建設DX研究所 第16回定例部会を開催しました!
みなさん、こんにちは。
「建設DX研究所」では、毎月1度、オフラインの定例部会を実施しています。
5月23日に、第16回となる定例部会を開催しましたので、その様子をダイジェストでお届けします。
第16回「AIを活用した道路の維持管理DX」
今回の定例部会は、ゲストとして、株式会社アーバンエックステクノロジーズ 前田 紘弥代表取締役にお越しいただきました。前田さんは、建設DX研究所メンバーである株式会社Polyuse岩本さんや、株式会社ローカスブルーの宮谷さんとも以前から面識があり、今回岩本さんからゲストとしてお声がけいただいたところ、快くお引き受けいただきました。
株式会社アーバンエックステクノロジーズは、前田さんが東京大学での研究をベースに創業された会社です。2016年頃から、NICT(情報通信研究機構)の「現場の知、市民の知を有機的に組み込んだ次世代型市民協働プラットフォームの開発」において、スマートフォンを用いた深層学習による道路損傷検出に関する研究をされていた前田さんが2020年に会社を設立されました。
都市×テクノロジーという観点で、都市空間のリアルタイム・デジタルツイン構築を中心に活動していらっしゃいます。
人が減っていく社会においても無くてはならない存在であるインフラに着目し、道路、水道、ガスといった公共・土木の領域を中心に活動され、「しなかやな都市インフラ管理を支えるデジタル基盤をつくる」という目標を掲げていらっしゃいます。
展開されているサービスのコアとなる技術は、東京大学での研究成果をベースに自社で開発した「道路損傷の検出技術」です。車に積んだスマホ・ドライブレコーダーなどで道路を撮影した動画から、路面のひび割れや穴などを検出できるといいます。
こうした技術をもとに現在サービス展開している商品は以下の3つ。
①RoadManager
②ドラレコ・ロードマネージャー
③My City Report
現在では40を越える自治体で活用いただいているそう。それぞれ、取得する情報の種類に違いがあり、具体的な事例とともに事業内容をご説明いただきました。
① RoadManager
「RoadManager」は、スマホによる道路損傷検出AIツールとのこと。アプリをインストールしたスマホを、車のダッシュボードまたはフロントガラスに設置して道路を撮影することで、走行中に損傷を自動で検出し、ウェブ上で損傷位置などを確認できるサービスとなっています。斜めから撮影した道路損傷でも、路面を真上から見た図に変換・補正し、検知した損傷の大きさを推定することができるといいます。
県道であれば◎◎県、市道であれば◎◎市、といったように、道路はその種別によって道路管理者が異なりますが、道路損傷による事故などは、まさにその道路管理者の瑕疵と見なされます。管理すべき道路を適切に管理し続けるため、道路損傷をなるべく効率よく見つけることは非常に重要です。
また、日々の点検業務に加え、年単位では、大規模改修やそのための予算要求に向け、道路状況全体を評価する必要もあるとのこと。これまでは非常に高額な専用車で道路状況を確認していたそうですが、このアプリケーションにより、スマホでの道路状況確認が可能となりました。
② ドラレコ・マネージャー
さきほどのアプリケーションをドライブレコーダーに応用させたものが「ドラレコ・ロードマネージャー」です。
三井住友海上の自動車保険を契約しているドライブレコーダーを用いて、日本全国の道路損傷個所をAIが検知・分析の上、その路面状態を自動連携・クラウド上で一元管理し、道路の点検・管理業務を効率化するサービスとのこと。都市部であれば、自動車の台数も多いことから、約9割ほどの路面のデータを自動収集できるそうです。
自分が乗っている車のドラレコ映像によって道路の安全性が保たれている、というなんとも面白いスキームだと感じました。
③ My City Report
3つ目のサービスは、市民協働投稿サービス「My City Report」です。
市民が、道路の損傷や電灯の消灯など、まちで見つけた「こまった」をアプリに投稿することで、適切な管理者に通報連絡がいく、というサービスとのこと。スマホで簡単に取得できる画像や位置情報をもとにした市民参加型の街づくりと言えるのではないでしょうか。
実際わたしたちが街を歩いてみると、「今通りかかった公園の管理は県なのか市なのか」「今歩いている道路は国道なのか、市道なのか」など意外とわからないものです。親切に市役所に連絡しても「そこは管轄ではありません」とすれ違ってしまうことも想像に難くありません。
そんなとき、どの自治体に連絡すべきなのか、どの部署に連絡すべきなのか、ということを考えずにアプリにとりあえず通報する、というだけで街づくりに貢献できることは便利だと思います。
また、行政目線に立ってみると、電話応対で別部署を案内する手間や、通報をもとに現地確認に行って写真を撮って帰ってくるという手間が、このアプリを使うことで省くことができると思います。実際に行政での1件あたりの処理時間が70%削減できた事例もあるそうです。
今後の展望
国が進める戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の研究開発責任者も務める前田さんは、今後について、「今後、道路点検事業を、日常点検・定期点検から検修・予測診断・措置などへ幅広く拡張していくとともに、道路のみならず、他の都市インフラにも展開していきたい」と、しなかやな都市インフラ管理を支えるデジタル基盤づくりへの展望を語っていただきました。
建設DX研究所事務局より
「AIを活用した道路の維持管理DX」と題し、アーバンエックステクノロジーズ社の様々な取り組みをお伺いしました。
AIを活用することで、スマホ・ドラレコなど身近な撮影機器も道路管理に応用ができるということに驚きました。その手軽さや汎用性の高さもサービスの大きな魅力なのではないでしょうか。
深刻な人手不足が進む建設業界では、こうした省力で活用できる維持管理ツールへの期待は非常に高いと思います。適切な都市の維持管理を、市民参画型のまちづくりが支えていくという絵姿にも共感しました。
今後もこうした勉強会・定例部会を定期的に開催していくほか、情報発信・政策提言等の活動も実施していきます。 建設DX推進のためには、現状の建設DX研究所メンバーのみではなく、最先端の技術に精通する建設テックベンチャーをはじめ、数多くの事業者の力・横の連携が不可欠だと考えています。 建設DX研究所の活動・定例部会などにご興味をお持ちいただける方は、ぜひプレスリリースを御覧いただき、お気軽にお問合せいただけると嬉しいです。