『アはアーケードのア』 第10回『コスミックゲリラ』(1979年ユニバーサル)

“ゲリラ”から砲台を守れ! インベーダーブーム直後のゲーム『コスミックゲリラ』とは?

 『コスミックゲリラ』は、時期的にはポストインベーダーを目指したあまたの製品の一つです。発音としてはコズミックだと思うのですが、当時の表記に合わせてコスミックで進めます。

 画面中央に並んだプレイヤー砲台(のストック)を奪いに左右からやって来る敵ゲリラを撃破していくシューティングゲーム、それが『コスミックゲリラ』です。敵も弾を撃って攻撃してくるので、それも避けないといけません。つまり、砲台を奪われても、弾を喰らっても1ミスになります。

 当時、こういうジャンルのゲームに呼称があったか知りませんが、「防衛型ゲーム」とか「守りゲー」とでもいえばいいのでしょうか。初期のアーケードだと、このゲームのほかに『ジ・エンド』『スピーク&レスキュー』『タンクバタリアン』『キング&バルーン』などがルールとして近いです。

 初期アーケードの守りゲーは、おもしろさでいうとやや微妙なものが多いです。『ジ・エンド』『スピーク&レスキュー』等は、“守るべき存在が敵に持ち去られるストレスと戦い続けている”感覚が顕著で、確定的ゲームオーバーに向かって歩を進める悲しいマラソンのようでした(まあぼくが下手だったんですが)。

 防衛型のゲームで本当に面白かったものというと『ミサイルコマンド』や『バトルシティ』などが挙げられると思います。どちらも原則として守る対象が位置的にプレイヤーサイド寄りにあるので、攻防一体感が強いためかもしれません。遠くにある物を確実に撃ち落とさねばというプレッシャーが少ない。

 それに加えて、定期的な1upがあったり、防御壁が元に戻ったり、状況を立て直せる適切な仕組みが導入されていたことも大きいと思います。ただ、そのことによってプレイ時間は延びていくので、アーケード製品として考えた場合、守りゲーはバランス調整が難しく、なかなか成り立ちにくい仕組みだったのかもしれません。

 『コスミックゲリラ』の場合も、砲台をガードしている周囲のトーチカは、一度持って行かれると二度と復活しないため、砲台の脇が裸にされてしまうと、あとはずっとそのままの状態が続き、ストレスのかかるゲームだったように思います。

 守りゲーで受けるストレスは、缶蹴り遊びで一人でオニになったときのそれに近い気がします。ずっと缶のそばにいるわけにも行かず、右に探しに行けば、左から誰かが缶を蹴りに来て、左に行けば右から来る。最後はオニのまま日が暮れて涙目、みたいな。

 あと『コスミックゲリラ』でおもしろいのが、定期的に最上段をUFOが横切ることです。ゲームシステム的には既にインベーダーとはまったく違う遊びまで昇華できているのに、まるで削除を忘れたかのようにインベーダー然とした仕様が残っている。この時代、それだけインベーダーの呪縛はまだ大きかったのです。

アーケード黎明期を彩ったゲームメーカー・ユニバーサル

 『コスミックゲリラ』をつくったユニバーサル社は、ややトリッキーながらアイデアは抜群におもしろいし、個人的に大好きなメーカーだったのですが、どことなく変なゲームが多かったという印象が強いです。今にして思うと、デザイン面がちょっと変わっていたんじゃないかと。

 とにかく敵のデザインに虫のようなものや、触角や触手、多足系が多い。ちょっとだけグロテスク系。触角についていえば、『コスミックモンスター』の敵は触角のついたクラゲのようだし、『スペースパニック』の敵モンスターや『ギャラクシーウォーズ』のUFOにまで触角(?)がついています。

 もちろん、当時の少ない色数とドット数とパターン数でアニメーションさせようとしたときに、触角の類いはわかりやすかったのだと思いますが、それにしても同社のそれは突出していた気がします。開発スタッフに触角マニアでもいたのかと。

 『マジカルスポット』は、ムカデだかサソリだかのような幼虫が、最後は蛾のような成虫になって襲ってくるという虫嫌いにはキツいゲーム。『レディバグ』に至っては、敵も味方も全部虫。後半のステージでゲジゲジが出てきて、高速で足を動かしていた日には卒倒しそうになりました。

 とは書きましたが、そうした生理的に気持ち悪いモノが敵として出てくるというのは、ある意味記号として大変わかりやすく、個人的にはキモいながらも同社のキャラクターが大好きでした。ゲームアイデアのおもしろさと相まって、強く印象に残っています。

 ぼくにとって黎明期のアーケードゲームというと、すぐにユニバーサルの作品がたくさん頭に浮かびます。同社のゲームは『Mr.Do!』のような一部のヒット作を除いて大抵出荷数が少なかったため、置いてあるお店を見つけると得した気分になったものです。 了

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