ストレッチって効果あるの?
よく聞くこれ。
一般的にストレッチで筋肉を伸ばすとやわらかくなって動きやすくなったり不調が改善したりするとか言われてる。
一方で、ストレッチは意味がないって言う人もいる。
さてどっちが正しいのか。
お客さんからよく聞かれるし、実は答えははっきりしてるので、今回は解剖学的事実からこれについて書いていきますよ。
関節を最大位置まで可動させてさらに力を加え、付着している筋肉をぐいーんと伸ばす。
その時点ではその部分が伸びてるから、なんかやると伸びる気がする。
うん、分かる。すごく分かる。
でもやった事ある人は分かると思うけど、そのまま柔らかくなるかというと…そんなことないよね。
そんなことあった人は稀有な特殊体質です。おめでとうございます。(だいたい思い込みだけど)ボソッ
つまりストレッチで筋肉は伸びないです。
いきなり結論で申し訳ないけどこれが事実。
でもストレッチ信者さんたちは絶対認めないと思うから、一応これは『普通のレベルのストレッチでは伸びない』という補足もつけときます。
最後の方でこの『普通じゃないレベル』についても書きますよ。まあ…普通じゃないの意味がよくわかると思う。
ではなぜストレッチでは伸びないのか。早速ですが地獄のターンです。
関節を最大可動させた時、付着している筋肉はもちろん伸ばされます。
そして伸ばしているから筋肉には張力がかかります。
筋肉に張力がかかったとき、筋肉の腱の部分、そこにある『ゴルジ腱器官』というものが反応します。
こいつが反応すると何が起きるかというと、筋肉が自動で収縮し引っ張り返します。限界を超えるとちぎれるから、それを防ぐためですね。かしこい。
ちなみにこの状態を、エキセントリック少年ボウイ じゃなくて、『エキセントリック筋収縮(遠心性収縮)』といいます。長いので以下『エキセントリック』とします。遠心性収縮でいいじゃないかって?いいえエキセントリックだね。言葉の響きがすきだから。
腱がちぎれるのを防ぐためと上で書いたけど、「じゃあ引っ張りすぎなけりゃいいんじゃね?力加減くらいできるよ?」と思うかもしれないので、これが何のためにあるのか逆の動きでもっと納得いくように説明します。
逆の動き、つまり伸ばすじゃなくて縮めるですね。
例えば腕を曲げる動き(肘関節の屈曲)。
この動きは主に上腕二頭筋の作用によるものだけど、この時、真逆の作用をする上腕三頭筋は伸ばされ、意識とは関係なくこのエキセントリック筋収縮が起こります。
「なんで同時に逆の働きをするの?不効率じゃない?」と思うかもだけど、ここでエキセントリックが起きないと肘を曲げる作用だけが一方的に働いて肘関節がぶっ壊れます。
体の動きは自分の意識で完全にコントロールしているつもりになっちゃうけど、こういう装置が意思とは関係なく勝手に働いてくれてるおかげでちゃんとムリなく動けるわけですね。
ちなみに、この時の上腕二頭筋の事を『主動作筋』、上腕三頭筋の事を『拮抗筋』といい、逆ならその関係性も逆となります。
つまり、お互いが引っ張り合う事によって故障を防ぐと共に力加減も調整できるわけですね。うーん、かしこい。
さて、ストレッチをしてこのエキセントリックが起きてさらに伸ばしているとどうなるか。
筋繊維がちぎれます。
筋繊維の断裂をケガじゃない程度に起こす人間の営みといえば、そう、筋トレですね。
つまりストレッチをしっかりやるという事は、ものすごく効率の悪い筋トレをしているという事になります。
なので、元々運動習慣がない人やしばらく動けなかった人がやるには丁度いいかもですが、一般的に期待しているような、普通の人が関節を柔らかくするためや不調を改善するためにやるのは意味がないというのが解剖学的な事実であり最終結論です。
じゃあ関節をやわらかくするにはどうしたらいいの?となると思いますが、簡単です。動かしまくればいいです。
神経、外傷、変形などの病理的なものが原因でない場合、関節が硬いのはそこを動かさない生活をしているからです。
この状態を細かく分析すると、動かさないから関節を動かす筋肉の作用が弱い、その運動のためのシナプス形成が弱い、筋肉が硬い。これらが考えられます。
だから動かせばいいです。動かしていれば作用が強くなり、運動シナプスが形成され、硬かった筋肉も正常な範囲にまでは動くようになります。
元々動かせるものが動かなくなったのなら、動くようになるまで動かせばいい。自然の摂理ですね。
無理しないように暇さえあれば動かしてあげる。これだけで正常可動域まで動けるようになります。
注意点としては、他人に動かしてもらう(他動)のは悪くないですが、自分で動かす事(自動)の方がもっと重要です。両方やるか、自動を十分にやりましょー。
しかし、体が柔らかいという事のイメージをアスリートレベルでもってしまっているひとがたまにいたりします。
例えば相撲やバレエなどの股割り。股関節が180度開脚しているあれですね。あのレベルを柔らかくて健康な状態だと思っているなら、それは間違いなので考え直してください。
股関節を開く動き(外転)の正常可動域は片側45度。両方合わせて90度です。
多少の個人差はあれど、その倍の180度というのは異常です。要するにあれ、股関節が脱臼してる。
周囲の筋肉を強靭に鍛えつつ、ゆるやかな脱臼を繰り返すことで脱臼はしているが完全な脱落を防いで運動能力は保つという、とてつもなく高度な芸当をしているという事ですね。うーん、すごい。
相撲は強烈な衝撃で膝などほかの関節を壊さないように、バレエは普通の体では表現できない美しさを求めるために、人生をそれに捧げるほどの情熱があって初めてできる事です。
健康ではなく生き様のための過適応なので、普通のひとは真似しちゃダメですよ。
最後に、「どうしてもストレッチでやわらかくしたいんだ!」というひとのために。
筋繊維を繰り返し断裂させると、修復した際に『サルコメア(筋節)』という部分が長くなってるぽいっていう研究結果があるよ。
これがストレッチで本当に起きる現象だとして、組織レベルでの損傷からの修復による適応という長いスパンの話なので、これでやわらかくなるには、毎日もしくは隔日くらいの間隔で長時間やるという事をすればいけるかもしれない。年単位で。数か月程度ではムリ。
もちろん少しでもやらない期間を作ったら筋腹全体としては増強されるだけなので逆効果。
一度やれば伸びたまま硬くなりにくい体ができると思うよ。苦行でハゲるかもしれないけど…
それと、スポーツ前にストレッチをするとケガをする割合が高いっていう統計があるっぽいので、やるなら自分のみでね。
結局、その都度短期間で動かしまくって柔らかい体にした方が労力コスパ的に遥かに優れてるから、ストレッチにこだわりがない普通のひとにはストレッチはオススメしません。
という事で最後にまとめ。
【ストレッチは効果があるか?】
運動習慣がない、又は動けない人・・・運動としてやる価値あり
普通に動ける人・・・柔軟性を得る効果なし、もしくは逆効果
【柔らかくなるには何したらいい?】
その部位を動かしまくる(他動よりも自動が重要)
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