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集落の小さな祭礼の昔話に出て来た「稼ぐいなか」。ひとつ前の時代から稼ぐを考える

自分が住む中山間地域の集落の小さな祭礼の準備の際に聞いた昔話から、ひと昔前は「稼ぐ地域行事」というが普通だったのだということを知り、ハッとしました。

現在でこそ多くの地域行事が助成金を元に運営され、そこではなぜか「稼ぐ」こととその収益の再投資による継続や発展が度外視されていることが多いです。

このような形で、多くの地域行事ではもっぱら「稼がない」ことが普通のように捉えられる節があるのですが、ひと昔前の時代は地域行事で「稼ぐ」は自然なことだったのだと知る機会がありました。

きっかけは私の住んでいる集落で数百年規模で細々と続く小さな薬師堂の祭礼の事前準備のときに地域のご年配の方々から聞いた昔話のひとつでした。

「この祭礼もなぁ俺が子供頃は道ずらーっと店が並んどったぞ」、「昔は峠の向こう(林道を越えた集落で10km弱くらい)からも大勢人がきとった」、「縁結びのご利益があるって言われとったから、若い男女に人気があった」

この祭礼はとても小さなものではあるのですが、集落の方達が協力してお金を出し合ったり供物の餅づくりをしたりと毎年次へ繋いでいく姿に触れたり、詳細な文書がないもののおそらく江戸後期からの絵馬や落書き、あるいは由緒ある如来さまがにお近づきになれる場所で私は大好きです。
こちらについても色々と書きたいところではありますが、詳細についてご興味のある方は「戒仏薬師の粟倉さま」と検索してください。

この祭礼の内容はお参り、読経、お供えなど小さいとはいえ無病息災を願った数百年続いている神聖な行事です。病気平癒のご利益の中でも特に耳の病気の回復にご利益があるという如来さまでした。

余談ですが、お堂の中には耳の回復を祈って丸石の真ん中に穴を開けて奉納された「耳石」というものが多くあり、大変興味深いです。

でも、その病気平癒のご利益から派生して多くの人々に人気となり、今でいうところの「街コン」みたいな要素も生まれたのでしょうね(笑)。

さて、片道10km弱とすれば、休まずに歩いたとして平地で2時間程度、林道は現在ほど整備されていなかったとすれば休憩含めて3時間程度かかったのかもしれません。木下さんの通称:「地元がヤバイ本」には以下のような一節があります。

「人はうまいもんがあったり、明確な目的があれば、車で1時間、距離にして30kmメートルくらいは軽く移動する。市町村の単位なんて行政上のもんで、人の移動なんて都道府県も普通に越えるんや。とはいえ、6割はこのまちのお客さん。けど逆に言えば4割のお客さんは地元ではないところからわざわざ車走らせてここまで来てくれてる。・・・」(「地元がヤバイ…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門」p. 65、 とある地域でバーを経営する佐田の言葉より)

今回の祭礼の話題にこれを落とし込むと、

人は無病息災の祈願や良縁の機会という明確な目的のために、徒歩で3時間、距離にして10km弱くらいは軽く移動した、集落の単位なんて行政上のもんで、人の移動なんて集落間も普通に越えていた。多くはこの集落の人だが、逆にいえば残りは集落の外からわざわざ歩いてここまで来てくれていた。

といったところでしょうか。

実際に周辺の集落の村史には、病気平癒や良縁を求めて祭礼にいくのが人気であったとの記載があるのです。その結果、祭礼は盛り上がり、自分たちの生活のために他人の生活に必要なものを提供したり、楽しませるものを用意する。それに目をつけた商売人たちは逃さずにそれを自然な形での商売にしていたのでしょう。

しかも、当時の出店者たちは販売する食べ物をなどを籠につめてせっせと担いで持ってきたのだそう。その中に峠を越えて来ていた者もあったとか。すごい熱意を感じます。

翻って現在はどうでしょうか。自動車で移動の自由が効くようになり、インターネットで無限大に情報を得られるようになり、商売の仕方には大きな変化がありました。しかし、かつてのような商売をして稼ぐという行為の本質について、ひと昔前のシンプルに商売をしていた姿から学ぶことはこの祭礼について云々というわけでなく、様々な地域行事にとって多いと感じました。

そんなことを考えていたらちょうど本リレーマガジン主催の木下さんのこちらの記事を思い出したのです。

こちらでも紹介されている二宮翁の夜話、買ってまだ読んでいなかったことを思い出しました。

数多のビジネス本が並ぶ昨今ですが、私のような限界集落で生活をして、そこから小さな商売を始めようとする者には江戸時代に数々の事業を起こしてきた二宮翁の方法論や精神性が重要になってくると感じました。

加えて、地域の方達と合同で作戦を立てる上で”横文字”ばかりが並んだビジネス用語でよりもかつての偉人二宮翁と昔の時代から学んだ方が話が進みそうです。以上、「稼ぐ」地域行事についてひと昔前の話から感じたことと、過去から学ぶことについて書きました。

二宮翁の夜話を読みつつ私もカモミール栽培などの休耕地の活用と空き家の活用を進めていきます。

* * * 引用文献 * * *



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