『Exotic Birds And Fruits』★★★★☆(4.1)-音楽購入履歴#18
Title: Exotic Birds And Fruits(1974)
Artist: Procol Harum
Day: 2024/4/8
Shop: disk union osaka
Rating:★★★★☆(4.1)
70年代プロコルハルム
僕にとってプロコルハルムはマシューフィッシャーありきのバンドで、あのオルガンに魅せられてハマったバンドだから。
つまりはマシューフィッシャーが脱退した69年3rd『ソルティドッグ』までを愛聴していて、70年代プロコルハルムをあまり聴いてなかったりしたわけで。
あとは続く70年4th『ホーム』と73年6th『グランドホテル』を聴いて、僕の中でプロコルハルムはコンプリートした気になっていた次第で。
ピアノとオルガンのダブル鍵盤が60'sプロコルハルムの魅力だったけど、マシューフィッシャー脱退後の『ホーム』ではロビントロワーが「ゲイリーブルッカーの相棒」を務めたイメージ。
ロビントロワーは「第2のジミヘン」として70年代半ばにソロ活動で成功するわけだけど、プロコルハルム時代からその片鱗はもちろんあって、それを特に覗かせたのが『ホーム』という印象。
そのロビントロワー脱退後の73年『グランドホテル』はオーケストラをがっつり導入し、シンフォニックロックと呼ぶべきアルバムとなった。
『グランドホテル』はプロコルハルムの到達点として語られたりするみたいで。
〝青い影〟で始まったクラシックとロックの融合、その極致にたどり着いたと。
プロコルハルムは確かにクラシックの要素を強く取り入れたバンドではある。
だけど60'sプロコルハルムはR&B/ソウルだったりカントリーだったり、R&Rだったりブルースだったりをごちゃ混ぜにしていて、そこにクラシックも放り込んでいるのが彼らの魅力でありプログレッシブな面だったんだと僕は思っていて。
『ソルティドッグ』なんかは僕はザ・バンド69年『ザ・バンド』に近いものすら感じていて、かなりアメリカンルーツな気配が大きくて。
元々はミックジャガーも認めるR&Bバンド(パラマウンツ)だったってのも頷ける音楽性だし、ゲイリーブルッカーの歌はソウルそのものだし。
その上でザ・英国!な空気感を醸し出すのがプロコルハルムが唯一無二であるところだと思う次第で。
まぁなんにしても僕は「『グランドホテル』がプロコルハルムの到達点だ」という考えには納得できなかったわけです。
シンフォニックな側面はプロコルハルムの武器ではあるけど、そこだけじゃないんだ!って想いが強くて。
同時期にクラシックとロックを融合させたムーディーブルースやナイスにはないプロコルハルムならではの魅力は、また別のところにあるんだ!って想いが。
『グランドホテル』以降、70年代のプロコルハルムはオーケストラを導入したシンフォニックロックへと進んでいった。
ってイメージだったんだけど、それがこの度買った74年7th『Exotic Birds And Fruits』を聴いてみると、全然そんなこともなかったんです。
ちゃんと調べてみると、オーケストラと一緒に演ったのは『グランドホテル』とその直前のライブツアーだけのようで。
ゲイリーブルッカーは「もうオーケストラはこりごりだ」となって次作『Exotic Birds And Fruits』を作ったとか。
いやー勝手に決めつけるのは悪い癖です。反省反省。
↓過去に決めつけでプロコルハルムをまとめたブログ↓
74年7th『Exotic Birds And Fruits』
知ったようで全然プロコルハルムを知ってないんだなーと思い知り、これを機にと再結成後も含めてざーーーっも聴いてみました。
プロコルハルムってサブスクに全部ないんですね。5,6,7,8枚目と再結成後の2,3枚目がないのかな?『グランドホテル』もないとは驚き。
なわけでYouTubeで聴いた次第です。
まぁやっぱり69年までが素晴らしいのは変わらないですけど、やっぱすごいですねゲイリーブルッカー。
彼特有のメロディとか雰囲気があって、それがずっと変わらないってのはすごいことだなぁと思います。
さて74年7th『Exotic Birds And Fruits』。
異国の鳥と果物。
そもそもこのレコードを買うきっかけになったのは、元バンドメンバーと飲んだことで。
僕が20代前半の頃やってたバンドってのは、まぁ60's、70'sロックを踏襲したプログレバンドだったんだけど、ライブに1曲はカバー曲をやるのがお決まりなところもあって。
ビートルズの〝a Day in the Life〟を特にやっていたんだけど、他にもクリムゾンの〝Red〟をやったりだとか、ツェッペリンの〝移民の歌〟をやったりだとか。
最近そのバンドで当時録り残した曲を10年越しにレコーディングしましょうか、という話が持ち上がっていて。これが〝Close to the Edge〟にめちゃくちゃ影響受けた長尺曲でなかなかまとめるのが大変で滞ってるんだけど。
それで、レコーディングするならライブもしたいなー、って話になって。すると元メンバーがプロコルハルムの〝As Strong As Samson〟を演りたい、って言いだしたんです。
僕は、ほえー70年代のプロコルハルムなんて聴くんやーおれその辺聴いてないわー、ってもんで。
その翌週に大阪のディスクユニオンに行ったらこのアルバムが目に入ったので、タイミングやなーと買ったんです。
タイミングなんです、アルバムを手に取るかどうか、って、ほんとに。
タイミングが合わずに聴けてないアルバムがまだまだたくさんあるんです。ストーンズなんてほとんどがそんな気がしてます。
はい74年7th『Exotic Birds And Fruits』。
まずプロデューサーはクリス・トーマス。
