「花と火薬」

高速道路に乗ると
軽自動車のフロントガラス越しに
対向車のヘッドライトが胸を抉る
これでいいんだよ
その道を選んで欲しいと強く思ったのは僕で
その道を選んで欲しいと言ったのも涙一つ分の勇気を出した僕
辛辣な君の顔が見たい訳じゃない
辛辣っていいながら
ニコニコしてる
花のような表情が見たいんだ
大丈夫だよ
僕は
なんともないよ
メデューサのような視線で
貴方自体を石に変えてしまうような
「人」でありたくないんだ
伝えたかった言葉は花火が代わりに吠えてくれる
飴細工が溶けるまでに
たいして時間はかからなかったけど
只の果実に戻ったから
リンゴの色を
しっかり焼き付けることが出来たんだよ
ささいでちっぽけなお願いがあるんだ
たとえ雨で道が泥濘んでいたとしても
隣にいる人が
肩から体を抱きしめて
君を守ってくれるはず
だから
これから先
なにがあっても振り返らないで
そこに僕の影はないから
間違えてうつむくことがあっても
水たまりに映る
僕は笑っていられるから
けどね、君が僕の願いを叶えてくれるなら
うつむかずに歩いてもらいたい
通り雨が降ったら
そこにいる僕は
泣いているように
見えるかも知れないから
もしこの祈りが届いたら
百合のような綺麗な言葉と心を
引き裂かれそうな気持ちに負けずに
君に渡す事が出来るんだ
悩みや不安に押しつぶされそうになったら
夏に花火を見に行って
「愛してる」
言いたくて言いたくて
言えなかった言霊を
火薬の音に変えて
僕は
叫んでいるから
ポイフルを口の中へ
放り投げ
ハンドルを強く握り直した



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