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全集中の呼吸【エッセイのような何か】

 今回は、とある日の朝、僕がちょっと驚いた話。


今朝の出来事

 今日の朝、電車の中の僕はいつも通り、眠かった。

 僕は、通勤中の電車の中で、大概は寝てしまっている。朝早くに起きると、しばらくはとても眠い状態にあるのは、おそらく自分だけではないと信じたいが、そうは言っても、眠すぎるのだ。
 しかも、通勤時間は片道でも1時間半、こんな時間を寝て過ごしてしまうのは、あまりにも勿体無いもったいない。せめて、自分の趣味の時間に使いたいとノートを手に持って乗っているのだが、それほど意志を持ってしても、眠気に打ち勝つことができない日々が続いていた。

 なぜこんなにも眠いのだろうか?

 僕はそんなことなど、すでに考えており、いくつか対策の手を打っていた。

 まず考えたのは睡眠不足だ。僕の趣味の時間は、基本的に夜であることであるからして、高確率で夜遅くに寝てしまっている。そのため、寝る前にスマホを見る時間を少なくして、短い時間で深い眠りができるように工夫した。

 だが、乗車中の過ごし方は未だ変わらない。

 この後も、夏場のクーラーが原因で体温が低くなるためだと思って、眠くなりそうなら上着を着てみる対策を講じたが、結局、暖かさを感じ、安心して眠ってしまうオチが付いてしまった。

 だが、僕はそんな状況でも、「もう一つ策」を考え付いていた——

 気づけばもう目的地で、早く降りなければと荷台に乗せた少し重い自分の荷物を、虚な目で恐る恐る下ろし、改札へと向かった。

 駅を出て、会社へと歩みを進める中で…
 そういえば、電車で毎回襲われるこの眠気だが、会社で働いている最中でも、正午になるまでずっと続いていたことを思い出した。
 朝、コーヒーを飲みながら仕事をするも、その反動なのか、30分もすると強い眠気が襲ってくる。しかもこの眠気の波が繰り返しやってくるため、午前中はずーっと作業が捗らないケースが多かったのだ。

 こうした症状は、なんとしても改善しなければと感じた僕は、会社のデスクに着くと、すぐにその「もう一つの策」を実行してみた。単純に、「とあること」を朝から意識しながら仕事を進めたのだ。

 そうしたら、これが効果絶大だった。

 まるで錯覚を起こしたかのように、スイスイと作業が進んでいる。
 普段の僕だと、眠気は抜きにしても、他の社員の様子が気になってしまうこともあるが、今日はそうした注意散漫な状況にすらならないのだ。

 (なんか、へんな通販情報番組みたいな展開だが…)


作戦

 「もう一つの策」というのは、至ってシンプルだ。

 それは「呼吸を意識すること」

 「深呼吸」とまではいかないが、比較的深い呼吸を意識して行いながら、仕事をしてみたのだ。
 なんでこの策を講じたのかと言えば、正直、「なんとなく思いついた」としか言えず、効果があるのか半信半疑だったが、こういう意識をしたことは今まで無かったので試してみたかったのだ。

 その結果、気付けばいつもよりも作業が進められていて、普段の午前中のパフォーマンスとは思えない進み具合だったのだ。
 まあ、今日の作業がちょうど佳境で、より一層義務感が増しているなど、さまざまな要因があるだろうが、呼吸を意識することが、今まで感じていた、強い眠気の改善には大正解だったようだ。

 何となく試したことで、ちょっとした達成感を味わった感動を覚えつつも、作業を進めていて、いろんなことが僕の頭の中で繋がっていた。


考察

 僕は、電車通勤でいつも襲われる眠気や、午前中の仕事中に襲われる眠気の原因が、脳へのエネルギー不足であるという結論を考えついた。

 僕は、一度テレビでとあることを耳したことがある。それは、「精神的な不安を感じやすい人や、体にいろんな不調を感じている人は、全体的に息が浅い」ということだ。

 正直、いつのテレビで見たのかうろ覚えで、事実なのかどうかはっきりしないが、僕が普段からかなり息が浅いのかもしれないと、心の中ではいつも思っていた。

 そんな中で、今朝から意識して呼吸を深くすることで、一瞬にしてで解決できたから、実際そうに違いないのだろう。

 僕は普段から呼吸が浅い状態で、起きた直後の朝は脳にエネルギー源となる酸素が足りていない。
 そのため、起きてすぐの電車の中でも脳が働かないため、眠くなっていたと考えられる。
 今日は、呼吸を意識したのは仕事中だったが、朝早くの電車内でも深い呼吸を意識すると、もしかしたら同じように改善できるかもしれない。

 なおかつ僕は、呼吸が浅いままで、仕事を始める時、コーヒーを飲んで眠気を覚そうとしていたが、これはかえって逆効果なのかもしれないとも考えられた。

 いわば拳銃を撃つみたいに、しっかりと固定できる筋力がないと、反動ばかりが辛いだけの状態と同じように、カフェインによって無理やり脳が働こうとするも、呼吸が浅いためにエネルギーが足らず、より一層眠気が強くなっていたと考えられる。

 ちなみに、午前中はいつもこんな調子なのにもかかわらず、午後になってからは、昼食を摂った後であるためか、一日の中でもパフォーマンスが高かった。

 勝手に自分は「昼型」の人間であると思っていたが、意識すれば、いつでも十分に集中できることが分かってよかったと感じている。


修行

 今日の帰り、今日の作業が佳境だったために、退勤ぎりぎりまで忙しく、会社を出るのが遅くなった。
 忙しかったこともあったのか、意識から外れて、気付けば息が浅くなっていた。
 その結果、急いで駅に小走りで向かうが、駅に着くころには息が上がってしまう。やはり、もう少し肺活量に余裕が欲しい。
 そういえば、あのテレビ番組で、意識せずとも息を深くできるようになるようなストレッチが紹介されていたような…

 電車の中で息を整えつつも、そんな考えにふけっていた僕の横目に、
 電車のドア越しに、別れを惜しむようにして手を振り合うカップルが映っていた。

 どうやら僕は、まだまだ修行が足りないようだ。


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