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カナダの林業学校に行こう。

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軍隊並に厳しかったカナダの林業学校で過ごした日々について。
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#海外生活

寮からの引っ越し

7月から働き始めた測量会社での研修が始まった。オペレーターの仕事は、飛行機内で空間情報を集めるためのレーザー機器の操作。初日の研修では、空港の片隅に停めらた飛行機の中で機器の操作方法を教わった。新しい情報ばかりであっぷあっぷだったが、忘れないように必死でメモをとった。異なる言語や文化の中で働く際、メモを取る習慣は非常に有効で自分の強みになっている。操作を教わりながらも、頭の片隅では「早くアパートを見つけないと」と考えていた。 この研修には、同じくオペレーターで採用されたロー

出会えたことを忘れないように

明日の卒業式に出席するためにジムの両親が町に来ているとのことだった。「夕食をご一緒に」とのお誘いを受けたので、ジムと一緒に彼らが滞在しているホテルにこれから行くことになっている。支度を整えたジャッキーさんと一緒に部屋を出る。ジムの部屋をノックするが、応答がない。寮で他にジムが行くとしたら、中庭だ。煙草を吸っているのかもしれない。「タバコ吸っているだろうから、中庭に行ってみよう」と言って階段を降りる。一階の廊下には何人かがたむろしていた。明日の卒業式を残すだけだから、みんなどこ

森での一夜

毎日頑張っているのにやらなければいけないことはどんどん増えて、「どうしよう?どうしよう?」という思いで頭がパンクしてしまうことはないだろうか?最後には、何も考えたくなくなって思考が停止する経験をされた方は多いかもしれない。 仕事や勉強をしている時、僕も慌てふためいて、何もかもが嫌になることがある。ただ、カナダの森で一晩過ごす経験してから、慌てている時ほど深呼吸が大事だと気づいた。ぜひ、ゆっくり深く呼吸してみてほしい。慌ただしく感じているのは、自分だけで時間はゆっくり、穏やかに

身近にあった探しもの

僕らは、どこかにほしいものを探しに出かける。色んな場所に出かけたり、新しい方法を試したりして。必死になればなるほど、見つからないことはざらだけれども。皮肉なのか、そういうものなのか、ほしいものほどすごく身近にあることに気づくのだ。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 4月末に後期のクラスが終わると、夏休みがやってきた。林業学校の夏休みは、4月末から8月末まで。夏季クラスは

生態系の中で生きる

自然は偉大であり多くのことを教えてくれる、と言われる。最近のアウトドアブームを考えると、皆何かを自然の中に求めて、山や森に入ろうとしているのかもしれない。 確かに、自然は先生のような存在なのかもしれないが、都会に住んでいるとあまりその実感が湧かないのではないだろうか。 例に漏れず、僕も自然の偉大さや自然そのものを実感する機会に恵まれずに人生を送ってきたが、カナダでの夏休みに森で虫を捕り、植物を採って自然の中で過ごしたら、自分も生態系の一部なんだよなと感じることができた。 _

カナダの家族

カナダで過ごす中で、彼らの家族の絆に触れた。一人でいる方が気が楽ではある。彼らとの温かい繋がりに触れて、少しずつ家族や友人の大切さを感じることができた。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 学期のラストの講義が終わると、クラスメイトは解放感が混じった歓声を上げている。荷造りもせずに、服だけ車に放り込んで我先にと車に乗りこみ、一目散に家族が待つ故郷を目指すのだ。何人かのクラ

カナダのソウルフード

"I'm going to Timmies. Do you want anything?"(ティムホートンズ行くけど、何かいる?) カナダ人の愛情表現は、こんなふうだとか。 Timmiesは、ティムホートンズという珈琲ショップ。カナダのそこかしこに在る。赤いカップを手にした人々。カナダ人は、この珈琲を心から愛している。ソウルフード。ソウルドリンク?飲めば、カナダに溶け込む。濃い目のブラック。どんな時もこの珈琲を片手に。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

森をさまよう【完全版】

重いカフェテリアのドアをグッと押す。ギギッと軋んだ音がした後、ゆっくりとドアが開く。まだ11時前ということもあり、カフェテリアの人はまばらだ。今の時間帯は、林業学校の教官や市の林業課に所属するレンジャー達が休憩している。ティム・ホートンズのコーヒーとドーナツも置いてあるので、僕もクラスの合間に時々カフェテリアに来ることがある。今日は休憩しに来たのではなく、テイクアウト用のランチを取りに来た。キョロキョロと見渡すと、食器返却コーナーの近くにテーブルが設置され、茶色の紙袋がうず高

有料
500

森をさまよう(上)

重いカフェテリアのドアを手でグッと押す。ギギッと音がしてゆっくりと開く。まだ11時前ということもあり、カフェテリアの人はまばらだ。今の時間帯は、林業学校の教官や学校に隣接する市の林業課に所属するレンジャー達がコーヒーを飲んだりして休憩している。Tim Hortonsのコーヒーとドーナツも置いてあるので、僕もクラスの合間に時々休憩に来る。今日はカフェテリアに休憩しに来たのではなく、テイクアウト用のランチを取りに来た。ランチが準備されているはずだが、どこにだろうか?キョロキョロと

森をさまよう(中)

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森をさまよう(下)

previous page 進むべき道を失ってうろたえる。地図が頭の中をスルーしていく。しばらく、呆然としていると、ATV(四輪バギー)がゆっくりとこちらに向かってくる。運転しているのは教官のロブ。こちらに気がついたようだが、にこりともしない。「試験中に見回りに来た教官とは口を聞いてはいけない」がルール。しかし、テンパっていたので彼に話しかけた。ロブは、No. No.というように首を横に振る。しゃべりかけてはいけない。君が困っていたとしても、ヒントも教えることはできない。そ