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不便さは10倍だけど幸福度は100倍!? 地方を満喫するスローライフ術とは【まるもり移住・定住サポートセンター 橋本沙耶花さん】

地方で根を張って生きる人たちのホンネとリアルをお届けする「ケンジン」インタビュー。今回は神奈川県横浜市から宮城県丸森町に移住した橋本さんにお話を伺いました。
橋本さんは高校卒業後から15年間首都圏で生活していましたが、縁もゆかりもなかった宮城県丸森町に移住を決断しました。
地方移住すると不便なことが多そうですが、実際はどうなのか。橋本さんの地方移住を楽しむスローライフ術を教えてもらいました。

橋本 沙耶花さん
秋田県出身。高校卒業後から15年間首都圏で暮らし、結婚、出産を経て2020年に丸森町へ移住。 現在はまるもり移住・定住サポートセンター「じゅーぴたっ」で移住のサポートを行なっている。 丸森町には縁もゆかりもなく、全国の移住先候補を訪れる中で丸森町に出会い、人の良さ、雰囲気の良さに惹かれて移住決断。

「ないものはない」と開き直るメンタル

移住して不便に感じたことがあれば教えてください。

橋本さん
結構驚いたのは、夜が早いということ。というのは、夜になると町の飲食店が全然開いていないので、仕事から帰ってきて外でご飯を食べるっていうのが、町内で済ませようと思うとあまり現実的ではなく、「あ、こんなに閉まるの早いんだぁ」と思いました。

何時ぐらいに閉まるんですか?

橋本さん
ほとんどの店は17時くらいには閉まっていて、開いてても19時ぐらい。1、2軒くらいお酒を飲めるところが22時くらいまでやってたりしますけど、本当に1、2軒という感じですね。

横浜はファミリーレストランなども24時間営業で、夜中までお店が開いているのが当たり前。でも、丸森はそもそもチェーン店が1軒もないんです。
加えてびっくりしたのが、同じくらいの時間にタクシーの営業が終わるんですよ。タクシーが必要とされるのって終電後じゃないのか?って思いましたね。
都会にいた時はタクシーを利用するのは終電を逃した時とか、終電で帰ってきちゃって降りた駅から家までが遠いからとか。そういうことだったと思うんですけど、こっちでは終電よりも先にタクシーが終わるので。

夜は夜として扱うものですね。寝るものだし。ご飯をみんなで食べて、団欒して寝ましょう、っていうのが当たり前ですね。
都会にいた時は、別に19時からでもちょっと遊びに行こうかって思ったけど、子どもがいるのもありますけど、丸森では19時から遊びに行こっかって思ったことないですね。

丸森町で2年生活されていて、その不便は解消されましたか?

橋本さん
店が建つとか、物理的に解決されることはないので。もう、そういうものだという受け入れで解決する感じですね。
お店はやってません。簡単にハンバーガーは食べられません。というのを受け入れてわかって夜はちゃんとお家で食べるっていう解決方法になります。

不便の中でやりくりする楽しさに目覚める

丸森町に来たからこそ良かったことってありますか?

橋本さん
そっちの方が多いですね。飲食店がないので、しかたなく家で食べることになるじゃないですか。そうなると、よく産直市場とかに買い物に行って、旬の物を食べるっていうのが都会よりもはるかに多くなりましたね。
スーパーって夏野菜を冬にも売ってるじゃないですか。でも、産直市場ってその時採れたものを売ってるので、夏に白菜とかそんなのはあんまりなくて、ナスとかきゅうりとかトマトとか、旬のものを食べることができる。そして安い。ちょっと健康になったような気になりますよね。

野菜ってなぜかその時に必要なものがちゃんとその季節野菜に入ってると言われてるので、ずーっと冬は大根と白菜を食べておいしいし幸せだなって思いますね。夏はスイカがおいしい。そういうところ、身体はわからないですけど、心はすごい幸せを感じますよね。

それは丸森町だからこそ感じられたことですか?

橋本さん
そうですよね。スーパー自体も地元のコーナーみたいなのが絶対あるんですよ。まず先にそこを見る。そっちの方が安いし、今日採れた物とかだったりするので。
スーパーに出すものって一番の完熟する3日前とかに収穫してスーパーに出した時に一番ベストみたいなとこを出すらしいんですけど、産直みたいな地元の場所って「今日完熟だから今日採ってきました」みたいな感じなので、味がすごくおいしい。

素敵な食生活ですね。

橋本さん
あと、ご近所さんからお野菜をもらえるんです。そうなった時に自分では買わないような、食べたことないような野菜をもらって、もらったからには調理しないとってなるので。そこで、自分のレパートリーが増えることがあります。
「え?何この野菜?どうやって食べるんだろう?」っていうこともあって。自分で調べたり、隣のお母さんがこうすればいい、ああすればいいって教えてくれたり。その通りに食べてみるとおいしかったり、自分では買わない野菜を食べるような機会が増えましたね。

