アはアーケードのア 第34回『サンダーセプター』(1986年/ナムコ)
浮遊感抜群のスペースレース+シューティングゲーム
アーケードアーカイブス版の『サンダーセプター』をプレイしました。後方視点のシューティングもので、当時はコクピット筐体で、専用のアナログコントローラでプレイするゲームでした。
当時、少ししか遊んでなかったのですごく基本的な感想ですが、レースゲームがベースになってるので、その時点で操作するおもしろさと共に難しさが内包されていて、そこにさらにシューティングと弾避け要素が加わってるので、攻略要素十分なのだけど、やはりそれだけ難易度が高い。
自機の移動に慣性がはたらくので、まずそこで癖がある。障害物の小惑星の密度が高く、慣れないとかわすのが大変(だから続編の『サンダーセプターII』で破壊可能になったのか)。また、当時としては普通のことではあるけれど、ダメージ後の無敵時間がない。さらにコースの縁をコスると減速するといった完全にレースゲーム的な仕組みもある。
ちなみに、改めてIIとの違いを調べてみたら、障害物を破壊できるように変わったというのもそうだし、それ以外もあちこち追加修正されているんですね。かなり違う。そっちも発売されたら改めて遊び比べてみたい。
細いコースのなかだけで遊びが完結する独特のゲームシステム
でも、難しいは難しいのだけど、つくりがすごく几帳面というか、誠実といえばいいのか、たぶんレースゲーム由来というコンセプトゆえに結果的にそうなった部分が大きいと思うのですが、後方視点のゲームとしては空間の使い方が限定的で、とてもシステマティックなんですね。
まず、ビジュアルとして天井を含めた走路が描かれていて、移動可能範囲が左右上下に明確に定義されている。
あと、これもとても自覚的で興味深い仕様だと思うのですが、敵にかんしても、コースの前方や後方から出現することはあっても、コース外から来ることや、外へ去ることは一切ない。コース内だけでゲームが展開されるというルールが厳格に守られている。
後の『スペースハリアー』や『ナイトストライカー』にも天井が表示されるステージがあったけれど、もっとガチガチに制限をつけている感じですね。
他社の同ジャンルと立体表現を比較してみると
カメラ位置は若干高めな程度なので、敵との位置関係がちょうどいい感じで把握しやすい。これが高くなりすぎる(俯瞰度が上がる)と、自分の高度がわかりにくくなる。逆にもう少し低くすると、目の前をちょうど自機が隠す形になり、ちょっと遊びにくくなるんですね。
これが『スペースハリアー』の場合だと、よりカメラを低くすることで見やすさをある程度犠牲にする代わりに、臨場感とスピード感を選んだ形になっている(これはどちらが良い悪いということではないです)。
カメラの印象的には『ナイトストライカー』に近いのですが、あちらはフレーム内の自機の移動がよりダイナミックで、たとえば自機が上端へ行くと、自弾の消失点が自機より下に来る。『サンダーセプター』ではそういうことは起きない。より小さな動きのなかで緻密な操作が要求される感じでしょうか。
余談ですが、パースのついたゲームだと、アルファ電子の『スプレンダーブラスト』が、レースものでかなりスピード感があるのに消失点が見えないデザインになっているのがちょっと変わってて、印象に残っています。
シューティングメインのゲームであればよくあるつくりなのですが、スクロール速度の速いレース系のゲームだと、敵や障害物がより急激に目の前まで到達することになるので、圧迫感が出てしまうんですね(『スプレンダーブラスト』はそれを差し引いても素敵なゲームではあるのですが)。
そこに感じられるのは“制限の美学”
今回のアーケードアーカイブス版ですが、当時の作曲者である中潟さんによる新規BGMもすごくいいですね。本当は続編のIIで曲が新しくなる予定だったという話を聞きましたが、歴史のIFを体験してるような感覚で、ずっと新曲でプレイしています。
ストーリー上の舞台設定で、この独特なゲームフィールドについて「ハイパーウェイ」という特殊空間で戦っているのだ、という辻褄合わせをしてるのもおもしろい。高速ワープ用の人工的な亜空間といったところか。その疾走感も浮遊感もうまく(?)説明がついている。
プレイしていて思い出したのですが、『スターブレード』の企画段階では、最初に企画を担当していたかたが、宇宙空間を自由に移動できるゲームをつくりたかったと聞いたことがあります。いろいろ難しいので採用にならなかったのですが、『サンダーセプター』はその真逆な感じがしますね。制限の美学とでもいうか。 了
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