広告を抱きしめる温もり
町の中華屋のラーメンの器に描かれているドラゴン(以下、描ドラゴン)はうんざりしていた。
器以外に描かれてみたいというか、もっとオシャレな広告になりたかった。
そして中華屋の昼休憩中に抜け出して、
外国のIT企業まで飛んだ。
大人気スマートホンの背面のロゴになりたかった。
企業のCEOに自分をスマホの背面のロゴにして欲しいと言ったら、知識がないとわからない皮肉を言われた。つまりNOだった。
描ドラゴンはイライラしたので、企業のビルにしばらく張り付いてやった。
人々が自分がこの企業に不釣り合いなので、ビルを見て笑った。
すごく嫌な気持ちになったし、
CEOも恥をかいてお互いに損をした。
描ドラゴンは、そのまま自国の省庁に戻って、自分をお金の紙幣のモデルにして欲しいといった。
率直に無理だ。と言われた。
描ドラゴンはイライラしたので、省庁のおっさんの脳みそに張り付いた。
省庁のおっさんは、描ドラゴンしか思考できなくなって医者に運ばれて、手術によって描ドラゴンはゴミ箱に捨てられた。
描ドラゴンは悲しさと、思ったより自分にブランド価値がない事に衝撃を受けた。
何と言っても中華4000年のパワーだからどこでも何の広告にもなれると思っていた。
だけど、4000年の歴史があるので、もうこの現実を受け入れる余裕はなかった。
そして、もう中華屋には戻りたくないし、そのへんの広告になるのも嫌だった。
打ちひしがれた描ドラゴンは、夜の山の湿った地面に潜った。
人生初の冬眠をしようと思った。
しばらく何も考えたくない気分だった。
ちょっとでも気分が前向きになった時に、現実的な事を考えられるかもしれない。
そんな描ドラゴンを背後から誰かが抱きしめて温もりがじんわりと伝わってきた。
生き物の冬眠に添い寝する専門のおっさんだった。
描ドラゴンは泣いた。
洗浄で仕上がった器以来の温もりだった。
人肌の優しさを描ドラゴンは知った。
描ドラゴンは目を瞑った。
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