アはアーケードのア 第29回『リブルラブル』(1983年/ナムコ)
ばっちしバシシ! 奇跡を起こせ、リブル・ラブル
『リブルラブル』は、ツインレバーでリブルとラブルという2つの矢印のような物体を操作し、2つを結んだライン(紐)でキノコのような姿をしたマシュリンをすべて捕まえればステージクリアというゲームです。
当時、たしか記憶違いでなければ、自分の目でゲームを見るより先にラジオ番組「ラジオはアメリカン」(ナムコがスポンサーだった)で『リブルラブル』のCMが流れるのを聞いて、どんなゲームなんだとワクワクした覚えがあります。「リブルとラブルで囲もう 見つけてバシシ♪」
ラインはフィールド上に並ぶ杭に引っ掛けることで曲げることができ、これを利用することで閉じた空間をつくり、そのなかにマシュリンを閉じ込めることで捕まえることができます。敵キャラクターも同様に囲むことでやっつけることができます。この動作を“バシシ”と呼びます。
また、フィールドのどこかに隠れている6匹の妖精トプカプを見つけ出し、すべてを捕まえることで“奇跡”を起こし、高得点が得られるボーナスステージに突入することができます。
……というのが概要ですが、このゲームは何と形容すればいいのか……今なお“すごいゲームだった”としかいいようがなくて、操作システムにしてもメインフィーチャーにしてもいろいろ超越してて、あの時代において別次元の遊びだったのではないかと思います。2本のレバーで紐を自在に動かしてさまざまなものを囲むというアクションが衝撃というか、まさに度肝を抜かれました。
このゲームのポイントがよく表れてるなあと感じた思い出があるのですが、ナムコに在籍していたときに、『リブルラブル』の開発中のバージョンをずっと見ていたという先輩が「あれは宝箱のフィーチャーが入って急におもしろくなったんだよなあ」と述懐されてたんですね。
いかに確実にトプカプを見つけ出し、そして一挙に捕まえるかという課題がなければ、紐のひっかけ方をひと工夫する必要もほぼないですし、本当に作業感の強いゲームにしかならないのは想像がつきます。
だから『リブルラブル』って種を育てるとか各敵ギミックへの対処とか考えることはいろいろあるんですけど、遊びの肝としては「トプカプが隠れてる位置を見つけ出す」「放射状に逃げる6匹のトプカプを捕まえる」ところにほぼ集約されてて、そのフィーチャーのためにほかの要素をさばいてるといってもよい。
プレイ時間が長い、スローライフ(?)なゲーム
よくいわれることですが、『リブルラブル』は遊び込んでいくとアーケードとしては1プレイの時間が相当長いんですね。時間をかけて実を育てるほど楽になる、宝探しの行程に時間がかかる、ボーナスステージが多い、それと、ミス条件になるプレイヤーが一対(2個)いることも考慮してか、敵の追跡が割と緩い。
フィールドが開放型(迷路壁がない)ということもあって、ちょっと敵の追跡をキツくすると途端に理不尽になりそうですし。
そこで自身の紐を盾にして本体を守るようなテクニックも実際にあったんですけど、そこを前提に難易度をつくっていくと、本当にすごく難しいゲームになってしまうでしょうし。
プレイ時間がやたら長くなるという点については、このころのナムコゲームは大抵長くなるんですけど、ただ、『リブルラブル』の場合、慣れていくと「プレイ中ミスする可能性のある時間の方が短くなっていく」んですよね。ここが極端なんですよ。
毎ステージ、実を収穫して無敵時間を作っては悠々宝箱を探し出し、投網一発、ボーナスステージ突入の繰り返し。これで緊張感が薄れてイマイチになるかというと、『リブルラブル』はそこからがべらぼうに楽しい。最初に操作の難しさで多数を切り捨ててるところも含め、じつに豪気で“いびつな”孤高の異色作。
今でもよく覚えてるのが、ある程度うまくなったころに池袋のロサ会館の通りのお店で響あきら(※)と2人プレイしてたらバグでフリーズしちゃって(よくある)、店員さんに言ったら4クレジットぐらいサービスされちゃって、いやこれ全部使い切るのに何時間かかるんだよってなったことがありましたね。
(※)少年マガジン「MMR マガジンミステリー調査班」で「な……なんだってーー!!」と叫んでいたうちの一人。高校・大学と同窓でした。
『リブルラブル』はプログラマの黒須さんが準備として木の板に釘をたくさん打ちつけて、そこに紐をあれこれ絡ませてアルゴリズムを考えたって話ですよね。線をどんどん伸ばしていったらとか、線と線が接触したら等々、どんな場合が起こり得るかシミュレートしてたんでしょうね。 了
▲当時、週刊少年ジャンプに掲載された広告
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