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マネーフォワード MEのユーザーオンボーディングを超高速改善した結果

お金の見える化アプリ「マネーフォワード ME」のアプリデザインをしている池内(@KD6JOE)です。この記事ではマネーフォワード MEで行ったユーザーオンボーディングの改善内容と、そこから得た学びをお話します。

マネーフォワード MEについて

まずマネーフォワード MEについてご紹介します。マネーフォワード MEとは、ネットバンキングやクレジットカードを連携すると、自動で入出金を取得して、お金の流れを見える化してくれるアプリです。

毎日の支出を、食費や日用品などのカテゴリーに自動で分類もしれくれます。今月何にお金を使ったかまるわかりです。ぜひ使ってみてください。

ユーザーオンボーディングとは

ユーザーオンボーディングとは、端的に言えば、ユーザーの初回利用時に「このサービス最高!!」と思ってもらうためのプロセスのことです。

どんなに素晴らしいサービス内容でも、それがユーザーに伝わらないと二度と使われません。いかにサービスはすばらしいかをユーザーに伝え、体験してもらうかがユーザーオンボーディングを成功させるポイントになります。

ユーザーオンボーディングの改善で追う指標は「新規ユーザーの継続率」です。この指標を継続的に追って改善していきます。

ユーザーオンボーディングについてはこちらの本がわかりやすくオススメです。

改善内容と指標

ユーザーオンボーディングの範囲は幅広いですが、今回マネーフォワード MEではアプリをインストールしてからホーム画面を開くまでの、ウォークスルー画面の改修を行いました。改善前のウォークスルー画面は改善の余地が大きくあったからです。

ウォークスルーでは、リニアなナビゲーションに沿って「キーアクション」をユーザーに行ってもらいます。「キーアクション」とは「ユーザーがこれをやったら継続率が伸びる」というアクションです。

マネーフォワード MEでの「キーアクション」は「銀行やクレジットカードの連携」です。連携しなければ「自動で入出金を把握」や「自動で支出を分類」ができないので、連携しないユーザーはガクンと継続率が下がります。

今回の改善では、ウォークスルーでの「銀行やクレジットカードの連携率」を高めることを目標としました。

立案・実施・分析をサイクルで回す

実際の動きとしては、立案(関連メンバーで施策のアイデア出し)と、実施(デザイン・開発・リリース)、分析のサイクルを回していきました。

一度にいろんな施策を行うと、どの施策が効果があり、どの施策が悪影響あったかがわからなくなるので、細かい変更ごとにリリースして分析を行いました。

分析では初回起動からキーアクションまでのどこで離脱しているかキーアクションまでのファネル分析を行い、成果の良し悪しを判断しました。下図はそのイメージ図です。(具体的な数字は外部に出せないのでこれでご容赦ください。)

施策ごとに、各ステップの離脱率の変化と、ファネル全体の離脱率の変化を見ました。個別のステップでは離脱率が改善していても、別のステップに影響し、全体の離脱率が悪化することが多々あります。

結果

現時点の最新のUIがこちらです。まだすべての課題は解消できていませんが、iOS版では改善前と比較して、ウォークスルーでのキーアクションの達成率を8%アップできました。

今回の改善サイクルで得た学び

成功は試行回数に比例する
現時点のUIは改善した施策のみ残していますが、失敗した施策もたくさんありました。

どんなに仮説を立ててアイデアを考えても失敗は必ずあります。サービスを成長させるには、既存ユーザーが大量離脱するなどの破壊的な失敗は回避した上で、細かい失敗を受け入れ、多くの施策を試行するのが効果的です。

多くの試行を行うには、ABテストなどの環境構築はもちろんのこと、複雑な承認プロセスを簡略化し、現場のメンバーを信頼して裁量を渡すことが必要です。行き過ぎたリスク回避思考はサービスの成長を鈍化させます。

認知負荷を高める要素は極限までなくす
冗長な画面や不要なコンポーネントを無くすことで離脱率を改善できました。逆に良かれと思って追加したボタンのせいで、離脱率が悪化したこともありました。

ユーザーに余計な認知負荷をかけている要素を削ることで、離脱率は少なくできるということです。1つのボタンの有無が大きく影響するので、デザイナーはその見極めが重要な仕事になります。

UIコンポーネントの正しい知識
ユーザーがなにかを入力する画面でPage Controlを使っていたせいで、多くの離脱が発生していました。Page Controlだとどういうジェスチャーを行えば入力が完了するのかわかりづらいからだと推測します。

これは、はじめからコンポーネントの適した使い方の知識があれば回避できた箇所でした。感覚で適当にコンポーネントを使うのでなく、ガイドラインくらいは一読してからデザインしたほうが、サービスの成長への近道になります。

マネーフォワード MEで行ったユーザーオンボーディング改善については以上です。今後もマネーフォワード MEの改善を続けていくのでよろしくおねがいします。