加工の工程を圧縮化する取り組み事例も増えてきているとのこと。

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事例①:東京学芸大学との産学連携プロジェクト

20210624_建設DX研究会_VUILD様‗静画のみ.pptx

20210624_建設DX研究会_VUILD様‗静画のみ.pptx (1)

事例②:半径10KM圏内で木材調達から施工までを完結させた「まれびとの家」プロジェクト
デジタル設計した図面をもとに、現地で調達した木材をVUILDが設置した3D木工加工機「ShopBot」を用い現地の素材生産者がデジタル加工、伝統的な合掌造りの工法を基に施工も地域の人々と共に行った。デジタルファブリケーション技術を駆使した事例

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「全国各地に木工加工機を設置しインフラを整備、それらをソフトウェア(EMARF)でつなげる取り組みは拡大している。」と秋吉氏。「まれびとの家」のような現地一貫生産の家づくりを誰でも取り組める事業として「Nesting」を今年5月に公開し、既に15棟が進行しているとのことです。

オブザーバーを交えた意見交換の様子

意見交換

野城先生からは、本勉強会の参加企業のような建設DX関連企業がこれから建設DXを推進していく上で考慮していくべきポイントについて、その指針等が語られました。

・建設DXの取り組みを発展させるには、「人の特定」「場所(単位空間)の特定」「インターオペラビリティの連携」を考えていくことが必要。
①人の特定:
現場で働く技能技術者(個人)にユニークIDを付与し、個人の実績や能力を紐づけられるか。※人員の流動性が高い下請け会社などではどうしても人づてで案件を受けることが多いが、実現すれば技能技術者は所属が移り変わっても自らの実績・能力のプレゼンテーションの機会を得ることができる。
②場所(単位空間)の特定:
地図情報だけではなく、例えばある家のドア、といった単位まで特定していけるか。
③IoTのインターオペラビリティの連携:
家の窓、設備機器、家電製品をクラウドで一括コントロールするような仕組みを、企業の枠を跨いで連携できるか。

「上記のような【のりしろ】を、建設DX関連企業同士が考え、連携したアクションを考えていくことが肝要」と野城先生。
本日の参加企業のような建設DX関連企業が取るべき戦略方針やその課題観についても以下のように語られました。

・日本の建設DX関連企業は、GAFAやアリババのような中央集権型を目指すのではなく、個別分散協調型の戦い方をするべき。
・個別分散協調ではデータの取り扱いに関する原則やルールを皆が納得しながら創っていく必要があり、そこが課題と感じている。

廣瀬氏からは、ご自身の官僚としての立場から、建設DX推進を促進する上での行政の課題やあるべき姿勢についてお話しいただきました。

・建設DXのような新しいことを始めるにおいては、霞が関で主導するというよりも、民間の方が得意な領域。ただ、制度面での推進をサポートするには行政側の意識や構造改革も必要。民間との交流人事や異分野との接点を増やすことで行政の構造改革が促されることを期待している。
・個人の考えとしては、この先行政や役所は権威組織としての存在意義が次第に薄れ、ルールメイキングの役割が残り、個々人・企業が自律分散して物事を進めていく世の中になっていくのではないかと考えている。ルールメイキングの観点から、民間の動きを止めるのではなくいかに後押しできる存在になっていけるかが鍵だと考える。

【まとめ】

第1回目の勉強会を終えて、産官学それぞれの参加者との間で、建設DX推進の現状を共有すると共に、課題に関するディスカッションも行うことができました。その多くは建設業界の作業構造、行政機構・慣習など、これまでの長い歴史の中で積み上がってきたものであり、一企業や個人の努力だけでは早期解決が難しいと思われます。しかし、立場を問わず共通していたのは、建設業界に差し迫る課題(過酷な労働環境、人手不足など)を解決する手段として、建設DXの推進が必要である、という意識でした。

違う立場からの目線を共有することで、これからの建設DX推進に向けたアプローチの方向性に関する決定や、建設業界にいずれ起こるブレイクスルーをいかに迎えるか、といった将来的な動きを、産官学が連携することでより明確にしていける、そんな未来を感じさせる勉強会となりました。

建設DX研究所では、多種多様なステークホルダーをお招きし、建設DXにかかわるテーマに沿った勉強会を今後も定期的に開催する予定です。
私たちは、課題を抱える建設業界の未来をより良いものにしたいという方々の想いを共有し、その実現に向けた活動をこれからも続けてまいります。