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実際、田舎の世帯数動態はどうなっているのか。家不足を統計からみてみた。

過去二回の記事で田舎の空き家事情と移住者の家探しについて現場の経験を元に書きました。

今回は少し方向性を変えて人口減でも入居できる家は足りない状況について、岐阜県郡上市を例に人口と世帯数の統計を中心とした数字を元に考察します。

はじめに結論を書くと統計をみた結果、人口と世帯数の近年の動態は毎年人口は大きく減少しているのに対して世帯数は少しずつ増加傾向となっていることがわかりました。

これは下記の一記事目、「日本の平均世帯人数と世帯数推移をさぐる」で示されている日本の平均的な人口と世帯数動態、および下記の二記事目「進む高齢化…「田舎」と「人口減少」にまつわる誤解とは?で示されている田舎の平均的な人口と世帯数動態とほとんど同じ傾向でした。

いきなり「普通の結果じゃん」となりましたが、実際に数字にすることであらためて見えてくることがあると思います。


・平均世帯人数は2.47人、世帯数は5042万5000世帯(2017年)。
・大よそ世帯数は増加、平均世帯人数は減少の傾向。
・単独世帯の増加が世帯数の増加、平均世帯人数の減少の大きな要因。
確かに、都会を除くと人口は減っていますので、講師の言っていることは正しく聞こえます。しかし、世帯数はどうでしょうか?
世帯数は一部を除き増加していますし、単身世帯についてはすべての地域で増加しています。おそらく、晩婚化か離婚、単身の高齢者が増加傾向にあると思われます。

減少する人口と増加する世帯数

前提として、2020年2月時点の郡上市の人口は41,231人、世帯数は15,428世帯で平均世帯人数は2.67人でした。そのうち外国人人口は583人、世帯数は521世帯、平均世帯人数は1.12人でした。

なお、当市の面積は1,031km2なので人口密度は約40人/km2です。土地利用区分の89%は森林で、宅地面積はわずか1.3%となっています。

2015年4月から2020年2月の人口と世帯数の推移を図1に示します。

人口は年間587〜708人減少し、世帯数は年間3〜35世帯増加しました。人口は自然減と高校生の進学、就職による減少が中心と推察します。世帯数は毎年微増傾向でした。

2015年4月から2019年4月にかけて人口は2,566人減少し、世帯数は69世帯増加しました。5年間で人口の約6%が減少していると考えるとすごいですね。

郡上市の人口と世帯数の動態の傾向は全国と同様のものであることがわかりました。では、人口減に対して世帯数の増加は何によって起こっているのか、もう少しみていきます。

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図1. 人口と世帯数の推移
(郡上市 HPの統計データより作成)

統計で調査されている外国人人口と外国人世帯数の推移を図2に示します。

外国人人口は年間11〜40人増加し、世帯数は年間13〜37世帯増加しました。絶対数は小さいですが、傾向としては人口、世帯数いずれも毎年増加傾向でした。

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図2. 外国人人口と世帯数の推移
(郡上市 HPの統計データより作成)

また、統計データとしては一部のみですが、岐阜県の統計によれば2016年と2017年の郡上市への移住者は年間60、74人でした。

以上のことから、郡上市内部からは人口流出傾向があり、代わりに外部からの日本人、外国人の移住者によって世帯数は毎年微増していると考えられます。

世帯数の増加が外部からの移住者によって起こっているとすると、彼等は基本的には不動産情報を元に家を探すのが一般的ですので、やはり限られた物件情報に需要が集中した結果、多くの人が家探しに苦労するのではないでしょうか。

とすると、やはり埋もれている空き家たちには移住者からの需要があると言えそうです。次は当市の空き家について統計から考えてみます。

まだまだ活用されない空き家

平成25年度の統計から別荘等の二次的空き家を除いた空き家率と、その空き家の内、賃貸および売却用途でないその他空き家の比率を確認しました。

郡上市の空き家率は12.9%であり、これは全国平均12.8%と同程度でした。約10軒に1軒以上は空き家となっています。

次にこの空き家のうち、賃貸および売却用途でないその他空き家割合は郡上市が81.1%、全国が40.9%となっており、郡上市は全国の倍の値となっていました。

その他空き家の比率が非常に高いことから当市では多くの空き家が活用されていない状態です。

これには様々な事情が考えられますが、ひとつは当市の森林面積の約90%に対して、宅地面積がわずか3%と空き家の多くが田舎すぎて不動産として扱いづらい山間部にあることが影響しているのではないかと思います。

結局自分たちでやるしかない

今回あらためて統計から現場の感覚を確認した結果、やはり自分たちの地域には入居できる家が必要だと感じました。

ではどうするか、といったら結局は空き家のオーナーさんをはじめ地域が取り組むしかないかなと思います。逆に地域の空き家を早く活用できる体制を整えれば物件不足を逆手にとって多くの移住者を呼び込むことも可能かもしれません。

今回は郡上市の統計を元に考えてみましたが、同じような地域は日本中あちこちにあるはずです。

外国人を含む移住者から空き家の需要があるならば、地域外の人とも関わる方針を持って自分たちでまずは始める必要があります。

「あなたのまちにスーパーマンはこない」という木下さんの記事にもありますが、やはりまずは自分たちで。私自身も地域の空き家活用に向けてもっと活動していかなければと再任した次第です。


* * * 関連記事 * * *

* * * 統計値参照元一覧 * * *

郡上市ホームページ:人口、世帯数統計

岐阜県ホームページ:移住者統計

国土交通省ホームページ:空き家率

http://www.mlit.go.jp/common/001172930.pdf



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