見出し画像

統合失調症入院日記その3

↑前回↑

3日目にして、ようやくお風呂に案内されることになった。

看護師さんに案内されたその場所は、幸いにも私1人であった。つまりそれは浴場を1人で使っていいことを意味する。

昼前になろうとしていた時間だったけれど、ここにきてから全身が痒くなり始めていたのでちょうどいいタイミングだった。

私は浴室の手前で服を脱ぎ、頭と体を洗い、風呂に入った。

そのままゆっくりできると思ったその時だった。

「あー誰か入ってるよ」

「別にいいじゃん」

2人の女性の声がした。私は一瞬サッと身構えたが、まさか入っては来るまい、と思い、少しガードを解いた。

次の瞬間、そのまさかの展開が訪れた。

服を着たままの若い女性が2人、扉を開けてこちらに入ってきたのだ。

情けなくも私は浴槽内で局部を隠すことしかできず、こちらをチラ見しながらグルグル歩き回る女性2人に対して、抗議の声もあげられなかった。

湯気で蔓延している風呂場の中を1分間くらい歩いてから、今度は女性看護師が、2人を連れ戻しにやってきた。

女性看護師さんは言った。

「ごめんなさいね」

私は思った。いいからあなたも早くここを去ってください、という目で見た。そして嗜めるような説得の仕方で、女性2人と共にやっと出て行ってくれた。

なんでこんな目に合わないと……異性に体を見られるなんて嫌に決まっているのに、そこんとこちゃんとしてないのかこの病院は。

私は二度とこの病院で風呂に入りたくなかったが、しばらく入院するのだからそういうわけにもいかない。

そう考えると、もうどうしようもなくなった。

私は自分の体に自信がなかった。統合失調症の薬の影響で太り切っていたし、自慢できるものなど何もない。

私はこのまま湯船の下に浸かったまま死にたかった。

その時だった。

さっきの看護師さんが、今度は1人でやってきて、浴槽とは離れた吸水口の点検をするふりをした。

「ごめんなさいね〜」

さっきより軽い言い方だった。きっと自傷行為にはしらないか監視しにきたのだろう。

その看護師さんが行った後、私はもう風呂からあがった。脱衣所には誰もいなかった。

全くとんだ一日だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?