【物語】 林檎の王様と真っ赤な国 (4)
* * * * *
ざわぞぞ ざわぞぞ 大変だ
真っ赤な国に白が在る
がやひそ がやひそ 驚いた
赤をもたざる人が居る
真っ赤な国は大騒ぎ
ザクロ大臣連れて来た
紙の魔女を連れて来た
見慣れぬ色を持つ女
何食わぬ顔で歩く紙
すぐさま城に連れられて
林檎の王様のまんまえへ
あまりの白さに驚愕するは
ぷくぷく太った林檎の王様
ザクロ大臣 大仕事
ようやく終えて 一息ついて
とっとと去ろうと 後ろを向いたら
知らぬ間 周りは 人だかり
城中 従者 集まって
多様な声を漏らしている
みんなの目当てはただ一つ
見たこともない白い人
あれは紙の魔女なのだ
林檎の王様 咳払い
玉座に座り 威張った声で
まっすぐ 見据えて 問いただす
「お主が紙の魔女だとな」
「左様でございます、赤の王。餅から紹介たまわりました、紙の魔女でこざいます」
顔色変えぬ かの魔女の
心は一つ 目的一つ
友たる餅を救うべく
頑固な王に伝えよう
色とりどりの美しさ
「さっそくなのだが見せてくれ。この世に赤と同じくらい、美しい色があると聞く。お主はそれを、つくれると」
「もちろんです。紙は白色、なんでもござれ。どんな色がお好みか」
「生憎、赤しか知らぬでな、何か一色みせてくれ」
「それでは青は如何でしょう。赤は情熱、大変美しい。対し、青は冷静、心清らかにしますでしょう」
「ほうほう、どれどれ、やってみよ」
王様の言葉を聞いたなら
紙の魔女は高らかに
音色を奏でて歌ったさ
””赤は情熱それ美しい
ひとつ 母なる 太陽の色
トンタラカ トンタラカ トターラカ
青は冷静それ清らか
ひとつ 母なる 水の色
トンタラカ トンタラカ トレーブカ””
すると どうだ 変わる城
そこらの赤に 青まじり
美しい色が生まれていく
カワセミ
サファイア
オオイヌノフグリ
真っ赤な国に青がきた
やってきたのは 清い青
野次馬 揃って 大騒ぎ
知らぬ色に戸惑い隠せず
瞳は知らぬま輝きだす
林檎の王様 驚いた
清らかなるは我が心
林檎の王様 澄まし顔
満足そうに こう言った
「青もなかなか美しい」
「お気に召しましたか」
「ああ、知らなかった、こんな色」
「赤とは、また、違うでしょう」
「もちろん、赤も好きなのだ。だけども、青はなんと清らか。こんな、心は初めてだ」
「ですが、ここは真っ赤な国。青は受け入れないのでは」
「そうだ、だから、ルールを変えなければいけないな」
林檎の王様 青を大変気に入った
その日のうちに御触れだし
町中 赤青 着飾った
この国のルールはたったひとつ
赤色と青色だけを愛しなさい
(「林檎の王様と真っ赤な国 (5)」につづく)
ー!ATTENTION!ー
・2019年に小説投稿サイトの「お題:赤」のコンテスト用に書き下ろした作品です。(再編したものを掲載しています)
・この作品はフィクションです。現実における全ての事と一切の関係はございません。
《ここまで読んで下さりありがとうございました!》
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