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エスタードÖstadの森

月曜日からヨーテボリの北東、エスタードÖstadの街の郊外にある森林へ来てます。スウェーデンでの修士課程2年目は実習が多いのですが、今度は10日間の実習。今回の実習は、Östad säteri財団が所有する森林を対象に、その長期と短期の森林経営計画を立案せよ、という現在与えられている課題のためのもの。数値目標までを含めて1月までに提出することを求められています。

12月に入って急に寒くなってきたスウェーデン。さらに森の中では、普段暮らしているマルメよりも気温はグッと下がります。毎日、日が出ている時間は外で実習、それ以外の時間は教室で講義を受けるという生活。なかなかハード。

初日や二日目はまだ元気
まあとにかく寒い
スウェーデンといえばこれ

日々のルーティンワークとは別に、特別講義と会社見学が設定されていた。

特別講義はSkogssällskapet財団(The forest society foundation)から来た講師によるもの。私が通うスウェーデン農科大学SLUが開発した森林計画ソフトウエアHeurekaを利用した、当該財団の所有する森林の現状と将来計画についての解説。

この財団の所有する森林は約3万ヘクタール。スウェーデン全土に所有林が分布していて、Heurekaが開発される前までは全体像を把握するだけでもかなり大変だった、とのこと。それはそうだろう。

ちなみに、講師はSLUで博士号を取得した方。大学とビジネスとの関係が実に深いということ、そして博士号取得者がそのキャリアを生かして働く職場が業界内にある、ということも印象的だった。

会社見学は、行きの道中では、すでに紹介したSödra(南部森林所有者組合)の大型パルプ工場、帰りは、大手製材メーカーDerome社の本社工場が対象だった。

Derome社は、従業員約900名、家族経営の製材会社としてはスウェーデン最大手なのだそう。製材会社と書いたが、この会社の特徴は、製材だけでなく下流の小売業までを取り込んでいる点にある。
このように、製材業やパルプ製造業の企業でも、実際には、その周辺の様々な製品やサービスを併せて供給しているというケースがスウェーデンでは一般的。熱(温水)の供給や発電、バイオ燃料といったエネルギー関連の売り上げがバカにならないらしい。
Derome社のエネルギー部門売上高はさほどではなく、もっとも大きい売上高を占めるのは家の販売なのだそう。個人用の住宅だけでなく、集合住宅の製造販売も行っている。
また、屋根ユニット(roof truss)部門も強く、スウェーデンだけでなく、ベルリン郊外でも屋根ユニットを製造する工場を経営しているそうだ。

これまでに触れた国有林運営会社のケースを合わせると、この3カ月間で4つの異なるタイプの森林経営体を見学、もしくはそれに関して講義を聞いたことになる。いろいろな組織形態があること自体が面白いが、どんな組織形態にせよ、最終的に森林所有者がそれなりの収益を上げられるように常に経営の革新を怠らない、という姿勢。また、大学(SLU)と連携し、科学的知見を取り込んでいこうとする姿勢も特徴的だった。


オリジナル記事公開日:2012年12月21日


追記(2024年5月29日):
翌年6月に修了なので、森林学の修士課程も大詰めの段階。このころはかなり気持ちが焦っていたことを覚えています。博士課程の進学先は決まらない(博士課程学生の公募には20ちかくアプライしたけど、みな書類で落とされる)、修士論文もなかなか進まないetc.。あと、本当に寒かった。
森林計画の立案をしていたこともすっかり忘れてました。このころはGISソフトも使っていたのに、もう何年も触ってないので、今はまったく使えないでしょう。もったいない。Heurekaも使っていたような・・・。
見学先も、なかなかユニークなところだったことに、いまさらながら感謝です。

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