文学作家を夢見た少女はエンジニアを目指すことにしました (4)
自分がなぜ執筆を始めたのか、それからなぜ作家の夢からITエンジニアの道に行くことを決めたのか。
今に至るまでの話を、いくつかの章に分けて話していきたいと考えます。これが何かの繋がりになればと祈りながら。
(前回の記事:「文学作家を〜しました(3)」)
作家を知った日
熱りの冷めない感情が、からだの中を巡っているような、そんな気分。
(話を書く仕事って何だろう——)
小学3年生の私。仕事にはあまり詳しくありませんでした。
(お母さんなら知っているかな)
私は助言を求めて、母に尋ねます。
今も覚えている。夜のこと。
夕飯前か、夕飯後か、母は洗濯機を回していました。
甘えるのが苦手で、少し気恥ずかしかった私は、洗濯機のある脱衣所の扉越しに尋ねました。なんとなく、扉の磨りガラス越しの、淡い、黄色の光が思い出されます。
「お母さん、聞きたいことがあるんやけど」
「どうした?」
洗濯の作業を続けながら、母は声をひろって応えます。
「話を書く仕事って、何があるか知っとる?」
「はなし?」
「物語書く人! この前授業で話書いたんやけど、なんか、そういうので仕事になるものってある?」
母は私の質問に少し困っていました。当時は理由が分かりませんでしたが、今思えば一口に話といっても、ライターに脚本家に小説家にと、幅の広い世界です。
私が何を思って聞いたのか、すぐに分からなかったのでしょう。
「話ってどんな話?」
「話は話やよ!」
「うーん、絵本とか脚本とか色々あるんやけど——」
母は少し考えてから「作家かな」と答えました。
「さっか? それが話を書く仕事?」
「うーん、多分、一番近いと思うけど……」
私は嬉しくなりました。
(さっか! 私は将来さっかになるんだ! 夢が決まった!)
「分かった!」
一言そう告げると、私はその場を去りました。
これが「作家」の言葉を初めて知った日となりました。
文字にする日は少し先
それから高校生になるまで、プロフィールの将来の夢の欄には、決まって「作家」と書いていました。
卒業文集にも変わることなく、全て「作家」で統一されています。
好きなことを仕事にする。
だから私は作家になって、話を書いて生きる。
全くもってブレませんでした。
だからといって、たくさん物語を書いていた訳ではありません。割と、脳内で完結してしまい、アウトプットはあまりしていませんでした。
人形遊びと、落書き帳にかきのこした跡。
あっちこっち、少しずつ残している感じでした。
初めて書いた日から1年間ほど、物語を書いた記憶がありません、忘れているだけかもしれませんが。
けれども積極的に書くようになった日のことは、今もくっきり覚えています。私が小学5年生だった、夏の日のことでした。
(「文学作家を〜しました(5)」へつづく)
《ここまで読んで下さりありがとうございました!》
note毎日投稿中です!:)