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HELIAR vs. SUMMILUX

HELIAR classic 50mm F1.5とSUMMILUX 50mm F1.4 2ndの撮り比べをしてみた話です。

これまでのHELIAR classicに関する記事はこちら。


手持ちの50mmレンズでの撮り比べ

HELIAR classic 50mmを購入してから約2ヶ月、ほぼこのレンズだけを楽しんでいました。ここ最近はあまりガッツリ撮影する機会はなく日常的に撮り歩くくらいでしたが、少しずつどういう写りのレンズなのかがわかってきたような気がします。ただちゃんと他のレンズと同条件での撮り比べはできていなかったので、一度ちゃんと比較してみました。

比較するレンズはHELIAR classic購入前の2年間愛用していたオールドレンズ、第2世代のSUMMILUX 50mmです。このレンズの写りは本当に気に入っているのですが、HELIAR classicは多少方向性は違えどそれに匹敵するくらいのポテンシャルを感じています。今回の撮り比べで両レンズの違いを自分の中ではっきりさせられると良いなと思っています。

撮影設定

  • カメラ:M (Typ 262)

  • ISO感度:ISO 400/640/800

  • 絞り値:F1.5/F1.4(絞り開放), F2.0, F2.8, F4.0, F5.6, F8.0

  • シャッタースピード:1/1000~1/30

  • 撮影距離:1.5m, 5m, 20m, 無限遠

撮り比べ時の撮影の設定は以上になります。シャッタースピードは絞り値の変化に合わせて露出を揃える形で調整、ISO感度はシャッタースピードが遅くなりすぎないように各シーンで調整しました。RAW現像での調整は後述するホワイトバランスと露出に関する点以外は基本的にしておらず、撮って出し再現プロファイルを適用したのみです。

また、HELIAR classicはフォーカスシフトが大きいレンズです。F2.8以降の絞り値での撮影時には大体このくらいかなという勘でピントを手前にずらしました。勘でガチピンにするのは簡単ではないので、今回はHELIAR classicだけ2回撮影しピントが良かった方を採用しています。2回分でそこまで大きな差があるものはありませんでしたが、その辺りのブレがあることはご理解ください。

なお以下の比較では、写真全体の比較(F2.0のみ)と、各F値での中央及び周辺のクロップでの比較を載せています。クロップの方はnoteの画質だと見にくいかと思いますが、もしご興味のある方はFlickrにアップロードしてある高解像度の方をご覧ください。キャプションにリンクが張ってあります。

撮影結果

ホワイトバランスと露出

左:HELIAR、右:SUMMILUX
ホワイトバランスと露出の調整前での比較

詳細な比較に入る前に、まずホワイトバランスと露出の話をします。今回の撮り比べではホワイトバランスは基本的には固定しています。しかし、SUMMILUXは全体的に少し緑被りする傾向があり、その色味の差は撮り比べでは無視したいです。そこで、ホワイトバランスの色被り補正で両レンズの色味が近くなるように調整しています。SUMMILUXの方をLightroomでマゼンタ方向に+10してやるとHELIARの色味に割と近くなるので、以下の例では全てこの補正を適用しています。

次に露出の話です。HELIAR classicの開放F値はF1.5なのに対してSUMMILUXはF1.4なので、絞り開放の時の露出に差が生じます。その差も今回の撮り比べでは無視したいので、HELIAR classicでF1.5で撮った写真だけ露出をRAW現像で補正しています。0.3段分露出を持ち上げてやると概ね近い明るさになりました。つまりHELIAR classicのF1.5とF2.0の明るさの差は0.7段分くらいってことですね。以下の例では全てこの補正も適用しています。

1.5m

HELIAR classic 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
SUMMILUX 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
高解像度版

クロップは中央、下辺中央、右辺中央の3つです。右辺中央に関してはボケみを比較するためのものです。

5m

HELIAR classic 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
SUMMILUX 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
高解像度版

こちらも同様に中央、下辺中央、右辺中央の3クロップの比較です。

20m

HELIAR classic 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
SUMMILUX 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
高解像度版

クロップは中央、右辺中央、左辺中央の3つです。詳しくは後述しますが左右それぞれ比較しているのはSUMMILUXに片ボケがあるからです。

無限遠

HELIAR classic 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
SUMMILUX 50mm, F2.0, 1/500, ISO400
高解像度版

こちらも同様に中央、右辺中央、左辺中央での3クロップで比較しています。中央は自転車がメインの被写体のような形で切り出していますが、実際のところ自転車は20~30mくらいの距離にあり、わずかに被写界深度外だと思います。後ろの柵や車で比較した方が良いシーンで、無限遠のシーンとしては不適切なのですが、まあ撮ってしまったので…

