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幸福な人、春日俊彰/オードリー②

この記事の続きです。

最近になって「あれ、自分はオードリーのファンだな?」と気づいたことから始まったオードリーシリーズ。自分が「なぜファンになったのか?」を掘り下げるべく、今回は春日俊彰さんについて私が感じているその魅力を書いてみます。とても不思議な人なので何が書けるのか自分でも良く分かってないけれど、春日さんへの溢れるリスペクトを込めて。

幸福な人

「春日」といえば私の中での印象は「幸福な人」である。ここでの幸福な人というのは「周りと比較しない、根拠のない自信に溢れている人」のことで、これはある意味、人間にとっての究極の才能だ。

私たちが日々勉強や仕事に精を出したり、素敵だなと思った異性の関心を惹くために頑張ってみたりするこの「人生」というものは、究極的には「自分が幸せになる」ためにある。

「幸せになりたい」から勉強を頑張って良い大学に行こうとするし、「幸せになりたい」から、素敵な恋人を作りたくなる。人生でいろんなことに挑戦するけれど、それらは全て「幸せになる」という目標に繋がっている。

そんな「幸せ追及ゲーム」である人生において「他人と比較することでしか幸福感を得られない人」はいつまで経っても幸せになることができない。

単純な話で「他者との比較で勝っている」ことが幸福を感じる条件だとすると、世界中に一人しか幸福な人が存在しない事になってしまうし、世界とか大きなことを言わずに身近なところで比べても「職場のあいつのがカッコいい、仕事ができる、頭がいい、オシャレ、彼女がカワイイ…」と幾らでも自分が劣っているところを見つけられてしまうからだ。

「他人と比較するとしんどいから止めた方がいいよ」と言われて「そりゃあそうだ!」とは思うけど、そうは言っても比べてしまうのが人間というもので(オードリーで言えば若林は人と比べて劣等感で苦しむタイプ)、普通はこの「比較すること」から逃れることができないのだけれど、春日俊彰という男はナチュラルな才能として「他人と比較しない幸福感」を得ることができる稀有な存在なのだ。

どうしても幸せなんですけど、やっぱり不幸じゃないと努力ってできないんですかね?

若林の著書「社会人大学人見知り学部 卒業見込」で紹介されている有名なエピソードがある。

むかし事務所からも見放されファンもいない時期、相変わらず努力をする姿勢の見えない春日に変わってもらいたくて「二十八にもなってお互い風呂なしのアパートに住んで、同級生はみんな結婚してマンションに住んでいるというのに、恥ずかしくないのか?」と問いつめた。相方は沈黙した。
三日後、電話がかかってきて、春日は「どうしても幸せなんですけど、やっぱり不幸じゃないと努力ってできないんですかね?」と真剣に言ってきた。
ダメだこりゃ。と思った。金もない、親からも呆れられている、そんな状況で一体何が幸せなんだ。とぼくはさらに問い質した。ゲームが出来たり、仲間と遊べたりするのが楽しいという答えが返ってきた。

引用元:社会人大学人見知り学部 卒業見込

うーん、強い。

やっぱり「人と比べない」という才能は究極の才能だ。

春日のこの性格は幼少期の頃からのものらしく、「皆さん、本物の春日ですよ(皆が本物の春日に会いたいという前提でのセリフ)」という決め台詞から始まる「春日」という「謎の自信に溢れたキャラクター」は、売れた後に幼い頃の同級生から「お前全然変わらないな!」と言われるくらい、春日俊彰のナチュラルなキャラクターをデフォルメしたものらしい。

スター春日

そして、春日といえばやっぱり「スター」だ。

バカリズムさんがつい先日あちこちオードリーに出演してちょうどこの話をしていたようだけど、春日俊彰にはスター性がある。

書きながら「そもそもスターって何なんだろう?」と考えてみると、選手の頃を知っている訳ではないけれど長嶋茂雄さんの事が思い浮かんだ。

天皇陛下が初めてプロ野球を観戦する「天覧試合」でサヨナラホームランを打った話は有名だが、スターの条件として「ここぞという時に決める」という条件がある気がする。

私の記憶にある出来事で言うと、イチローがWBCの決勝、韓国との試合で打ったヒットのような、決めなきゃいけない時に決める人。

春日と関係ないけどこの椎名林檎がイチローを想って作ったスーパースターという曲は名曲だな、といつ聞いても思う。

長嶋茂雄、イチローという本物のスーパースターと比べると随分こじんまりしてしまうが、春日も「ここぞという時に決める」スター性の持ち主だ。

2008年のM-1で準優勝した時もそうだし、フィンスイミングの世界大会で銅メダルを取ったり、「人志松本のすべらない話」でMVS(Most Valuable すべらない話)を獲得したりする。

このすべらない話のMVSの話は、若林がメチャクチャ悔しがりながら魂の叫びをあげているので聞いてみて欲しい。とても面白いです。

(若林)これはね、人生だね。あのね星の下ってあるんだよ。春日はやっぱりスターなんだよ。6回、7回周ってきたんだっけ?

