サンマが「高級魚」へ。ほかに「食えなくなる魚」は?

 ほんのりと秋の匂いが感じられるようになりました。今年初めて水揚げされたサンマが「1匹3500円」で店頭に並んだとの記事を読みました。もちろん、漁が本格化して、たくさん獲れ出すようになれば、安くなっていきます。それでも、厚岸町で初水揚げされた量は、昨年の900キロを大きく下回る150キロ程度。将来を考えると、だんだんと獲れなくなっていき、それに応じて値段も高くなっていくのでしょう。

 サンマが食べられるようになった江戸時代では、「脂がのりすぎてまずい」とされ、武士はほとんど食べなかったという説があるそうです。ただ、安かったこともあり、庶民にとってはありがたい魚類でした。それが近年、庶民の口から遠ざかる気配が漂い、「高級魚」になってしまうのではという不安があります。感覚的には、1匹100円程度で食べられるお手軽な魚というイメージはもはや崩れています。

 私の「資源論」という大学の授業の中でも、「食べられなくなる魚」というテーマで取り上げました。学生の反応はきょとん、としていました。一人暮らしの学生はほぼおらず、自分で魚を買って市場値を見る機会が少ないからでしょう。
 ちなみに、昨年1年間のサンマの漁獲量は、2万9700トンです。これは、ピーク時の昭和33年の5%しかありません。ほかに急激に減っている魚類では、スルメイカがピークの昭和27年から7%まで減ってしまい、昨年は4万6700トン。さらに、寿司ネタで人気のサーモン、サケ類もピークの平成8年と比べて2割程度しか獲れなくなりました。

 なんでこんなに減ってしまったのでしょうか。それは、何度も聞かされている「気候変動」(あるいは地球温暖化)です。黒潮などの潮流や日本近海の海水温が上昇し、エサの環境が悪化しているから日本までサンマが寄り付かなくなったそうです。日本近海から離れたところにはいますが、日本の漁船は小さいものが多く、大型の外国漁船がそれらを一網打尽にしてしまっていることも原因です。

 地球温暖化で海の環境は激変しています。平均気温が2℃上昇すれば、全体の漁獲は20%減り、気温が4℃上昇すれば、漁獲は60%も減るという試算もあります。もはや、国際的に資源管理をすればいいという次元を超えているのでしょう。サンマが食べられなくなるというだけではないのです。
 私は、自前で寿司を握るほど魚が大好きです。魚食は日本の文化だと思います。近い将来、こうした文化が衰亡してしまうのではと恐れています。資源をどうやって守っていくか、今後、私自身の研究にも力を入れていかなくては、と考えています。

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