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印象をデザインし、知覚品質を高める

今回は「印象」について書きます。

デザインから受け取る印象はとても大切であり、デザイナーはそれをコントロールしています。



発信する側と受け取る側

デザインには「発信する側」と「受け取る側」が存在し、発信する側が与えたい印象と、受け取る側が抱く印象があります。それを限りなく一致させることが必要になります。

<発信する側>
事業会社の場合:自社とそのサービス
制作会社の場合:クライアントとそのサービス

<受け取る側>
ターゲット、ペルソナ


では、両者の印象をどのように一致させるのか。


印象の方向性

当たり前のことですが、デザインに着手する前に2者を言語化します。自分たちがどのように思われたいのか、そしてそう思われたい相手はどんな人なのか。より詳しく具体的に。

その後コンセプトが明確になります。

コンセプトが決まり、ここでようやく印象の方向性を考えます。よく「◯◯感」「◯◯性」などという言葉がデザイナーの間では交わされます。これが印象です。デザインを見て感じる印象、感じ取ってほしい印象の方向性を決め言語化します。

今回このような図表を作成してみました。印象の方向性を決める際に使われることが多いであろう8つの方向性についてまとめました。

それぞれの印象が、受け取る側にとってどのような効果をもたらすのかを言語化しました。(受け取る側の視点で書きました)

1. 高級感
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、最上級のものとして特別感ある印象を抱く。手の届かないような非日常・憧れ・夢のような至福の時を体感させる。高尚/高価なものであり日常的に手にするものではない。

2. 安心・信頼
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、安心感があり信じても問題ないという上質な印象を抱く。その企業の安定した基盤に信頼を感じ、身を任せようという安堵する感情が生まれる。

3. 先進性
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、過去に類を見ない革新的なもののような印象を抱く。まだ経験したことのない新しいテクノロジー・情報等が得られるのではないかという大きな期待感が生まれる。

4. 洗練・上質
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、秘めた拘り・コンセプトを感じさせる。磨き上げた製品自体やそこに込めた想いを、丁寧に相手へ届けようとする一手間が内包された様を感じ取ることができる。

5. 意志・強固
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、強く結束されたような熱いメッセージが内包された印象を抱く。未来を自身の力で変えていこうとする意志、または何かに挑戦する強い意志が感じ取れる。

6. 親近感
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、自身の想いや生活に適した程良い節度ある印象を抱く。刺激や驚きは無く、日常生活に溶け込み、柔らかく微笑み寄り添ってくれるような優しさを感じ取れる。

7. 独自性・高感度
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、高いオリジナリティを有し個性的であるような印象を抱く。他と類似物と比べ感度が高く「これを選ぶ自分が好きだ」というような満足感が得られる。

8. 歴史・レトロ
企業またはその製品の機能・効能・訴求内容に対し、深く長いブランドの歴史を感じ、且つそれが魅力的なストーリーであるかのような印象を抱く。特にモノクロ表現が、時間の経過・時の流れを趣深く感じさせる。


以上です。もちろん上記以外の印象の方向性も存在するでしょう。そして一つの方向性のみでデザインを進行するのではなく、2つ以上を掛け合わせることでより詳細な表現すべき印象に辿り着けるのではないかと思います。


コンセプトとの違い

この「◯◯感」「◯◯性」という言葉はコンセプトではありません。あくまでもデザインの印象、トーン&マナーなどの方向性を指し示すものです。

一つコンセプトの例をあげると、タイミー全社noteのコンセプトは「架け橋」です。このnoteは「タイミー社員」と「読者」の架け橋となりたい、という想いが込められています。また「ワーカーの働きたい時間」と「企業の働いてほしい時間」のマッチング、という自社サービスの特徴も内包しています。その考えを軸に、アーチ状のデザインモチーフを活用。それを安心/信頼・親近感という2つの印象を結合させた表現で定着させています。

よって、コンセプトをどのように「表現」するか。「表現」するとは何か。 ここが「印象の方向性をデザインする」という今回書きたかった核となる部分です。


まとめ

自社のサービスが非常に良いものである、という事実をそのままデザインで表現し、認識齟齬なく相手に届ける必要があります。大前提ですが、ビジュアルを見た人に「品質やセキュリティ面は大丈夫かな…?そもそも信用できる企業なのかな…?」などと一瞬でも感じさせてはいけません。知覚品質が高い状態を創り出すことがデザインに求められます。そして「届けたい印象」と「抱かれる印象」を一致させるため最善を尽くします。

これらの「印象」や「知覚品質」など、捉えどころのない、定義できない、漠然とした「美についての感覚」にまつわる事象を考え抜くことで、自身の考えを明確にしていきたいと思います。

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