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本屋を開業して5カ月。一番うれしいのは、静かに興奮している人の顔(*゚▽゚*) が見れること。

2022年10月1日に南十字を開業してちょうど5カ月が経ちました。OPEN前は「本屋で店番をしつつWebの仕事を続けていくって本当にできるのかな…?」「お客さんがたくさんきたらどうしよう…?」とちょっと変わった心配をしていたのですが、無事(??)というかなんというか、何の問題もなくWebの仕事&本屋の店番を両立する日々を過ごしています。

雨の日とかは本当にお客さんが誰も来ないような日もあるので、本屋というよりは「自分の好きなものがたくさん置いてあって、音楽も好きに流せる快適なオフィス」みたいな感じ。

本当はもう少しゆっくり読書をしながら珈琲を飲んだりしたいのですが、Webの仕事が無いと本屋の継続も難しくなってしまうので、今は「仕事を頼んで頂けるはとても有難いこと…!」ということで、ひたすらPCとにらめっこする毎日です。

店番&Webの仕事をしている時の様子


選書については(な)がメインでやってくれていて、読書会などの企画や運営は(み)がやってくれているので、私は本当に「店番」をしているくらい。自分が自信を持って「これはちゃんとやっている!」と言えるのはトイレ掃除くらいですかね。なんとなく、トイレがピカピカなら「ここは良いお店だな!」と思って貰えるような気がしていて、それだけはちゃんとやっています。

「選書をしないのに本屋をやっていると言っていいのか?」という内なるツッコミもありますが、自分よりいろんなことを広く&深く知っているメンバーがいるので「役割分担だよね!」ということでお任せ。もう少し時間が経ったら「自分ももっと選書したい…!」と思うようになるかもしれないし、まぁそこは流れに身を任せていければと。


さて、こんな感じで本屋なのか、ただ本屋でWebの仕事をしている人なのかよく分からない私ですが、本屋を始めて明確に「これは素晴らしい体験だな…!」と思っていることがあります。

それは、南十字のことを気に入ってくれているお客さんの表情を見れること。カウンターの中に座っていろんなお客さんを見ていると、たま~にですが、明らかに「このお店、めっちゃいいやん…(*゚▽゚*) 」という表情をしている方がいます。

お店を運営している側が言うとちょっとアレですが、本当に、なんか目がキラキラしているんですよね。

お会計の時も内なる興奮をぐっと抑えたような感じがあって、こちらは「あぁ、この人はすごく南十字のことを気に入ってくれているんだな…!」というのを感じられて、とてもうれしい気持ちになります。

東京であれば「南十字のような」だったり、もっといろんな意味で面白い、素敵、個性的な本屋さんがたくさんありますが、小田原(神奈川県の西側)だとあまりこういうお店が無いので、小田原近辺在住の本好きの方にはとても可愛がって頂いているのを実感しています。


稼ぎと務め。お金を稼ぐだけでは得られない、目の前の人に心から喜んで貰える充実感。

南十字を始める前に考えていたこととして、この「稼ぎ」と「務め」という概念があります。なにで見聞きしたのかすっかり忘れてしまったのですが、こんなお話です。

江戸時代の仕事には「稼ぎ」と「務め」という2種類があって、その2つができて初めて一人前の大人として認められた。「稼ぎ」とは文字通り、お金を稼ぐ、ご飯を食べるための仕事で、「務め」とは所属する共同体を成り立たせる為に必要な仕事、役割のこと。

これは私の解釈なので正確な情報なのかぜんぜん自信が無いのですが、仕事が2種類あるって面白いですよね。現代では「仕事=お金を稼ぐためにやること」というのが当たり前の感覚としてあると思うのですが、江戸時代はそれだけが仕事では無かったようです。

社会が成熟して分業化が進み「誰が何を担うのか?」が明確になった結果、例えば「務め」的な仕事は「公務員がやること」みたいな感じで私たち一般人とは切り離されてしまったのだと思うのですが、江戸時代だと「これって誰がやった方がいいんだ…?」みたいな曖昧な部分がまだたくさんあって、そこを「務め」が担っていたのかなと想像しています。

2020年にBULLSHIT JOBSの日本語訳版が出版されて話題になっていましたが、たぶん人って「稼ぎ」だけで人生に対してほんとうに深い満足感だったり、充実感を得ることは難しくて、「務め=誰かの役に立っていると実感できる仕事=BULLSHITじゃない仕事」を求めている人が多いんじゃないかなと。

自分にとっては「稼ぎ=Webの仕事」「務め=本屋」という関係性になっていて、実際この2つの仕事をやってみての実感として「務め=誰かの役に立っていると実感できる仕事=BULLSHITじゃない仕事」を両立できるというのは、心の健康にとってとてもプラスになっていると感じます。

だって、自分たちでゼロから始めたお店に (*゚▽゚*) こんな顔をした人が来てくれるんですもの。この、圧倒的なフィードバック、手触り感みたいなものはWebの仕事で何千万円、何億円みたいな予算規模の仕事をしても味わえないものです。


もっと自由に、もっと多様になっていく。

今日私はお店がお休みなので、自宅近くの山の中にあるテントにこもって仕事をしています。コロナがきっかけでリモートワーク、オンラインMTGが当たり前になり、職種によっては本当にどこにいても仕事ができるようになりました。

私みたいに「店番しながら別の仕事する」みたいな人も増えていくだろうし、何が本業なのか分からない、3つ、4つといろんな仕事を掛け持ちしているような友人もいます。

こういう形でお店を継続していけるなら、今までは東京など人口の多い場所でしか成り立たせるのが難しかった「個人の "好き" "やってみたい"」を出発点にした個性的なお店や場所を増やしていけるだろうし、シャッター通りになってしまった商店街の問題なども改善できるかもしれない…?と期待しています。

今までは「東京の第一線でバリバリ活躍していた人が、一線を退いて地方で活動する」みたいな流れがあり、その場合どうしても「東京>地方」の間で情報の鮮度に差がありましたが、今は「東京の第一線でバリバリ活躍している」と「地方に住んでいる」が両立できるようになったので、日本中でいろんなアップデートが起きて面白いことになっていくんじゃないかな?と楽しみにしていたりもします。

ちょっと話は逸れてしまいましたが、明日から本屋は6か月目。本屋運営用につくった会社も明日、3月1日から2期目に入るので、これからも「稼ぎ」と「務め」を両立していけるよう踏ん張っていきたいと思います。

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