[詩] サンサロ
三叉路の左を行けば
右の可能性が消える
真ん中に立っていると
左右がかなり遠くまで見える
可能性が見える
右に行けば
左が消える
ほら、やっぱり消えた
左右どちらにも途中には横道がある
その横道は途中で左右に曲がっているので
横道は路地になる
見通しがきかないはずだ
迷ったら
おばぁがみかんを食べてるはずだ
私は歩いていた
自問自答、右か左か
わからなくなっていた
左右どちらかを歩いているのは確かかもしれなかった
戻って三叉路の真ん中に立ってみようか
本当にこっちでいいかもう一度たしかめてみようか
教科書どうりの回れ右
回れー右! イチ、ニ!
逆方向にあるきだした
混乱するので、もう左右のことは考えない
街灯がまあまあ明るく道を照らしている
5メートル後ろに、もう一人の私を歩かした
得意の分裂などではないはずだ
白い光の中で私が歩いていた
暗闇の中へ消えていく
白い光の中で私は歩いていた
暗闇の中へ消えていく
数度同じことを繰り返した
数度同じことを繰り返したようだった
もう一人の私は止まった
私がだんだん小さくなった
三叉路は今はただの一本道
壁をペタペタ手で触りながら慎重に戻った
間違えたら大変だ
横道では手のひらジャンプだ
再着地 ブロック塀確認
三叉路再到着、仮到着
止まれ
2歩横歩き
もうイチドー回れー右、イチ、ニ
吐いた白い息が2つに分かれて遠くまで吸い込まれていく
頭の中の考えも2つに分かれるのか
ぴりっと勢い良く破いてみた
裂け目から何かが出てくる前に
全て無かったことにした
虚無、深淵、なんかそんな2文字熟語
なんかが出てきたら
ダルくなる
ダルくなる
放っておいたのが正解だった
拾った
君の事は左の方に流れた
キットカットのことは、意を決して右に座った
左のポケットに入っていた付け髭は、どっちに行こうか迷っていた
私と一緒にいればいいじゃないか
気にすることはない
これまでもそうしてたじゃあないか
不自然なものいいじゃあないか
再出発 サン、シ!
再忘却左右記憶 ゴー、ロク!
眠気が訪れた
寝ながら歩いた
ぼんやり、ぼんやり歩いた
付け髭をつけてみるが別人になるわけでもなく
眠気も覚めなかった
誰も私とは気がつくまい
だって付けたの誰も知らないんだから
ぼんやり、ぼんやりある 歩いた
街灯が
閉まっている洋品店の
ショーウィンドウに
飾られていた
ペルサーチョのポロシャツの半身トルソーの隣
身体の透き通ったつけ髭付きの私を映した
ピンとしてるカイゼル髭
愛おしくなった
何を
ぼんやり、ぼんやり歩く
ぼんやり、ぼんやり歩く
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