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久々に社長になろう。最高に魅力的な怪しいビジネスの提案が来た話。

「社長」という肩書きに憧れる人は多いらしい。怪しい情報商材屋はこぞって「○○社長」と名乗っている。頭の弱い人の漠然とした憧れが、今日もインターネットの底で換金され続けている。

往々にして、漠然とした憧れは現実を正しく反映していないものだ。社長なんて楽しいものでは全くない。

従業員はサボりまくるし、クビにしたくてもできないし、金庫の金を持ち逃げする。人間不信になりやすいポジションだ。

大口の仕事は突然なくなるし、クライアントは料金を払わずに逃げるし、ミスると損害賠償を請求される。大赤字にひたすら頭を抱えるポジションだ。

給料を払う度に鬼のように高い社会保険を取られるし、新規雇用やら決算やらの度に書類仕事に追われるし、税務調査が入って業務がストップする。無限の雑務に悩まされるポジションだ。


降りかかってくる毎日の頭痛の種を楽しめる人は少ないだろう。僕も3年前くらいまで一応社長だったけれど、全然楽しくなかった。

事業が全く上手くいかず、私財を投入して従業員の給料を払っていたのに、「あいつは安月給で人をこき使って私腹を肥やしている。極悪非道だ」と罵られたりした。僕の私腹は肥やすどころか脂肪を全部吸引されてガリガリなんですが…と思った。


人をそれなりに雇ってそれなりの会社をやっていくのは、難しい。人を働かせて利益に変えるシステムを作らないといけない。僕はその能力も適性も興味もなかった。

だから、もう二度とやらないだろうと思っていた。業務委託で仕事をお願いしたり、レベニューシェアで誰かと協働することはあるけれど、「社長と従業員」みたいな、ベタッとした関係を作ることはないだろう。3年前に会社を潰した時、強く思った。


……そして今、久しぶりに社長をやる気になっている。あまりにも面白いオファーをもらったからだ。「こういうビジネスで社長をやってくれないか」と。


突然来た投げ銭とDM

「いつも色々堀元さんのコンテンツ見てます!少額ですが投げ銭させてください!」

そんなメッセージとともに、投げ銭が送られてきた。お礼を言ってありがたく受け取る。投げ銭は何度もらっても嬉しいものだ。

ここでやり取りが終わるかと思いきや、彼からは続きが送られてきた。

「今こういうビジネスやろうと思ってるんですけど、よかったら手伝ってもらえませんか?」

メッセージに簡単な企画書が添付されている。


一瞬、「めんどくさいな」と思った。

インターネット芸人として生活していると、「俺のビジネスアイディアを聴け!」という、熱気バサラ的なDMがしょっちゅう来る。

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(画像引用元:こちら


ヒモになりたい男性とヒモを飼いたい女性のマッチングサイトがバズった時などはピークで、熱気バサラDMが一ヶ月に20件くらい来ていた。

たいてい、「こういうWEBサービス作りたいので一緒にやりませんか?堀元さんが作ってください!収益は折半で!」という、お前は何もせず収益を搾取するのかよ的な提案である。

提案されるアイディアもまず間違いなくゴミで、「思いついたことをどんどんメモして共有できるサービスです!」とかそんなのばっかりだった。お前が今僕にDMしてるサービス、Twitterっていうんだけど知ってる?思いついたことをどんどんメモして共有できるサービスなんだけど…と思った。


ということで、「俺のビジネスアイディアを見てくれ!」と言われると、大量のゴミを見た経験が反射的に思い出されるのである。パブロフの犬みたいなものだ。

しかしまあ、投げ銭もしてくれたことだし、ちゃんと見よう。添付ファイルを開く。

そして企画書を一目見た瞬間、僕の不安は一撃で雲散霧消した。「あっ、完璧なビジネスモデルだ」と思った。僕は村上春樹よろしく「完璧なビジネスモデルなどは存在しない」と思っていたのだが、実は存在していたのだ、ここに。


それは、世界的にも例を見ない奇妙なビジネスであり、アングラのにおいがする怪しげなビジネスでもあり、スティーブ・ジョブズ的な革命の要素があるビジネスでもある。

あまりにも面白かったので、今日はこのオファーについて書いてみようと思う。

詳細は諸般の事情で有料部分にしか書けないが、面白いポイントの概要だけは無料部分で説明する。

まず特筆すべき部分は2点。「①スティーブ・ジョブズ的な革命」でありながら、「②矢面に立つ弁慶を必要とする」という奇妙さである。


①スティーブ・ジョブズ的な革命

「世界を変えたAppleの商品を1つ挙げろ」と言われれば、多くの人は「iPhone」と即答するだろう。実際、その答えは妥当だ。MacBookよりもAirpods Proよりも、iPhoneは世界を変えた。iPhoneのお陰でスマートフォンは爆発的に普及して、世界は一変したからだ。15年前にiPhoneが生まれなければ、今の我々の生活は全く違うものになっていたかもしれない。

