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リモートワーク、リーダーの仕事(後編)

  それでは長年対面を前提とする属人的なコミュニケーション力や“職場の雰囲気作り”によって組織マネジメントに成功してきた管理者は、それに加えてどのような行動(仕事)でリーダーの役割を果たす必要があるのでしょうか。

  ひとつの事例として宝仙学園高等学校の例をご紹介します。(President Online から「東京の名物女子ダンス部が取り組む「オンライン部活」の中身」※同校の富士晴英校長による寄稿)

    4月7日に「緊急事態宣言」が発令されるというインフォメーションを受けた富士校長は急遽発令前に始業式と入学式をオンラインで決行する意思決定をします。(6日に始業式、翌7日に入学式をともにオンラインで決行)

  解除が予想された5月7日を待っていては学校機能がまるまる1ヶ月停止してしまうと考えた上での迅速な意思決定でした。

  教員たちにとっても慣れないリモート環境の中で、「とにかくやってみよう!」という機運が高まり、「女子部ダンス部」顧問の氷室薫教員はオンラインで女子部ダンス部の指導に挑戦します。(同行女子部のダンス部は世界大会に出場するほどの実力を持つ部活動です)

  氷室教諭は、3密禁止により集まって活動をすることはできなかった部員たちの「つながりたい」という熱い想いに応えるため、生徒たちがリアルの部活に求めていた情熱をオンラインで再現できないかと試みます。

  このオンライン部活では、基本のダンスを練習するためのレッスン動画や、ビデオ会議アプリで教員や先輩部員がダンスの動きを説明し、部員たちはそれぞれの場所で実践、「自撮りレッスン動画」を送り合ってダンス指導するというもので、時にオンラインによるマンツーマン指導まで行ないます。

  すると、こうしたやり取りを続けているうちに、レッスンを受けているだけだった生徒達から双方向の情報発信が生まれていったといいます。

  そうして生まれたのがダンスリレー動画です。

  これは、氷室教諭がある部員に送ったダンスの実演動画に対し、その部員が実演ダンスの動画とともにその解説動画を制作して別の部員へと展開。こうした形で次々とダンス動画をリレーしていったのです。

  この活動から部員たちは「世界大会で仲良くなった海外のダンサーたちにもこの輪を拡げ、ワールドワイドにダンスリレーでつながっていくような動画を作りたい」という希望を話し合っているといいます。

  世界大会に出場するため、日々猛特訓を重ねる中で育まれた信頼関係をベースに、オンライン部活を通じて顧問と部員たちの心は一つになり、アメーバのように夢と希望が膨らんでいくのです。


  在宅ワークは、それに慣れた社員が少ないのと同時に、それに熟達したリーダーも多くありません。すなわち、「こうすれば成功する」という方程式はないのです。

  リーダーは、重要な意思決定は自ら行なった上、全てをトップダウンで進めようとするのではなく旗振り役になれる人物を冷静に見いだすこと、それと同時に自らもプレイヤーとしてどうすればパフォーマンスが上がるかを試行錯誤することで、「指導」と「自発性の誘発」をバランスよく行なっていく必要があることがこの記事から解ります。

  一方で、いかにして従来と同じやり方を在宅で“やらせるか”という観点からしか考えられないリーダーが、過度な監視と干渉(=リモハラ)によって、組織状態とメンバーのパフォーマンスを低下させていくのです。



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