見出し画像

組織文化変革リーダーシップの因数分解

「人的資本経営」がバズワードになる中で、組織変革、企業文化、リスキリング、主体的な社員・社員の自律性、多様性の尊重・多様性からの価値創造といった言葉も組織開発や人材マネジメントの領域で数多く見かけるようになった2022年度。どんなビジネスにおいても人と組織に関する戦略や取り組みが議論されるようになってきたと感じます。自分自身、30年以上企業の中で人事の仕事に携わってきました。振り返ると長い間「人材の確保(採用」はビジネスがどんな状況であっても必ず課題として認識されていたと思います。そして、2010年代に入ると「エンゲージメント」もフォーカスされるようになりましたが、それでもその文脈は「人材の確保(リテンション)」の延長線だったように感じます。
 そして、ここ数年はESG投資家から『企業のサステナビリティ』について責任ある説明が求められるようになり、現在は「エンゲージメント」もより「人々(社員)が持っている、多様な力を発揮できる職場風土」という文脈で語られるようになってきたと思います。
 さて、その「一人ひとりの力の発揮」の土壌となるのは ”組織文化” なのであろうと自分は捉えています。土壌作りが大切なのは農業と同じこと。どんな作物も痩せていく土地では多くの実りをもたらすことはありません。企業において、その土壌を耕し様々な作物が実るにはミドルマネジャーの日々の役割が欠かせないと考えます。この役割は日常的な業務遂行管理のスキルとはちょっと異なってくる。花を咲かせよう、実らせようという思いを社員に持ってもらうためのスキル、と言ってもいいかもしれません。ミドルマネジャーが持つ組織文化を作っていくリーダーシップ。ここにはいくつかの要素があると考えています。
 ミドルマネジャーのこのリーダーシップは業務管理のスキルとはまた別であり、企業が何らかの変革にチャレンジしようとするならば、このミドルマネジャーのリーダーシップも組織変革をリードするための要素を持つ必要が出てきます。
 1つ目は「質問力」。どんな問いを投げかけるか?この質問によってメンバーから様々なアイデアが放出されてくることになる。ただ存在するだけではどんな多様性も、インクルーシブな組織風土も、事業のドライバーにはなかなかならない。
 2つ目は「発信力」。投げかけた問いが呼び起こした様々なアイデアや意見を組織内で還流させ共有していくためにコミュニケーションの触媒となる。別の言い方をすれば対話を持続させる力と言ってもいいかもしれません。ここはリーダーの好奇心の強さや未知のことを理解しようとするスタンスが影響すると考えます。
 3つ目が「意味づけ力」。継続的な対話の中からメンバーそれぞれが何らかの気持ちを抱いたとき(反発、否定といった感情も含めて)、企業ならばそれがパーパスやミッション、ビジョンと繋がって次の行動への動機となっていくことが大事。それは対話してきたことに「チームにとっての意味」を与えることで、メンバーの内発的動機へ働きかけることができる。「意味付け」ができると、ストンと腹落ち感が生まれ、それが何か行動を起こす時の強い内発的動機となると考えます。この意味付けプロセスに関して組織内で重要な役割を担うのがミドルマネジャーではないでしょうか?

 そして、この過程で組織のインクルーシブネスも高まり、組織内に存在するダイバーシティとインクルーシブネスの高さによってさらに対話は増幅し、結果的に組織のラーニング・アジリティを高まっていく。多くの社員が自分でも考えて、行動の意志を持つのは、マネジメントが投げかける「問い」が時にぐっと思考を深める(=自問自答し始める)きっかけとなるからだと考えます。その点で活用できるスキルは「ストーリーテリング」。ストーリーを語ることで人々を「問い」に惹きつけることができるのではないでしょうか。そのストーリーはリーダー自身が持つビジョンを語るものであり、そのビジョンのルーツはパーソナルなパーパスであり、企業のパーパスに沿っている必要があると思います。

ダイバーシティが存在するだけでは価値創造には繋がらない。
インクルーシブネスがあるだけでも価値創造には繋がらない。

ダイバーシティとインクルーシブネスを価値創造に繋げる、そのブリッジ役としてのミドルマネジャーの役割は、特に組織文化を変えようとするとき、ますます大きな比重を占めることになるのではないかと考えます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?