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人的資本経営に死角はないか?

「人的資本経営」に取り組むにあたり、経営戦略と人事戦略の連動が重要であるということは今年5月に「人材版伊藤レポート2.0」で指摘されて以来、各企業が強く意識して力を入れているポイントになってきていると思います。
「人的資本経営」の議論が盛んになる一方で、人材データを可視化するだけでなく、「人材版伊藤レポート2.0」の視点(3つの視点・5つの共通要素)でこれに取り組む先にある未来についても議論を重ねておくことが大切じゃないか、と考えています。

EVP(Employee Value Proposition)という言葉もよく聞かれるようになってきました。「企業が社員に対して提案する価値」というのが直訳になりますが、日本語にはなじみにくいというか、私にはいまひとつ分かりにくく掴みどころがなく感じていました。「企業が社員に対して提案する価値」って言ってもなんだか良く分からんなぁ‥と私には思えて、私自身は「組織のメンバーがここにいる価値を感じられる理由」が EVP なのかな?そのように考えればいいのかなといまは思っています。

さて、なぜ『人的資本経営の死角』というタイトルで、この EVP を持ち出してきたのか?と言うと、「人的資本経営」に取り組んだ暁に、果たしてどんな EVP を実現しようとしているのか? この点も押さえて実際の施策を展開する必要があると考えているからです。ついつい経営からの期待には応えつつも、社員の期待には応えていない、いや、応えていないというよりも、社員が何を期待しているのか?を見逃してしまっていないか、ということを懸念しています。
外部(投資家)の視点、経営者の視点に加えて、その先に社員の視点もある。そこを置き去りにしたままの「人的資本経営」になってしまうと、結果的に「人的資本経営」の取組みは、組織内に、社員の中に浸透せず、持続性を失いかねないと思うのです。

厄介なのは、社員が期待する具体的な Value もまた「人材」と同じく多様であるという点。故に一律的に何か制度を導入すればいいといったものでもなく、簡単ではないということです。「個」を見て、その「個」の動機(やる気)に繋がる”様々な”支援のために「人的資本のデータ」を活用する。人材データの把握、分析、活用を進める上で、EVP の観点からも「人的資本経営」に取り組むことが大切だと考えています。

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