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スウェーデンの大学院へ

9月より、スウェーデン最南部の都市マルメから10kmほど離れたキャンパスでの授業が始まりました。スウェーデン農科大学Swedish University of Agricultural Science (略称SLU: Swerige LandbruksUniversitet)のアルナープ(Alnarp)キャンパスです。SLUはスウェーデン全国に4つのキャンパスがあって、ウプサラ、ウメオといったよく知られている街も含まれます。

アルナープのキャンパスがあるスウェーデン南部はスウェーデンの他の地域とは気候風土が異なるため、そういう差異に着目した研究をするというのが、当地にキャンパスが置かれている理由なんだそう。僕はSouthern Swedish Forest Research Instituteが運営しているEuroforesterという修士プログラムに参加する形で1年間、講義を受けつつ修士論文を書きます。

キャンパスの事務棟(たぶん)

授業が始まって2週間がたちましたが、ドイツのカリキュラムとの違いがいくつもあります。一番の違いは、こちらのほうがより多くの時間を授業や演習に拘束される点。ゲッティンゲンでのカリキュラムは比較的余裕があって、例えばドイツ語のコースをとったりすることも可能だったのですが、こちらではほぼ不可能。前半の2カ月で1つめのモジュール(15単位)、それが終わるとすぐに翌週から1月下旬までつぎのモジュールとなっており、それぞれのモジュールごと、日々のスケジュールが事前に渡されます。今はスウェーデンのSilvicultureについてのモジュールに参加しているのですが、平日は毎日予定がびっしり。そのうえ課題がひんぱんに与えられます。最初の2週間で、グループワークでのレポート提出とプレゼン、さらにフィールドワークまで行いました。どうやらこのペースでずっと進んでいくようです。

キャンパスから自転車で15分の小さな港町Lomma

評価そのものは日本で言うところの優・良・可・不可の4段階のみ。数年前までは合格・不合格だけだったようですが、EU圏で評価基準を合わせるという動きのなかで、現状のものにしたのだそう。ちなみにドイツはこの点とても細かくて1.0が最優秀でそれから0.1刻みで4.0まであります。バルト海を挟んで隣の国なのに、違いが多いのが面白いです。ドイツでは聞くことのなかった単語にも出合いました。例えば、落葉広葉樹にNobleなものとTrivialなものがあるということ。前者はオークやビーチ、後者はポプラやハンノキの類が入るようです。

ゲッティンゲン大学にいたころほど時間にも気持ちにも余裕はなさそうですが、時間があるときに、こういう差異のことや、修士課程のプログラムのことについて引き続き書いていこうと思います。

後者について言えば、東アジアや東南アジアでも僕が参加しているような英語で学ぶ森林科学の修士課程があればよいのに、と感じています。森林は土地土地で様相がまったくことなるので、欧米で学ぶことも意義は大きいですが、地域のベストプラクティスをその地域内で学ぶというのも価値があると思います。例えば1年目は京都で、2年目はインドネシアでとかおもしろいんじゃないかなあ。インドネシアはCIFORがあるし。


オリジナル記事公開日:2012年9月15日


追記1:スウェーデンに移る前から困っていたのが、住居のことでした。1年目のゲッティンゲン大学では、一人暮らしだったので、大学が準備してくれた学生寮の一人部屋で何の問題もなかったのですが、2年目からは家族で暮らす予定で大学に問い合わせたら、そのような部屋はすべて埋まっていて、自力で探すしかない、とのこと。ここで私が判断ミスしてしまったのが、しばらく安宿に泊まって自力で物件を探せばなんとかなるだろう、と考えてしまったこと。ドイツであればなんとかなったでしょうが、スウェーデンでは全く無理。そもそも安宿が全然なくて、スウェーデンに引っ越して最初の一カ月ぐらいは、かなり精神的につらい時期を過ごしました。結局探し出した安宿は、周りが畑ばかりの農場の一角だったのですが、清潔感もなく、大家も愛想がなく、という感じ。雰囲気は、マルメを含むスコーネ地方を舞台にした推理小説Kurt Wallanerシリーズで描かれた感じそのまま。
ある日、郵便物を取りに大家の母屋に行って声をかけても誰もでてこないので、半身だけ入口に入れて声をかけたらようやく出てきてくれたけど、その時に「ここには絶対入るな、場合によっては撃たれるぞ」と脅される始末。最終的には、大学の好意で学生寮に一人部屋を用意してもらい、そこから脱出できたので良かったのですが。その後、幸運にもマルメ市内に賃貸物件を借りることができましたが、結局、暮らしを整えるのに3カ月近くかかってしまいました。スウェーデンの住宅事情は要注意です。

追記2:最後に書いたアジア圏での複数の国をまたぐ修士プログラム。今はあるのかもしれませんが、こういうのは本当に必要だと、教員の立場になっても強く思います。

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