見出し画像

ヤマセミの歌 その4「3年が過ぎて」


子供たちにオイカワ(魚)を運ぶチャチャの奥様。距離は約4メートル程
(エクタクロムA S A200・ニコンF2ホトミック・135ミリ使用)

参考までに
「カメラレンズついてはど素人だが135ミリレンズ人のポートレート写真を撮るのに適しているらしい。人の目に映ったと同じ大きさで映るらしい。」

チャチャとの出会い

 朝靄がかかる早朝。ヤマセミを観察開始し始めて3年が過ぎていたある日のこと。1羽のヤマセミの様子がガラリと変わった。最初は偶然かと思った。いつものように川岸の護岸に座り込む、きたきりスズメの自分の近く(5メートル程)の距離に下流から突然飛んできたヤマセミ1羽が舞い降りた。冠羽を思いっきり逆立てキョ、キョ。何秒ぐらいだっただろうか。映像は焼き付いているが時間の経過は全く見当がつかない興奮状態。ただただ石になっていたような気がする。瞬き、呼吸も停止状態となった。

チャチャ(ヤマセミに付けた愛称)との衝撃な出会いだった。チャチャとの出会いがカメラを使うきっかけとなった。思い出と言うか、記録と言うか理屈抜きに写真に納めたいと真から思った。

念願の中古カメラを7万円で手に入れた。新品などとても手が出ない。憧れていたニコンF2ホトミック。ブラックボデイ。シャッターボタンを押すと「バシ」と重く歯切れの良い音がたまらない。高級車のドアを閉めるときの音。

チャチャはあの日を境に毎回姿を見せてくれるようになった。5メートル程離れた対岸のオニグルミの小枝で休息。リラックス状態は延々とつづくようになってきた。なんてコッタ。こんな日が来るなんて。最高だ。何度もでっかい声の独り言でテンションあがりっぱなし。ファインダーを覗くとチャチャと目が合った。手の震えを体の中に押し込めるようにしながら重いシャッタ音に興奮がおさまらない。現像が上がってくると手振れで曇りガラスの裏にチャチャがいるようだった。

使っていたフイルムは「エクタクロム、A S A200、撮影枚数36」。一本800円。40年ほど前の値段だ。全てスライド。現像にもそれなりの金額がかかる。一回の撮影で4〜5本のフイルムをつかう。現代のようなデジカメみたいに気軽にシャッタを押せない。毎月撮影に7万円ほどの出費がキツかた〜。

チャチャとの出会いでわからなかったこと、疑問がどんどん解決していった。巣穴掘りもその一つ。垂直の崖にどのようにして巣穴のトンネルを掘るの?土の排出ってどうするの?

チャチャの彼女(奥様)は遠目でこちらの様子を伺っていたが、旦那の様子を見てかどうかは定かではないが次第に距離を詰めて挨拶してくれるようになってきた。

コミュニケーション

野生動物、家畜を問わず相手とのコミニケーションを得る場合に大切なことはただ一つ。こちらから動かないということ。相手がこちらを観察して近づいてきた時に「よくきたね〜えらいよ〜」これがコツ。こちらから近づけばただただ逃げるだけ。つまり「我慢」だ。

ワンちゃんを久日ぶりに散歩。リードを解放したとしよう。ワンちゃんは楽しく走り回る。飼い主さんが呼んでもちょっと知らんぷり。やっと戻ってきたワンチャンを叱り飛ばす飼い主。再び離されたワンちゃんは飼い主が近づいていくと逃げるようになってしまう。でも、飼い主さんが態度を変えて「久しぶりだから仕方ない」と思いひたすらワンちゃんが戻るのを待ったら。そして遊び疲れたワンちゃんが戻るってきた。メチャクチャほめてあげる。次からほめてもらうためにぶっ飛んで戻ってくるようになる。「我慢」しよう。

ヤマセミは何年も前からきたきりスズメの自分を見ていたはず。野生動物は自身の判断をほんの少しでも誤れば命を落とす世界観の中で日々暮らしている。

チャチャたちの巣穴掘り

 チャチャたちは間近で巣穴堀を見せてくれた。1984年3月20日。観察に通い始めて6年が経っていた。

(エクタクロムA S A200・ニコンF2ホトミック・300ミリ使用)

巣穴掘りは地域にもよるけど、3月20頃から始まる。夫婦で励まし合いながら早朝と夕方に集中して頑張る。この時期は嘴、脚など体が汚れるから頻繁に水風呂に飛び込む。言い換えれば、早春に頻繁に水浴びしているヤマセミを見たら、巣穴掘りの最中。「がんばれ〜」の一声かけて欲しい。

泥だらけになって巣穴を掘りするチャチャ。
交代した奥様を励ますコールがカッコイイ

(エクタクロムA S A200・ニコンF2ホトミック・135ミリ使用)

ヤマセミの脚

ヤマセミの脚は身体に居合わず超貧弱ぽい(見た目だけだけど)。
ヤマセミたちが所属するグループは「ブッポウソウ目」に分類されている。この仲間の特徴は足の指どうしがくっ付いている傾向がある。なぜくっ付いているの?〜見当もつかなかった。チャチャ夫婦が教えてくれるまでは。結構な専門書でも脚には触れていない。印象に残った解説は「なんの役にも立たない足」という表現だった。でも違っていた。巣穴からおもいっきり土を蹴り飛ばしていた。大いに役にたっているじゃん〜。形はスマートだがモグラの足みたいだ。鶴のように足が長かったら自分だけが入れるようなトンネルなんて掘れないよな〜。考えてみればインコやオオム、キツツキなど巣穴を掘る鳥ってみんな?可愛いい足じゃん〜。

ヤマセミの合趾足。
(コダックA S A64・ニコンF2ホトミック135ミリ)


つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?