橋本さん
大根はもらえるのでずーっと買ってないと思います。でも同じものばかり作ってると飽きてくるから、どんどん大根のレパートリーが増えてます。
違う食べ方を模索し始めて、なんかだんだん料理が上手になるような気がしますね。田舎のお母さんって料理上手だなってイメージがあるんですけど、なんかそういうことなのかなって。みんな強制的に採れたものをどうにかしないといけないから、どんどんレパートリーが増えていくのかなって思いました。

季節の野菜を食べたりお裾分けがあったり楽しそうですね。

橋本さん
そうですね。最初は困るようなこともだんだんやりくり上手になってくる。それがわりと心地よく循環してサイクルになってるなっていうのがありますね。あんまり1日の流れに対してイレギュラーは起きない。というのがすごく健康的だなって思いました。夜に呼び出されるとかほぼないので。
夜は帰ってきて、ご飯食べて寝るものです。朝になったら起きましょう、みたいな。

丸森だからストレスが少ない・些細な幸せを感じ取れる

感じてた不便がマイナス10だとしたときに、得られた幸せはどれぐらいですか?

橋本さん
ストレス100分の1くらい

具体的にどんなところでストレスが減りましたか?

橋本さん
とにかく人混みがない。都会では電車の人混みとか、デパートの人混みとか、何でも人混みだなっていう感じ。丸森に来てから思ったんですけど、私、人混み嫌だったんだなって。丸森に来たら何百人も集まってる場所ってまずないので。
人と物理的に近くないっていうだけでとってもストレスがないと思いました。関係的には近いんでしょうけど、物理的な距離は本当に遠いっていうか。隣の家だって隣とは言えないくらい距離があるので。

広々としていて、いいですね。

橋本さん
満員電車に乗らなくていいっていうことで、たぶんストレス50くらい減るんですよ。あと、別に何もないから、すごい小さいことに喜ぶようになりましたね
今までは何でもあったので、「ないこと」がストレスだったりとか、手に入れられないことがストレスだったり、行きたいと思っていた流行りの場所に行けないっていうことがストレスだったりしたんですけど、丸森にはそもそもそれがないので。
都会だと、自分でストレスを生み出してた感がやっぱりあるんです。「丸森にないものはない」っていう感じで生きてるから、あんまり小さいことにイラっとしなくなりましたね。

橋本さん
あるっていうだけで嬉しいし、びっくりすることが結構ありますね。小さいイベントがあってそこでおいしいもの食べたとか、会ってなかった人に会ったとか。
最初から「ないこと」を受け入れてる方が幸福度が高いのかよくわからないですけど、自分でイライラしない。無駄なストレスを生み出さない。ただ季節の花が咲いてるだけで嬉しいですからね。

素敵な過ごし方ですね。

橋本さん
都会にいたら気にしてもなかったことに喜んだりとか、目がいったりとか。すごい顕著だなって思ったのが、虹を見ることがすごい増えて。そもそも虹を見ることが増えるって外を見てるんだなっていう。
自分が外を見てる時間っていうのが増えたというのと、遮るものがないので端から端まで全部見えるんです。虹の端から端まで全部見えることが多くて、虹を見るたびに写真を撮っていて、数えると1か月に1回は見てる。

あと、ちょっとした夕日がきれいだったりとか。最初の頃、「きれい、きれい」って私がよく言ってたんでしょうね。丸森に来た時に息子がまだ4カ月で、言葉を覚えていく時を丸森で過ごしていて、「パパ」とか「ママ」ってしゃべり始めた段階で「きれい」を覚えました。「きれい、きれい」ってよく言ってました。

素敵なエピソードですね。それを考えると、夜お店が早く閉まることや虫がたくさん出ることは大したことではなさそうですね。

橋本さん
そうですね。それを全部飛び越えられるだけの良さみたいなのがありますね。都会に住んでる時よりは、はるかにいいですね。わざわざ公園に行って遊ぶとかじゃないですからね。そこらへんでも十分楽しい。

率直に、現在の幸福が続くなら、不便が一生続いても受け入れられますか?

橋本さん
そうですね、そもそも最初に言っていたマイナスだった部分は、もう変わらないと思っているんですよね。これからもずっと丸森に住んでいこうと思っているので、たぶんもう変わらなくていいと思ってるんでしょうね、自分で。

~ケンジンからの学び~
地方移住に不便はつきものだ。ないものはないと受け入れるメンタルは必須。ただ、それを受け入れ、自分でやりくりする楽しみを見つけることができれば、不便=不幸にはならない。そして、ないことが当たり前だという心の余裕を持ってさえいれば、日々の些細な幸せを見つけられ、感じている不便の何倍もの幸福を得られる。