(詩)窓の外の七月

おろしたてのタオルケットの
やさしくかわいた手触りを
身体が勝手にたぐりよせて
いろんな感情をもてあまして
涙を流しながら魚肉ソーセージを
日陰の部屋でもそもそ頬張る
七月の昼下がり

誰も聞いてないのに
誰にも聞こえてないのに
誰が訊いたわけでもないのに
「みなさまいかがおすごしでしょうか」
そんなひとことが口をついて出てきて
ふいに心の合わせ目がほころんで
開けはなした窓に草いきれが迷いこむ

ラジオからは暑い異国のポップス
アスファルトに落ちる西日は生焼けで
蝉たちは土の中でゆたかに眠りつづけ
窓の外の七月はまだ脱皮の途中で
転げ落ちそうな喧噪は小石にひっかかり
夏に届きそうで指先しかかからなくて
けだるい身体にものたりなさが
うまいこと寄り添う

小さなつまづきを忘れさせる
小さなうれしいニュースを
いつしか手のひらで包み込めないほど
ふくれて大きくなるような未来の好日を
予感が予感を呼び込んでいくように
玉突きしながらやってくる幸せを
しずかに沸き立ちはじめる空気の中に
期待しながら窓の外をながめる

七月が脱皮して八月になるのを
部屋の中でずっと待ちわびてたら
もしかしたら自分が部屋から
脱皮するのを忘れるかもしれないけど

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