だけど、iPhoneの誕生には段取りがあった。iPodというデバイスと、iTunesというプラットフォームだ。まずこの2つがあって、それを電話に合体させるという発想があったからiPhoneは生まれた。革命は一晩で起きたワケではなく、水面下で何年もかけて起きていた。革命はイメージよりもゆっくり進行するものだ。

これは、世界史における実際の革命に似ている。フランス革命もそうだった。バスティーユ監獄が襲撃された時にルイ16世が「暴動か?」と聞き、側近が「いいえ。陛下、これは暴動ではありません。革命です」と答えた逸話はあまりにも有名だが、革命はこの瞬間に起こったワケではない。ジワジワと何年もかけて進行していた革命が、この日一気に顕在化しただけだ。


だから、iPodとiTunesという発明こそが、本当に重要な発明だったと言えるかもしれない。これこそが革命の萌芽であり、全ての始まりだったのだから。

iTunesの革命的だったところはどこか。違法で粗悪だったものを、適法で良質なものに変えたことだ。

当時、ネット回線を通して音楽を手に入れるという発想が若者に浸透しつつあったが、これはアングラ文化で流通する違法コピーであり、音質が悪いファイルも多かった。ツールも使いにくく、コンピュータオタクでなければつまづいてしまった。

iTunesはそれを改善した。著作権周りをきちんと整備して、公式の音楽を高音質で配布した。もちろんツールは使いやすく、誰でも簡単にiPodに同期して自由に音楽を持ち運べた。


今回、僕のところに持ち込まれたビジネスアイディアも、iTunesに似ている。現在はアングラ文化として流通している違法で粗悪なものを、適法で良質なものに変えようとしている。

つまりこれは、iTunes的な革命なのである。単にサービスとして優れているだけでなく、ソーシャルグッドでもある。


②矢面に立つ弁慶が必要

普通、「こういうビジネスを始めるから社長をやらないか」というオファーが来ることはあまりない。自分でやるからだ。ベンチャー企業は言い出しっぺが社長(代表取締役)になるのが普通である。

しかし、今回のビジネスはそうではない。社長になることによる社会的リスクが存在している。

言い出した人(Aさんとしよう)は社会的な地位があり、本業にダメージを受ける可能性がある。だから、自分で社長をやりたがっておらず、社会的な地位が全くない人間に代理をやらせたがっていた。つまり僕である。しがないインターネット芸人は失うものがない。

「矢面に立つ」という表現がこれほどピッタリなことも珍しい。前線は矢が飛んできて危険なので、Aさんはそこに立ちたくない。そこで僕の出番である。何しろ僕は矢が刺さっても怖くないというか、既に矢が刺さりまくっているようなものである。社会的弁慶

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(画像引用元:https://ameblo.jp/salaso10/entry-12644755511.html


矢がいっぱい刺さっていることが役に立つ時が来るのだから、まったく人生ってヤツは面白い。


また、全く新しいサービスなので、それを説明して広める能力が持った人間であることが望ましい。矢面に立つ人間がビジョンを喋るのが自然だ。

そういう意味でも、僕はまあまあ適任である。前例のないものをどうにかこうにかコンテンツに仕立て上げるのが僕の基幹スキルだ。人の悪口をアカデミックに書く有料マガジンで2年間食っているんだから、そこだけは誇れる技能だろう。そんなものを誇らなくて済む人生を送りたかったけれど


ジョブズが弁慶にならないために

iTunes的な革命でありソーシャルグッドな事業でありながらも、業種がアングラなので弁慶になる可能性がある。今回のアイディアにはそういうアンバランスさがあって、それが本記事の面白ポイントでもある。

ということで、以下、具体的なビジネスモデルについて書いていく。

現段階では公にすべきでない情報や、正式決定前の話が多分に含まれるので、以下有料になる。気になる方は課金して読んで欲しい。完璧なアングラビジネスモデルに興味がある人には特にオススメ。

単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。7月は4本更新なので、バラバラに買うより2.4倍オトク。


それでは早速、ビジネスの概要を見ていこう…。


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