小さな成功、小さな失敗

新しい環境へ飛び込びこむことには、とても勇気がいる。そして飛び込んだ後、結果を出すのは、さらにチャレンジングだ。もしあなたが、勇気を持って日本から飛び出し、海外に飛び込んだら、第二言語である英語でコミュニケーションを取らなければならない。職場であれば、業務をこなした上で、会社やお客さんが期待する以上に応えていかなければならないだろう。学校に入学した場合は、課題や試験をこなし、卒業まで辿り着くまでは前途多難。自らが設定した目標を達成するため、ゴールを目指して全力で走るのだ。

住み慣れた環境とは全く違う中で、結果を出すために必要なことは何だろうか？その方法は、意外とシンプルなのかもしれない。僕はカナダで林業学校を卒業するという結果を出すために、小さなことであっても毎日努力を続けた。

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僕が通った林業学校は、伝統があり、プログラムの内容が厳しいことで有名だった。其々のクラスで合格ラインが設定されていて、テストや課題の合計スコアで60%を切ると、そのクラスの単位を落とすこととなる。卒業までに落とすことが許される単位は、たった一つだけで、2つになった時点で即退学となる。退学となった生徒は、24時間以内に荷物をまとめて寮から出て行かなければならない。実際に何人ものクラスメイトが荷物をまとめて学校を去っていった。昨日まで仲良くしていたクラスメイトが、次の日に教室にいなかったりして、言葉にならないぐらいショックを受けたこともある。
「もしそんな状況になってしまったら、一体どうすればいいんだ？」
退学になったら、カナダで他に行くところはなく、日本に帰国する以外選択がない。

クラスの話に戻ると、森林・林業の基礎としてDendrology（樹木学）という学問がある。聞き慣れないかもしれないが、樹木の特徴（葉、皮、枝の形）を理解し、何の樹木かを特定するための学問である。入学したての生徒にとって、このクラスは非常にハード。最初の一ヶ月で50種類の樹木の特徴を覚え、テストを受けるのだが、このテストが占めるスコアの比率が大きく、失敗したら退学になる可能性がかなり高くなる。さらに悪いのが、筆記試験だけでなく、実施試験があるのだ。ラボ（実験室）に、だいたい80個の葉、皮、枝が置かれ、これらを観察してどの樹木かを特定するのだ。
「葉一つは、ありえないだろう？何なんだこの試験は？」
息もできないぐらいアップアップな状況だった。

◆デッドラインが迫る、これは無理じゃないのか？

クラスでは、実際に森（※）に行き、樹木の葉や皮を観察しながら、インストラクターが特徴を説明する。
※学校裏に登山装備なみにしていかないと遭難するぐらいの広さの森がある。
「樹木なんてどれも同じじゃないか」
「明らかな特徴の違いが分かり始めたが、細かい違いが難しい…」
心の中でブツブツ言いながら、必死にインストラクターの話しをメモする。こういった実習は、とても実戦的な反面、その場で理解して記憶しないと、テキストに載っていない知識を説明することが多々あるから、後で困ったことになる。カナダ人でないのは自分だけで、一人英語に苦戦したままだ。

そんな状況にも関わらず、容赦なくテストのデッドラインは迫ってくる。カナダでの新しい環境にも慣れなくてはいけないから、光陰矢の如し。テストで失敗できないというプレッシャーも大きくなる。
「うわぁー！」
と全て投げ出したくて、部屋で大声も出した。でも、退学なんて絶対にしたくなかった。だから、できることを毎日少しずつ続けた。毎日少しでも、自分の確保できる時間の中で、テキストを読み、樹木の特徴を覚えるため、英語のスペルを手が痛くなるまで書き続けた。森にも一人で行って、樹を触り、葉や皮の特徴を肌で覚えた。ゆっくりだけど、コツコツと休まずに続ければ、勉強するためのモチベーションが徐々に上がっていく。
「昨日は一時間、今日は二時間勉強できた」
「ゼロではない。積み重なってる」
目標に向かうスピードが少しずつ力強く、速くなる。自信もついてきた。

試験が近づいて、夜11時ごろにラボに行き、模擬のつもりで実施試験の勉強をしようとしたら、クラスメイトも同じくラボで勉強していた。
「負けられない」
この一ヶ月積み重ねた努力があるから、負けん気も出てきた。誰もが必死だ。この学校を卒業するには、死ぬほど勉強しなければならない。やらなければ、24時間以内に去らなければならない可能性もある。

結果、テストは無事にパスして勉強を続けることができた。毎日少しずつ努力を積み重ねる。気がついたら、大きな成果に繋がる。新しい知識を吸収し「自分は負けない」という自信が湧き出てくる。

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あなたが海外で新しいことに挑戦する時、結果が出せずに悶々とするかもしれない。頑張っても、計画通りに上手く行かない時もあるだろう。そんな時は、まず小さなことでも良いから、諦めずに続けてみてほしい。毎日続ける時間を確保するのが難しい日、モチベーションがあがらない日もあるかもしれない。そんな状況でも、毎日小さい努力だったら続けることができる。その毎日の努力は、どんな目標であっても前に進むための大きなパワーになってくれるはず。そして、毎日積み重ねた後には、想像しているよりも大きい成果が返ってくるだろう。