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ヤマセミの歌 その1「夜明け前」


嘴が泥だらけのヤマセミは巣穴掘をしている証拠です

 1979年の春から始めたヤマセミ観察。出勤前にちょこっと見ては職場に遅れないように観察現場から直行。生息しているのはわかっているがそう簡単には逢えないから燃える。滅多に逢えないからさらに夢中になって現地に通う。気づけば13年。最初は逢えないから通い。次第に相手の様子がわかり、姿をみることが出来るようになるから一気にテンションが上がるからこれまた止まらなくなる。自宅を早朝3時に車で出て、現場到着4時半。6時過ぎに現地を出て職場に直行する。父や兄弟の影響で動物好きとなったと思う。だから当然のように動物園の飼育係なった。職場が職場だから生き物を観察している現場から職場に直行する行為はごく自然なこととして理解があった。他の職種であったら場合によっては「あいつちょっとおかしいじゃないの?」。動物園勤務だと同僚達が「野生に合わせるのが当然」でいけちゃうのが気が楽だった。偶然ではあったが当時担当していたのが鳥類のほとんどの種。また運が良いことにこれまで一度も繁殖に成功していなかった絶滅危惧種の鳥類の繁殖に成功し、繁殖させるポイントを見つけることができたことも同僚からの理解を得る助けとなったと思う。野外を飛び回るヤマセミは決して早くはない。飛行のスピードは野鳥の中でも最下位から数えた方が早い。とても穏やかな羽ばたきだ。どのように表現したら良いだろう。「水面をスケート選手のように滑るミズスマシが空を飛んでいる」。そんな感じかな〜。ヤマセミが暮らしていたのは開発が進む農村地帯。調整区域が解除されるとあっと言う間に住宅地となってしまい場所でもあった。

真冬の山奥の渓流に潜る著者

(なぜそこにヤマセミが住んでいるのか、さまざまなヒントを掴むために真冬の山奥の渓流にも潜りながら魚の調査をしました。)

「ヤマセミの歌」はヤマセミの観察を29歳から現在(71歳)も続けている本人が様々なエピソードなどを盛り込みながら全て自身が直接観察したことや、ヤマセミの姿や暮らしを紹介しながら生態や観察の仕方とポイントなどをわかりやすく解説します。ヤマセミに一度は会ってみたい。ヤマセミの観察を始めたい。ヤマセミ以外の生き物達のことをもっと知りたい。調べたい。でも調べかたが今ひとつわからない。「ヤマセミの歌」はお悩みを解決て希望を叶えるためのテクニックや実践的なヒントが沢山詰まっていますので、参考になる箇所がありましたら嬉しく思います。

ヤマセミとは

ヤマセミはブッポウソウ目の野鳥でカワセミの仲間。国内に暮らすカワセミ類はカワセミ、アカショウビン、ヤマセミの3種。カワセミはスズメ程の大きさ。アカショウビンはムクドリ程の大きさで、初夏東南アジア方面から渡ってくる夏鳥。ヤマセミは3種の中では一番大きくハトほど。一年中同一地域に暮らすカワセミと同じ留鳥です。

ヤマセミ

ヤマセミの求愛ダンス

繁殖期の初期だけに行う行動。約3日間程つづく行動で、互いに鳴き会いながら交互に翼を広げて体を上下させて行うカンムリシロムクのボビングデスプレー(カンムリシロムク;一属一種でバリ島に生息)のような動きが美しいです。

求愛ダンス
アブラチャンの木に止まり獲物を狙うヤマセミ

 春の木漏れ日の「アブラチャン」の止まり場で直下(約4メートル下)の水面を見つめるヤマセミ。頭部の冠羽(長さ9センチ)を立てているのは緊張している証です。自然環境の状態や状況によってテリトリーの広さは左右されますが、多くが2キロ〜6キロの範囲だと思います。私が観察しているヤマセミ達は約4キロ範囲内で行動しています。行動範囲の中にどのヤマセミも獲物(魚)を獲るための決まった止まり場があります。紹介している写真は待ち伏せ場所の一つです。

カワセミ

カワセミ

 カワセミの繁殖期のテリトリーは環境にもよりますが約800メートル。主な食物は魚類ですが、ザリガニ、トンボ、カナヘビ、サワガニ、バッタと多様です。雌雄の体の大きさはほぼ同一。違いは嘴です。オスの嘴の色はほぼ黒一色なのに対して雌は嘴の下側が赤っぽくなっています。農村地帯よりも街中の河川や公園の水辺で多くみられます。原因は農薬散布が無関係ではないと思います。農村地帯の除草剤や農薬の使用で水域の環境が悪化し、食物とする生物の減少が考えられます。これと比較して街中や公園の水辺では農薬、除草剤の直接的な被害が少ないのではないでしょうか。

アカショウビン

アカショウビン

アカショウビンは夏鳥です。5月の連休ごろに渓流沿いの林から神秘的な独特な鳴き声が聞こえてきます。アカショウビンです。ザリガニなどを捕らえると「バリバリ」を嘴で砕いてしまい、たくまし嘴に驚きです。魚も捕らえていますが、ヤマアカガエル、カジカ、サワガニ、トカゲ、ヘビなどを好んで食しています。雌雄同色ですが雄の方が雌よりも嘴がシャクレ上がっています。森や林から出ることはほとんどなく、秋の渡りの時に都市の公園に立ち寄ったりします。

つづく

文・写真 じんぼけんいちろ
絵 じんぼかおり

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