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こども未来戦略方針がまとめられた日

勿凝学問418

第6回こども未来戦略会議で、「こども未来戦略方針(案)」が議論され、出席者全員による承認を得る。会議終了後に、「こども未来戦略方針」が閣議決定される(2023年6月13日)。

第6回こども未来戦略会議での発言


当日の発言は、次である。

前回、こども・子育て支援の再分配制度を新しく創設すれば、未来の企業、国民全員から感謝されますと話しました(前回までの発言は「こども未来戦略会議、5回の発言」kenjoh (note.com)参照)。
先週も国家公務員の新人研修に出かけまして、若い彼らには、君たちはオルテガが言う大衆ではない、ル・ボンの言う群衆であってはいけないよと話してきたわけですが、人間に認知バイアスがある限り、国民が圧倒的に支持することは昔からかえって危なく、20年後、30年後に評価される政策は、反対が多いという仮説を持っています。
この会議では、未来の経済・社会システムのためにも労使みんなで、老いも若きも連帯してこども・子育てを支えるという理念と、この理念を形にするために「賦課対象者の広さを考慮した社会保険の賦課・徴収ルートの活用」と「公費」のミックスがまとめられたわけですが、こうした新しい再分配制度を創設する意義を広く理解してもらうのはなかなか難しいかもしれません。しかしそれは、今ある介護保険のように、将来感謝される制度が誕生する時の宿命のようなものだと思っています。未来の人たちに評価される歴史的な仕事を、是非やりとげてもらいたいと期待しています。

本当は、改革時にはおよそ7割が反対していた04年年金改革が、今は、国際的に次のような評価を得ていることも発言に組み込みたかったのだが、限られた時間の中ではムリだったため断念。

韓国に送った日本の公的年金保険について

次は、来週(6月21日)に、ソウルで開かれる年金シンポジウム事務局からの、当方への事前質問に対する回答――昨日、彼らに送る。

Q11. 연금개혁을 위한 해법이 정치권에 있다고 보시나요?
Q11. 年金改革のための解決策が政治圏にあると思われますか。
難しいとは思いますが、民主主義の下では、政治圏で解決するしか方法はありません。

Q12. 연금개혁을 진행 중인 한국에 조언을 한다면?
Q12. 年金改革を進めている韓国にアドバイスをお願いします。
2019年1月のIMFの年金セミナーでの、IMF財政局長のGaspar氏(元ポルトガル財務大臣)の発言が参考になると思います。
質疑応答の時間
Q(参加者の某エコノミスト)
 日本の現状を見ていると、「年金をどう改革すべきか」は関係者も分かっているが、 民主主義(シルバー民主主義)の下で改革できていない。民主主義国家で、年金制度改革が可能なのか。

A(IMF財政局長Gaspar氏)>
 「民主主義国家で、理想の改革を行う方法」はないと思う。
 ただ、日本の年金制度は、過去20年にわたり、諸データを開示し、改革されてきた。 年金額はマクロ経済指標等に連動する仕組みとし、制度の持続可能性を高めた上で、世代間分配構造にもメスを入れている。 日本の年金制度は、評価でき、年金のベストプラクティスの1つと言える。

この件に関しては、次もご笑覧あれ。
「知識補給 日本の年金を世界がうらやましがっている理由」『ちょっと気になる社会保障 V3

2006年頃の政治状況

こども未来戦略会議の終了後、囲みにやってきた若い記者たちには、4月の統一地方選の後、世の中の雰囲気が変わり、GWが終わると社会保障給費の全体が日毎に小さくなっていったね、国民が選んだ道なんだろうと話す。そして、今の状況は、昔の小泉さんの時代に似た感じかなと、彼の2006年次の経済財政諮問会議での発言について、少し話す。2007年に出した本で紹介していたので、貼り付けておきます。

『医療政策は選挙で変える――再分配政策の政治経済学 増補版』287頁
『医療政策は選挙で変える――再分配政策の政治経済学 増補版』288頁

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