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文学作家を夢見た少女はエンジニアを目指すことにしました (3)

自分がなぜ執筆を始めたのか、それからなぜ作家の夢からITエンジニアの道に行くことを決めたのか。

今に至るまでの話を、いくつかの章に分けて話していきたいと考えます。これが何かの繋がりになればと祈りながら。

(前回の記事:「文学作家を〜しました(2)」





忘れられない瞬間

先生から渡された、羅線だけの白い紙。
あとはノートに書いた物語を書き写すだけでした。

けれども、なんだか物足りない。

物語は主人公のとある兄妹が、宝の地図を見つけるところから始まります。その後、イカダを作って宝島へと向かうのですが——。

下書きでは、何事もなく宝島を見つけて冒険が始まりますが。

けれども、なんだか物足りなくて、鉛筆を持つ手は止まりました。


その時、突然。
頭に映像が流れ込んできた。

最初に、イカダに乗る兄妹の足下が映し出されました。
次に、木のイカダに水で濡れた丸い跡が、ポツポツ増えていきます。
二人が上を向くと、雨粒が見え、空は徐々に黒くなります。
渦を巻くようにして雨雲が生成されていきました。
嵐が来ると慌てる兄妹。
雨は激しさを増し、斜めぶりの雨が二人を襲います。
次の瞬間、木のイカダにヒビが入り、イカダは壊れ、二人は離れていく。
妹を想い叫ぶ兄の声と、恐怖いっぱいに叫ぶ妹の声が、聞こえ——。

映像は終わりました。


頭に突拍子もなく映像が流れ込んできて、見えなかった物語の一場面を垣間見たのです。

今もずっと、忘れられない瞬間となりました。
今も鮮明に思い出せるのです。

感動で思わず頬は緩みました。


「先生! 新しい話をひとつ追加してもいいですか!?」

先生に直談判をして許可を得た当時の私。清書用の白い紙に、勢いのまま見た映像を書きました。


楽しかった。本当に楽しかった。

今も、書いていて辛い時はこの時の感動を思い出しながら「結局は話を書くのが好きなんだな」と感じています。

唯一ある、憩いの自信です。




初めての物語

物語の最後の一文を書き終えた時、充足感でいっぱいになりました。

大人になってデジタル化してみましたが (誤字脱字や漢字の修正を加えても) 総数は4000文字を超えていました。
原稿用紙でいえば10枚程の数です。

どおりで書き終えた紙が他の子に比べて厚みがあったと納得しました。


ですが思いがけない弊害として誰も全文読んでくれませんでした。

5人グループで互いの作品を読み合う時間。やはり長かったのか、みんな途中で読む気をなくしていました。(当時小学三年生)

見兼ねた先生が冗談半分で私の物語を読み聞かせし出す始末。本当に恥ずかしくて、目を伏せてしまったのを覚えています。

おかげさまで感想の書かれた付箋には、揃いも揃ってオチへの感想ばかりでした。(恐らく、最後の一ページだけ読んだのでしょう……)


こんな思い出もありますが、それでも、今も忘れられない瞬間、感動、喜びであることに変わりありません。

(これだ、私が探していた『絶対的に好きだと思えること』は物語をつくることだ、これしかない)

感動に身を任せた直感で『話を書く仕事をする』と決めたのでした。
「文学作家を〜しました(4)」へつづく)


おまけ

当時、初めて書いた物語です。
あの時の情動を忘れないため、ずっと手元に置いてあります。

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《ここまで読んで下さりありがとうございました!》
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