はじめまして!このNoteで書きたいこと

こんにちは。

自己紹介

僕は研究者で、「どうやったら冬暖かく、夏涼しい家を設計できるのか?どうやったら省エネの光熱費の安い家を設計できるのか?」ということを研究しています。

これを大学の講義風な分野名をつけると、「建築環境工学」という分野です。

住宅の設計

住宅をきちんと設計するためには、かっこいい家を作るデザイン力はもちろん必要ですが、建てた後に地震で倒壊したり火事で燃えたりしたら大変ですから、地震や火事に強い家を設計する必要もあります。これを耐震性・防火性と言いますが、今、日本では、一定以上の耐震性・防火性が無いと設計・建築したらダメとなっています。

住宅の省エネ

さて、最近では、地球温暖化問題や省資源などが注目されていて、耐震性・防火性に加えて、住宅の省エネ性が注目を浴びています。

住宅の省エネ性とは、つまり、エネルギーを使わない家となります。イメージしやすく言うと、光熱費が安い家ともいえます。家で使うエネルギーを少しでも減らして、日本全体で使うエネルギーを少しでも減らそうという流れになっていて、今、住宅やオフィスビルなども含めた建築物の省エネが非常に注目を浴びています。

暖かい家

省エネに加えてもう1つ重要なのは、暖かい家です。

最近、お風呂場で心不全あるいは溺死で死亡する例などがニュースで流れています。この原因はさまざまありますが、1つの要因として、廊下が寒すぎる、その結果、部屋と廊下の温度差がありすぎる、いわゆる、ヒートショックが挙げられています。1つの家の中に暖かい部分と寒い部分が極端にある状態です。大分昔の家では、お風呂やトイレに行くときに一旦外にでてから行くという状態があたりまえでした。しかし、最近では、健康な家を建てようということから、住宅の部屋の暖かさ、これを難しくは、室内環境と言いますが、この室内環境を設計する、ということに着目されています。

住宅における環境工学的アプローチの欠如

これらの省エネで室内環境が良い住宅を建てるためにはどうすればよいのか?というのが住宅における環境工学です。エネルギーも室内環境もエネルギーの単位であるJ(ジュール)や室内環境の単位である℃(度)といった数字で表されるものですから、「工学」という名前がついています。

ところが、この「工学」は現場で設計している設計士にはまったく伝わっていません。もちろん大学の建築学科では環境工学を専門に扱っている研究室があって、日々研究が行われ、その成果は建築学会といった学会で日々発表されています。しかし、僕の個人的印象ですが、どう、ひいき目に見ても、それが実務に活かされているとは思えません。

その結果、設計の現場では、あのシートがいいとか、このシートを使うと温度が20℃も下がる!みたいな、半ば都市伝説みたいな工法や技術がたくさんあります。具体的には別の記事で細かく書きたいと思いますが、とにかく事実に基づかない情報が多すぎると思っています。これも、本来であれば家の暖かさや寒さ、省エネは工学であるはずなのに、そういった姿勢が全く浸透していないのが一因かと思います。

良い家はこういう家!という情報が溢れすぎている

一方で、良い家はこうあるべき。という情報も溢れすぎています。例えばその1つが太陽光発電をたくさん載せたZEH(ゼッチ:Zero Energy House)です。太陽光発電で電気を作って自分の家で使う電気をすべて賄おうという発想です。ZEHにすると、電気をほとんど買わなくてよくなるので、結果として日本全体が省エネになるので非常に魅力ある家づくりです。

しかし、全員が全員、ZEHにすればよいでしょうか?

僕はそう思いません。世の中にはいろいろな施主がいます。省エネよりもデザイン優先の人もいるかもしれません。あるいは太陽光発電より太陽熱給湯の方が好きな人もいるかもしれません。そもそも、あまりお金が無い人もいるかもしれません。あるいは、省エネよりも、例えば子供が喘息だから、絶対に空気の質(きれいさ)にだけは妥協したくないという人もいるかもしれません。施主はいろいろな人がいます。そういったいろいろなニーズに答え、可能な限り、家を購入した人が幸せになる家を設計するのが本当の設計者だと思っています。

もちろん、ZEHとか高断熱住宅自体は非常に良いものです。しかし、なぜ良いのか?どの程度良くすればいいのか?ということを自分の頭で考えず盲目的に「この住宅がいい」「住宅はこうあるべき」と結論付けて設計するのは非常に危険だと思います。

評価と判断をわけること

2011年に東日本大震災が起こりました。その際、放射能は危険である、いや、危険ではない、福島のお米は危ない、いや危なくない、いろいろな議論が飛び出しました。デマも多く、風評被害だとかいろいろな意見がでました。これに関して、色々な意見・立場の人が居るので、僕の意見はここでは書きません。しかし1つだけ言えることは、「きちんと測ろうよ」ということです。

危険か危険でないかを判断する、それはいろいろな立場や意見の人がいるでしょう。しかし最も重要なことは正しい情報を出す。なければ測る。ということです。きちんとした情報無くしてきちんとした判断はありません。

判断は人それぞれです。いろいろな意見があるから議論もできるし、様々なことに気づかされます。しかし、正しい情報はきちんと出さないといけません。

正しい情報を出す、測る、とりにいく、つまり、きちんとした評価というのが極めて重要です。そのうえで、それをどう解釈し、どう行動するか、つまり評価するのは、いろいろあって良いかと思います。

例えば仕事で出張に行ったとして、「どこのホテル泊まろうかな~」と思ったとします。ネットで探す時に、宿泊代や駅からの距離、部屋の広さなど、きちんとした情報が無いと選びすらできません。きちんとした情報さえあれば、高いけど便利なホテルに泊まる人、逆に少々不便だけど安いホテルに泊まる人、人それぞれだと思います。

ホテルの例だと当たり前ですが、いざ住宅の設計となると、まったくこれが行われていません。省エネはこうすればよい、みたいな噂ばっかりある世界です。「評価」が無くて「判断」いや、好き嫌いがあるだけです。

住宅の省エネを評価する

住宅の省エネを評価するための指標はいろいろとありますが、省エネ法(建築物省エネ法)という国が定めた指標を借りると、重要な指標に設計一次エネルギー消費量というのがあります。これは車でいう燃費のようなものです。こういった燃費の計算方法があるにもかかわらず、住宅の設計士は家の燃費を計算する/評価する ということに、あまり興味がありません。興味が無いのに「省エネは重要だ!」と言っています。これでは、ただ念仏を唱えているようなもので、本当に省エネの住宅は建ちません。

僕がこのnoteで伝えたいこと

僕はこのnoteで伝えたいことは、「良い家はこうあるべき!」ということではありません。そういうサイトは、ネットで検索すればたくさんありますし、いろいろな意見があるかと思います。いろいろな意見があって良いかと思います。僕は研究者であり、設計者ではありませんから、良い家をどうやって作ったらよいか、わかりません。

しかし、良い家を作るためには、どういう指標を計算・確認しないといけないか?については自身を持って言うことができます。さきほどの、「評価」と「判断」でいう「評価」ですね。

ケーキ屋さんを想像してください。ケーキを作る時、絶対に砂糖が何グラムか計りますよね?気分によって甘かったりそうでなかったりしたらたまったものではありません。しかし、ケーキとして何グラムであるべきか?というのは人それぞれ、作り手それぞれです。

僕は、今はまだ住宅の設計者では軽視されがちな、砂糖の計り方、いや、省エネの測り方の意味や方法を伝えたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?