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コロナ禍のヨーロッパ文化遺産の日を終えて

コロナ禍の中、今年もヨーロッパ文化遺産の日が9月19日と20日に開催されました。

新型コロナの感染拡大によりボルドー、ニース、リールなどでキャンセルになる中、私が住むブルターニュ地方のレンヌでも開催が危ぶまれていました。前日までどうなるか分からず、ずっとニュースを追っていましたが、最終的には2日間無事終えることができました。

ヨーロッパ文化遺産の日の醍醐味の一つは普段は入ることができない歴史ある建物に入ることができるということ。それはガイドにとっても同じことで、普段あまり案内することがない場所をガイドする機会でもあります。

今年はジャコバン修道院という場所を担当することが決まったのが9月の初め。もう少し早く教えてくれればなあ・・・という気持ちを抑えつつ、急ピッチで準備を進めました。ガイドを対象にした研修もあるのですが、とにかくできるだけいい状態で当日を迎えるため、9月に入ってからは空いた時間を見つけては多くの資料や本を読むのに忙殺されていました。

ツアーの参加者の多くは観光客ではなく地元の人が多いので、ツアー自体というよりは込み入った質問への準備といったところでしょうか。

レンヌのジャコバン修道院は1369年にブルターニュ公のジャン4世によって創建されました。現在は多目的の会議場としても使われている建物で、レンヌのみならずブルターニュ地方の歴史が詰まった場所。歴史的な建物を修復し保護しつつも、現代のニーズに合わせた増築をしているのが大きな特徴です。

コロナ禍ということもあり、今年はマスクや消毒ジェルの使用の他に、ツアーの定員も20人という制限がありました。

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正直なところ、こういう状況なので人はあまり来ないんじゃないかと思っていました。ところが、蓋を開けてみればジャコバン修道院だけでも2日間で1000人近くの入場者を記録しました。私は同僚の複数のガイドと交代しながら、30分間のツアーを2日間で14本行いましたが、ほとんどが満員という盛況ぶりでした。

子供から年配の方まで様々な年齢層の参加者の中、あるグループに小さな男の子のいるご家族がいました。

空のベビーカーを押しながら、私のすぐ後ろにピッタリついてくる子供のことを気にしているお父さん。そして、目をキラキラ輝かせながらジャコバン修道院を「きれい」や「すごい」と感嘆の声を上げている男の子。

そんな様子を見ながら、こういう風に世代を超えて文化遺産を守る大切さが芽生えていくのかもしれません。コロナの第2波が押し寄せる中ではありましたが、今年で37回目を終えたヨーロッパ文化遺産の日の意義を感じた瞬間でした。

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