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トレッドミル(ランニングマシーン)を使ってフルマラソンのタイムを予測できるのか?

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フィットネスクラブにいくと必ずあるであろうトレッドミル(ランニングマシーン)。
今や家庭用も販売され、利用する方も増えていると思います。

トレッドミル(英語:treadmill)とは、屋内でランニングやウォーキングを行うための健康器具。ルームランナー、ランニングマシン、ジョギングマシンなどとも呼ばれる。また、歩行用の低速のものはウォーキングマシンとも呼ばれる。
参照元:ウィキペディア

室内で走ったり歩いたりできるのでトレッドミル(ランニングマシーン)は便利なアイテムですが、このトレッドミル(ランニングマシーン)を使ってフルマラソンのゴールタイムが予測できるという論文を見つけました。

それがこちらです。
Predicting Marathon Time Using Exhaustive Graded Exercise Test in Marathon Runners
(マラソンランナーの徹底的な段階的運動テストを使用したマラソン時間の予測)

(2016年,著者はリンク先参照のこと)

また論文を読むにあたり、以下のページを参考にしています。
参考資料:ランニング学会海外文献紹介

それではこの論文を見ていきたいと思います。

■論文の概要

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この論文はトレッドミル(ランニングマシーン)とロードで行われたマラソンの2週間後、その消耗度とマラソンのゴールタイムとの相関関係を調査しています。

表題に「Exhaustive Graded Exercise test」とあり、直訳して「徹底的な段階的運動のテスト」と書きましたが、もっと簡単にいうと「徹底的に疲れるまで走ってもらう実験」ということです。
トレッドミル(ランニングマシーン)とフルマラソンで疲労困憊(ひろうこんぱい)まで走ってもらったら、どんな相関関係が出るのかという趣旨になります。

実際の調査は2012年のメルボルンマラソン、2013年のキャンベラ2013マラソン、同じく2013年ゴールドコースとマラソン2013に参加したランナー59人に対して行ったものになります。

59人のうち40人が調査対象となる条件を満たし、それを調査したところ、トレッドミル(ランニングマシーン)とフルマラソンの完走タイムは数式である程度予測できるという結論に達したとのことです。

シンプルで簡単なテストであるためフルマラソンのタイムを予測する新しい方法となるであろうとまとめられています。

では、実際の手順はどのようにしたのかをみてみましょう。

■調査・実験はこのように行われた

テストはメルボルン・キャンベラ・ゴールドコーストにあるトレッドミル(ランニングマシーン)を使用し、気温18~21℃、湿度48~52%という環境下で実施されました。

トレッドミルは段階的に速度と傾斜をあげ、調査対象者が限界に達したところでストップし最大心拍数と平均心拍数を記録し、タイムを予測します。

実際のテストは4%の傾斜で時速4kmの速度で5分間アップ。
その後3分ごとに速度を時速1kmづつ上げていき、26分経過後は時速13kmで固定しています。
傾斜はスタートから29分までは4%で固定、その後3分ごとに2%づつ傾斜を上げていくという手法がとられています。

※論文内のトレッドミル(ランニングマシーン)の設定時間の表記が間違っていたので時間のみを訂正して本記事を書いています。。

なお、フルマラソンのタイムに関してはWEBサイトを参照したと書かれています。
また、安全のため実験開始2分後から心拍数等を継続して計測しています。

■結果はどうだったのか

59人のトレッドミル(ランニングマシーン)のテスト参加者のうち、40人がフルマラソンを完走しています。

テスト参加者でマラソン完走したランナーの完走タイムの平均は3時間53分51秒であるとし、トレッドミル(ランニングマシーン)テストとマラソン完走タイムの相関関係は以下の数式で求められると書かれています。

マラソン完走タイム=(トレッドミルテスト継続時間) × -3.85 + 351.57
(数値は係数)

なお、論文内の表3には予測時間一覧表がありました。
以下のような数字になっています。

トレッドミル継続時間 → マラソンゴールタイム予測
15分 → 4時間53分49秒
20分 → 4時間34分34秒
25分 → 4時間15分19秒
30分 → 3時間56分04秒
35分 → 3時間36分49秒
40分 → 3時間17分34秒
45分 → 2時間58分19秒
Predicting Marathon Time Using Exhaustive Graded Exercise Test in Marathon Runnersの表3より引用

この調査において予測の誤差は10%を越えず、場所を変えても12%以上の誤差は出なかったとしています。

■この論文の結論

結論としてトレッドミル(ランニングマシーン)の段階的に傾斜とスピードをアップさせるテストとフルマラソンの完走タイムは相関関係にあると結論づけられています。

マラソン前にどのくらいのタイムで走れるか予測することはレースの戦略を立てる上で重要な要素です。
予測することができれば肉体的にも精神的にもメリットが大きいということになります。

また、マラソンのタイムを予測する際にはAT値やLT値を計測する手段がありますが、計測する器具もまた費用も高価になってしまい簡単には計測できません。

※AT値・LT値についてはこちらをご覧ください。

しかしトレッドミル(ランニングマシーン)を使い、今回の論文で紹介した方法を使えばより簡単にフルマラソンゴール予測ができるとしています。

■最後に

正確なゴール予測タイムを出すには確かにLT値や最大酸素摂取量(VO2MAX)を計測する必要があるため、トレッドミル(ランニングマシーン)で正確にゴール予測タイムが出せるのは面白いと思います。

しかし、時速13km(4'36/kmペース)だとサブスリーランナーであれば余裕のはず。
そこから疲労させるために傾斜をつけていくわけですが、傾斜を4%から徐々に上げていくには最低でもフィットネスクラブなどにおいてあるようなマシーンを使わざるえないので、家庭で気軽にというわけにはいきません。

さらに誤差10%を越えなかったと書かれていましたが、ゴールタイム4時間と出た方だと最大で誤差は24分。
これだけの誤差が出ると本当に参考程度ということになるでしょう。

気軽にフルマラソン予想タイムを把握できるのは魅力ですが、20分前後の誤差は出ることを把握した上で試す必要があると思います。


同時掲載


最後までお読みいただき、ありがとうございました。これからもよろしくお願いいたします。