(春日)6回じゃないかな?

(若林)春日ってサイコロが6回周ってくるんですよ、やっぱり。
俺2回なんですよ、やっぱり。

【中略】

(若林)俺お前が4回目ぐらいのサイコロ出た時「サイコロでろー!!!」って思ってたんだから。自分のサイコロ。で、お前が6個全部、全部落としてたんだよ。ちゃんと。
それもあってのMVSなんだよ。物語があんだよ。
でねこれはね、人生なんだよ。

春日は「MVSを獲れる男」ではなく「サイコロが周ってきちゃう男」なのだ。

オードリーのオールナイトニッポンでは若林、春日、毎回それぞれがフリートークを行っている。10年以上続く毎週のフリートークは明らかに若林の方が安定して面白く、春日はけっこうな確率で「あれ??」となる微妙なトークをするので(特に初期の頃)、オードリーの「トークが面白い方」は確実に若林なのだけれど、大舞台でMVSを獲ってしまうのは春日俊彰なのである。

春日というキャラクター

ここまで、春日は「人間としての究極の才能を持ってる」とか「スター」だと絶賛してきたけれど、春日はほんとの根っこの部分で自分に対して絶対的な自信を持ってる人ではないとも思っている。

芸能界の中で輝く「本物の才能」をたくさん目にすれば「あれ?自分ってたいしたこと無いのかな?」と気づいてしまうこともあるだろうし、それが前述のバカリズムさんの話にも繋がってくるんだけど、春日俊彰はその弱い「人間」春日を、髪を七三分けにし、ピンクのベストを着た「春日」というキャラクターに変身することで超克している。

そして、ピンクのベストを着た「春日」は言わば「ドラえもん」のような存在で、普通の人間としての様々な基準が適用されなくなるのも面白い。

例えば、春日がクミさんへの公開プロポーズ(TBSのモニタリングで放送)直前に女の子をお持ち帰りしたところをフライデーされた通称「春日事件」では、番組で見せた最高に素敵なプロポーズで日本中に感動を呼んだ直後の浮気報道にも関わらず「春日www」とすぐにネタとして昇華され、昨今の「不倫、浮気=人間のクズ、幾らでも叩いて良い」という激流に押しつぶされることは無かった。

どうしたら性的な不祥事をネタとして昇華できるのか?は

・不祥事の内容(公衆トイレとかどうしようもない)
・不祥事発覚後の対応(相方含む)

が大きいけれど、そもそも潜在的に「なんとなく気にいらない」と感じていた層の多さがポイントで、春日の場合はTVの中にドラえもんのようなキャラクターとして存在していたため、人間界での嫉妬や叩く対象に入っていなかったことが大きいと思っている。

もちろん若ちゃん、クミさんのラジオでの対応が最高だったのは言うまでもないけれど。

春日俊彰の魅力

春日俊彰は不思議な男だ。売れてからもずっと家賃39000円、風呂無しアパートのむつみ荘に住み続け、住所も全部バレてるから度々ヤバいファン?からの突撃を受けるのにも関わらず引っ越しをしない鈍感力。

ネット上で伝説として語りつがれる「黄金伝説 1カ月1万円生活」での異常な節約家っぷりや、毎日2時間以上をエロパソ(自分磨き)に費やし続ける恐るべき性欲。

普通なら引かれてしまいそうな要素も、そのスター性、整ったルックス、隠しきれない真面目さにくるまれて「魅力」になり、春日さんはTV界のスターとして、21世紀最大のラジオモンスターとして活躍し続けている。

そして、万が一若林さんがこのnoteを見たら怒られそうだけど、春日の「鈍感力」と「他人と比較せずに今を楽しむ才能」があったからこそ、繊細で神経質なところのある若林がいろいろなイライラの蓄積からかなり棘の多いボールを投げつけても「痛ってぇ………もっとこいよ(笑)」と受け止めることができたし、オードリーは武道館を満員にできるスーパースターにまで成長できたのだと思っている。(そもそも若林がいないと春日は舞台に立つきっかけも掴めなかったのだけれど)

春日さん、ずっと「幸福な人」でいつづけてくれてありがとう。


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1, 終わらないヒーロー成長物語
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3, 進化する狂気の人、若林正恭
4, オードリーのファンです

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