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「御社が第一志望です」

  コロナウイルス感染拡大に伴い、当社に寄せられる中途採用の新規求人数も大幅に減少しています。

  ここ数年、求人倍率が1.5倍を超える、空前の“売り手市場”が続いていただけに、求職者にとっても大きな環境変化が起こっていると言えます。

  このような、市場における潮目の変化が生じる際には、必ず転職(就職)活動ノウハウに関する記事がメディアを賑わせます。

  そして残念なことに、そのアドバイスのレベルは決して過去に比べて高まっているとは言えません。(自戒を込めて)

  中でも私がもっとも違和感を覚えるのは、「御社が第一志望です」と答えましょう、というアドバイスです。(勿論、第一志望の会社から訊かれたら素直にそう答えた方がよいことは言うまでもありません)

  そもそも中途採用(即戦力採用)の面接で、「当社の志望順位は?」と直接的に訊かれることはそんなに多くないはずです。むしろ、「他にどんな企業に応募しているか」というような質問が一般的です。

  多くのノウハウ本(記事)では、「御社(A社)のほかにB社とC社を受けていますが、御社から内定が出たら御社に決めます」と答えることを勧めていますが、本当にそれでいいのでしょうか。

  まずこの答は質問に対して真正面から答えていません。

  アドバイスは、はなからその会社への志望意欲をアピールすべきという前提で書かれていますが、もし私が面接官だとしたら、「(そんなこと訊いてないから)」と感じるでしょう。

  質問は「他に受けている会社」です。B社とC社であるという事実に言葉を足すとしたら、その2社(A、B、Cの3社)を受けている理由です。

  例えば、「B社とC社です。どちらも御社と同様に組織構造がフラットで現場に比較的権限が委ねられていると言われているからです。」というのはどうでしょうか。

  このように答えるためには、自分が何を重視して会社選びを行なうかという判断軸を明確にする必要がありますし、その“共通点”を持つ企業だけに応募したとしたら、次に各社間の“違い”を探す、という面接の目的を具体化することにも繋がります。

  SNSではネガティブなことは絶対に呟かない、ということを信条としている私ではありますが、人材紹介コンサルタントや転職指南のプロを自称する人が、「御社が第一志望ですと答えましょう」というアドバイスをしないようにすることが、業界のレベルを半歩上げるきっかけになるのではないかと(非難を覚悟で)申し上げたいと思います。


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