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人的資本・人的資産・人的資源

 人的〇〇。
 似たような表現でなかなか違いを説明するのが難しいと感じています。皆さんなら、どのように説明しますか。

 MS Copilotを少し使って理解したことを書きます。
・資源は加工するもの。資源(原材料)は加工されるですから、人的資源とは人材を加工すべき対象として見る考え方。製品であったりサービスを提供するための原材料として人材を位置づける考え方。
・資本はちょっと難しい。自分でもうまく言語化できないもどかしさがあります。資本は事業活動の元手となるもの。その蓄積を通じて生産活動の拡大を図ることができると、Copilotは答えてくれました。
 ※マルクス経済学での資本の定義はこれとは少し異なります。

 資源は原材料として使うもの、原材料や半製品のままだと付加価値を回収できないので、資源は使い切っていくものになる。補充しながら使っていくもの。繰り返し生産活動をしていくために補充も繰り返していく必要がある。製品を作るときの原材料や調達する部品は安定したスペック、品質基準を満たすことが欠かせないのと同様に、人的資源の調達においても所定(既定)の条件を満たしていることが求められる。もしも満たせていないときは、その条件を満たすように人材にOJTやOff JTを通じてトレーニングを実施していく必要がある。

 これに対して、資本は事業活動の元手になるもの。元手とは生産活動の始める、または維持し拡大していくときに必要とされるものと理解します。人材を資本として捉える考え方に、貸借対照表の視点を取り入れて書いた記事がこちらです。人材は貸借対照表の貸方・資本の部に蓄積し、会社はこの自己資本を元手に事業活動に必要な資産を形成し、それは借り方に表れます。そのような人材のとらえ方が人的資本という言い方には含まれている。そして、人的資本は労働市場から調達した資本であるとも言えます。しかし、人的資本そのものの所有権は会社には移転していません。人的資本の所有権は、投資家が自由に株式を売買する権利を所有しているのと同様に、社員に帰属したままです。

 資本を供出してもらった会社は、人的資本の持ち主である社員がどのような資本を持っているのかについても把握する必要があります。これを把握しなければ、会社は人的資産を借り方に形成していくことはできません。故に、いまスキルの可視化が人的資本経営の取組みの中でも注目されているのだと考えます。
そして、もうひとつ経済学からの人的資本に関する学びで重要なポイントがあります。人的資本は何もしなければ劣化し、陳腐化していくということです。つまり、人的資産価値が逓減していくということです。故に、リスキリングやアップスキリングも意識されているのでしょう。

 そして、人的資本の持ち主は社員自身です。人的資源として捉えていた時代のように会社がOJTやOff JTを通じて思いのままに使うことはできません。なぜならば、資本家には資本を引き揚げる選択肢があるからです。資本を引き揚げるとはどういうことか。自らの意思で離職・転職していくということほかなりません。故に、エンゲージメントを高め、維持していくための諸活動がますます重要になる。

 エンゲージメントを高めるとき、最も重要なポイントは何でしょうか?
社員(働き手)は人的資本を所有する投資家です。投資家はそれぞれの期待収益を持っています。社員が会社に期待する収益とは何でしょうか?
 エンゲージメントサーベイで深堀りすべきポイントはここではないか、と考えます。ここが分かれば、会社は社員に対して次の投資機会がどこにあるのか、コミュニケーションしていくことが可能になります。

 人的資本の持ち主である社員が、投資家として、会社が示した機会に投資する行為、これがエンゲージメントの正体ではないでしょうか。このエンゲージメントが人的資本を、人的資産化し、会社は事業活動にビルトインしていくことが可能になる。そして、資産を劣化させない、陳腐化を防ぐために、会社は継続的に社員にリスキリングやアップスキリングの機会も提供し続けることが求められる。このような機会もまたエンゲージメントに寄与することでしょう。

 「人材版伊藤レポート2.0」策定にあたって伊藤邦雄先生は『個人も主体的に、そして自律的に変わり、会社も社員一人ひとりと丁寧に向き合い、多様性を大事にし、更に高めるための支援や施策を推し進めていただきたい。そうしてこそ個人と組織が互いに選び選ばれる関係が構築できる』と述べられています。
 互いに選び選ばれる関係。私は、この関係を実現する鍵は、社員に対して自社のどこにあなたにとって魅力的な投資機会があるのかを示すことだと考えています。それが人的資本を人的資産と成し、事業活動に必要な資本として繰り返し投下が可能になるのではないでしょうか。


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