【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (終)
* * * * *
林檎の王様 とっても笑顔
餅に感謝を述べていた
「お前が紙の魔女を紹介してくれたおかげで、この国は大変潤った。お主の白い体も、改めて見れば美しい、すまないことをした。お前にも褒美を授けねば」
林檎の王様 とっても笑顔
口は回る 白い餅を褒めたくる
黙って聞くは 怒りの餅
話の見切りを見極めて
鋭い眼差し 王様向けて
「褒美はいらない。代わりに色を、もうもう増やすな」
悲しみ 強張り 声を上げる
ぽかんと わからぬ 林檎の王様
餅は 落ち着き
「これ以上、色を増やすのはやめてほしい」
言葉をしめる
困った わからぬ 林檎の王様
「はて。何故そのようなことを言う」
ピンとこないは 林檎の王様
「林檎の王様、あなたは間違っている。色を知れと言ったのは確かにボクだ。だけどボクは赤も好き。美しい色は豊富な色彩ではなく、個々の色との組み合わせ。これでは色の良い部分まで潰してしまう。これ以上は国はずたぼろ壊れるだろう」
林檎の王様 抑えられない 我が怒り
わなわな わなわな 向かっ腹
自分の顔 しわくちゃ めちゃくちゃ しまくって
外に向かって指差した
「やはり生意気なやつだった。早くこの国から出て行ってしまえ」
「だけど、このままでは、この国は壊れてしまう。紙も心を病んでしまう」
「黙れ!」
怒りの声は 城中響き
餅はびくりと 縮まった
「生意気な餅だ、お前だけは愛せない。色を知れと言ったり、捨てろと言ったり、あべこべだと気が付かないのか。この国のルールはたったひとつ。すべての色を愛しなさい。お主を今では食べられぬ。二度と私の目の前に、姿を現すではないぞ。分かったか!」
餅は涙のひとつも出ずに
ただただ悲しくうなだれた
林檎の王様 ご立腹
そのままどこかに行ってしまう
餅は言われるがままに城を出て
そのまま国をあとにした
もうもう どうしようもない
もうもう どうしようもない
* * * * *
とぼとぼ家に帰った餅は
自分の白い体を見るやいなや
そこらにあった食紅をつけて
体を赤色にしたのだった。
(おしまい)
ー!ATTENTION!ー
・2019年に小説投稿サイトの「お題:赤」のコンテスト用に書き下ろした作品です。(再編したものを掲載しています)
・この作品はフィクションです。現実における全ての事と一切の関係はございません。
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