映画は一人で観るもの

子供たちが早く寝た夜22時、夫とアマプラから適当な映画を選んで観ることがある。

中学生のころから、映画は一人で観るべきものだと思っていた。誰かと映画館に行って、終わった後にあれはこうだったねとか面白かったねとか言うのは無粋だ。一人で観て、咀嚼し、飲み込むのだと思っていた。だから映画館へも人と行ったって仕方ない。感想を言い合うのは嫌だし、かといって無言で歩くのも気まずいことになるのだから、一人で行って観るのがよいと思っていた。

高校生になって、一人でレイトショーを観た。静かな空いている映画館で、17歳なのは私だけだった。映画が終わって、映画館を出て吸った冷たい空気は特別なものだった。日中は自転車をおして通らないといけないシャッターが閉まったアーケード商店街をすいーっと帰るのが心地よかった。

家でも一人でVHSやDVDを見た。6畳の部屋で、15インチのブラウン管をベッドから寝転んで眺めた。部屋にはたくさんの映画のポスターを貼った。雑誌のRoadshowの付録や、CD屋さんの「自由にお持ち帰りください」と書かれた箱に入っていたポスターで部屋の壁を埋めた。もちろん一人だった。あまり有名ではないが面白い映画を観た後は、まるで自分だけのものかのように錯覚した。一番好きな映画を聞かれたら、この映画と答えようと思った。友達はまだ誰も見ていない、面白い映画を探した。

今は夫と映画を観ている。昨日はサスペンスホラーを観ていた。「まさかグルじゃないよね」と言っていた女がグルだった。「こわ」「最初のあれは何?」など、ほぼ私が夫に話しかけていて、夫はそれに答えたり無視したりしながら画面を見つめている。

泣いているところを見られるのは恥ずかしいが、面白い映画を観た後の興奮を分かち合える。面白いところで笑って、笑うところが同じだと楽しい。意味が解らなかったところの答え合わせをするのが楽しい。怖い映画も少し怖くなくなるのが助かる。

誰かと映画を観るのは楽しい。

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