比較しての所感

中央はSUMMILUXが良い

中央についてはSUMMILUXの描写が良いと感じました。特に絞りを開けている時は圧倒的です。SUMMILUXは絞り開放ではわずかに滲みますが芯はしっかりとしており、一絞りするだけでパキパキに写ります。ただ絞っていくにつれて差は縮まっていき、F5.6~F8.0までくるとあまり変わらない印象です。わずかにSUMMILUXの方が良いかも?くらい。

無限遠の例では自転車の描写でかなり差があるように見えますが、これは前述したように、この自転車の位置は本来無限遠にピントを合わせた時には(おそらく)被写界深度外なことが理由です。手持ちのSUMMILUXの個体が絞りを開けている時に無限遠がちゃんと出てないんですよね、多分。ピントがやや手前に来てしまっているせいで自転車にピントが合っているだけという… 実際奥に写っている柵や車ではHELIARの方が解像しています。遠景を撮る時は基本的に絞るので問題はないのですが、こういうのがあるのがオールドレンズの難しいところだなと思います。

周辺についてはHELIARが良い

中央と比べると周辺の描写に関しては両レンズのシャープネスに大きな差は感じません。1.5mや5mの例で比較している下辺の描写については、特に絞り開放付近で少しSUMMILUXに軍配が上がるかなといったところです。20mや無限遠の例で比較している左辺、右辺の描写ではHELIARの方が全体的によく写っています。しかも、手持ちの個体だとSUMMILUXはやや片ボケなのか写真の左右で描写に差があり、右側の描写が左側と比べると悪いです。それもあって、右辺中央での比較に関しては完全にHELIARの方が良いです。左辺だともう少しSUMMILUXがマシになりますが、それでもHELIARの方が良さそうに見えます。なので、全体的に見えると周辺についてはHELIARの方が好印象です。

立体感ではSUMMILUX

ここまでの話と関連するのかと思いますが、SUMMILUXで撮った写真の方が立体感を強く感じます。SUMMILUXは中央がキレキレである一方で周辺に行くと崩れていくため中央と周辺の描写の差が大きく、それもあって中央に被写体を置いた時に立体感を強く感じるのではないかと思っています。SUMMILUXはたまにイマイチな写りと感じることもあるのですが、多分絞り開放付近で周辺に被写体を置いた場合だったりするのかなと思いました。中央の描写がイマイチなHELIARの方が周辺との差が少ない分使いやすかったりするのかもと想像してます。

ボケ味はSUMMILUXが良好

ボケ味はSUMMILUXの方が滑らかで綺麗ですね。SUMMILUXも現代レンズと比べるとオールド感のあるボケだと思いますが、HELIARの方がもう少しざわつきます。とはいえ個人的にはHELIARのボケ味も嫌いではありません。あまりグルグルはしてませんし、全然許容範囲です。

おわりに

今回はHELIAR classicとSUMMILUXを比較してみました。所感ではSUMMILUXの方を高評価している点が多いですが、全体のバランスとしてはHELIARもかなり良いと思っています。前述したようにSUMMILUXは中央と周辺の描写の差が激しい分それがハマった時はすごいのですが、HELIARは中央と周辺の差がSUMMILUXよりも小さく、全体として見ると良い写りだなと感じることが多い印象です。ピクセル等倍表示にしてしまうとSUMMILUXが良いとなってしまうことが多いのですが、引いて写真全体で見ると方向性は多少違えどHELIARも決して引けを取るものではないですね。それでもSUMMILUXの開放での芯のある甘い描写はHELIARでは決して撮れない画だなと感じてしまいます… でもSUMMILUXは寄れないんですよね… HELIARに慣れてくると最短1mの不便さを強く感じてしまいます。フォーカスシフトの大きさを除けばHELIARはとても使いやすいレンズです。

今回の比較で改めてSUMMILUXの良さを感じた一方で、オールドレンズならではの個体差の影響も再確認できてしまいました。もっと良い個体なら…と考えてしまうのも精神衛生状良くないので、こんなことを気にするくらいなら新品の現行レンズだけ使っていた方が自分には合っているのではという気持ちが出てきています。そういう意味で新品で買えるコシナのclassicシリーズは最高ですね。

ということでSUMMILUXの写りはめちゃくちゃ好きだけど手放してしまっても良いかなという気持ちが強まってきた今日この頃です。描写は全然違うと思う一方で両方キープするにはちょっと似過ぎている両レンズ… さよなライカレンズは近いのかもしれない…



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