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マクドナルドで買えるものは・・・

ITmediaビジネスオンラインから、『サラダマックが大失敗した訳』。

 2006年に発売された「サラダマック」は、当時の健康ブームに乗ったタイムリーな企画で、尚且つ綿密なマーケティング調査に基いて開発・発売したものであるにも関わらずほとんど売れることなく”廃盤”になりました。

 記事は、「(健康的でないものよりは)健康的なものがいい」という一般的な感覚や、マクドナルド社のアンケートに対する「ヘルシーじゃないからマクドナルドには行かない」という回答といった事実【=合理性】通りに消費者は行動しない、ということを行動経済学の観点から解説しています。

 このことを、別のコラムに書かれた内容から考察すると、そこにはもう一つの【合理性】が存在することが解ります。
※日本マクドナルド劇的回復の理由【後編】 (2018年)

 すなわち、マクドナルドの商品は「ハンバーガー」ですが、同社が販売している本質的な価値は「背徳感」だということです。その前提で「サラダマック」について考えてみると、「背徳感」を求めて来店したお客の目になど留まるはずがないことがわかります。

 一方、同じ「ハンバーガー」を商品とするモスバーガーの場合は話が違います。創業時から美味しさとともに「安心・安全・健康」を前面に打ち出し、国産肉100%や協力農家で無農薬栽培した「モスの生野菜」を用いてアフターオーダー方式で提供する、言わば「背徳感」の対極にある価値を提供してるのです。

 不況になると、既存の商品・サービスだけでは売上を維持できないのではないかと不安になるのは当然です。また、健康ブームのようなトレンドには「乗り遅れてはならない」という無意識の焦りが生じます。

 しかし、そこでふと立ち止まって考えなければならないことは、自社がそれをやる『必然性』であり、自社商品の本質的な価値定義です。

 自社の歴史や成立ち、それにより生成された固有の強み、従業員の拠り所となっているこだわり。これらがあるからこそ提供することができる固有の提供価値を損なわずに機会を捉えるには、どんな”自社らしさ”を打ち出せばよいか。

「背徳感」というオンリーワンの提供価値を持ちながら、安易に健康ブームに乗ろうとしたマクドナルド社の失敗は、「自社商品はハンバーガーだ」×「今は健康ブームだ」という間違った掛け算を行なった結果なのであり、私たちに「自社の存在理由(パーパス)とは何か」、「自社の競争優位とは何か」を改めて考えるきっかけとヒントを与えてくれるものです。

 「私たちは人材を紹介する会社だ」×「今はデジタル化が進む時代だ」、という奥行きのない事業定義の先にあるのは、血みどろのレッドオーシャンか、そもそも頭上を砲弾が飛び交うだけで勝ちも負けもしない南海の孤島かのどちらかです。

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