70年4th『Home』から続くプロデューサーでございますね。
クリストーマスはビートルズ後期のアシスタントプロデューサーから始まって、70年代にピンクフロイドにプロコルハルム、セックス・ピストルズと大物をプロデュースした男。
だけど、彼の仕事っぷりというのはどのアルバムを聴いてもあんまりピンとこず、個人的にはそんなには注視してないプロデューサーです。
というか70年代のプロデューサーはほとんどそんなイメージ。60年代ほどプロデューサーが音楽的に幅を利かしてないというか。
この時期のバンドメンバーはオリジナルメンバーはゲイリーブルッカー、B.J.ウィルソン(厳密にはオリジナルではないんだけど)、
あとはクリスコッピングがオルガン。
69年にマシューフィッシャーとベースのデヴィッドナイツが脱退し、その穴を1人で埋める型でベース兼オルガンとしてクリスコッピングが加入したわけだけど、
個人的にはどっちかというとベーシストのイメージで、70年『Home』の時点で「ダブル鍵盤」というプロコルハルムの武器は失った印象。
だけど『グランドホテル』から新たにベーシストが加入してクリスコッピングがオルガン専任になり再び5人体制のダブル鍵盤バンドになっていたのね。知らなんだ。
その『グランドホテル』は大幅なオーケストラ導入でアレだったけど、
この『Exotic Birds And Fruits』では紛れもなく初期と同じ5人編成ダブル鍵盤バンドとなっている、というわけだ。ザ・バンドと同じ編成に。
クリスコッピングとマシューフィッシャーを比べてしまうのは仕方ないとしてもピアノとオルガンの独特な絡みはこの編成でもしっかりと聴くことができる。
実に僕の知るプロコルハルムらしい、といえる曲と、
まさに70年代だなーといえる曲とが混在しているのがこのアルバムの全貌かと。
「まさに70年代」ってのは、まぁまさに70年代ピアノロック、まさにエルトンジョン的、とでも言いましょうか、そんな感じで、
A面1曲目の〝Nothing but the Truth〟なんかが特にそうでしょうか。
2曲目〝Beyond the Pale〟は『ソルティドッグ』に入ってそうな佳曲。めっちゃ好きですねー
こういう4つ強調な感じは60's感あってたまらんです
A-3〝As Strong As Samson〟。
こういうテンポの8ビート曲ってプロコルハルムでは珍しいと思うんだけど、それが全く気にならない実にゲイリーブルッカー的なメロディ。爽やかで切なく美しい曲。
で、そんな曲とストレートなビートの中に時折入るB.J.ウィルソンの爆裂炸裂スネア連打。これが意味不明なんだけど、ミスマッチなんだけど、聴いてると必要不可欠に感じる不思議。
B.J.ウィルソンはジミーペイジがボンゾを誘う前に誘っていた男であり、つまりパワー系の爆裂ドラムを叩く男で、彼の存在がまた一つプロコルハルムを一筋縄ではいかないバンドにしてるんですよね。
あとはキースリードの詞ですね。面白いですよね。プロコルハルムってキースリードの詞が先にあって、そこにゲイリーブルッカーが曲をつける順番であるらしく。まぁいわばキースリードの世界を体現したバンドともいえて。
〝青い影〟から始まったキースリードの世界、神話的なのに世俗的なのが小気味いいんですよね。
あーあとAメロのメロがめっちゃなんかに似てると思って2週間くらいモヤついてたんですけど、やっとわかりました。イーグルスの〝In the City〟でござい。すっきり。
A面ラスト、4曲目〝The Idol〟。
これは68年2nd『月の光』的プログレッシブソングですよね。
重く暗いテーマから、ゲイリーブルッカー節炸裂のサビ、オルガンも鳴り響いて、最後はギターソロ。いいっすねー
とにかくこのA面4曲が素晴らしい。70年代プロコルハルムここにあり、って感じ。
B面はエクスペリメンタルでサイケな〝The Thin End of the Wedge〟から始まって。
次の〝Monsieur R. Monde〟は〝青い影〟の頃に書かれた曲らしい。これも67年らしいサイケ感。
で、B面3曲目の〝Fresh Fruit〟。
こういうのに本当に案外1番プロコルハルム味を感じたり。ブルースとかアメリカーナ、やのに土着感がないというか。やっぱりザ・バンドと通じてて、でも土っぽくなくて浮いてる。
曲自体はビーチボーイズ『Friends』の〝Wake the World〟に似てるなー。
めっちゃいい曲。
そして70'sパワーポップっぽい〝Butterfly Boys〟を挟んで、
ラスト〝New Lamps for Old〟。
〝青い影〟〝Pilgrim's Progress〟に匹敵するオルガンソング。いやーたまげた。
マシューフィッシャーが弾いてたら!!って思ってしまうのはマジで野暮なんだけど、どうしても考えてしまう。
ゲイリーブルッカーの琴線に触れるメロディってなんなんでしょう。ソウルっぽい歌い方って結構苦手なんですけど、ゲイリーブルッカーは気にならないんですよね。臭そうやのに臭くないし。やっぱアレンジか。
ハモンドオルガンってほんまに魔法。
いやーーーめっちゃいいアルバムでしたねー。
何よりしっかりプロコルハルムの道として繋がってるというか、うん。
もちろん『グランドホテル』も好きだし良いんだけど、70年代プロコルハルムはこれなのかも。
結構見逃されてるアルバムかと思うので、ちょっとびっくりしましたねー。買ってよかった!
ジャケットはなんか19世紀?の画家の絵を拝借してるようで、その絵のタイトルが『Exotic Birds And Fruits』だとか。
これで4月に買ったレコードやっと聴き終えました。
またレコ屋行かねばー。年間30は買いたいところ。
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