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ビジネスとして考える作家業。売上を公開しつつ、文筆で食うための戦略を考える。

1年ぶりに自分の本が出た。ゆる言語学ラジオ名義の、『言語沼』である。

相方の水野とアレコレ言いながら書いた本だ。共著を書くのは初めてだったので、楽しい経験になった。水野が骨格をドバっと書いて、僕が肉付けする、という役割分担だった。

僕の書いた部分に対して、水野が「この章、オチが弱いんだけどもうちょっと斬新なたとえない?」と注文をつけてくるので「何だこいつ俺の文章に文句つけやがって」と内心思いつつ、「悔しいけどその通りだなぁ」と彼の指摘の正しさに打ちひしがれた。

そして、「科学史上の発見で、ノイズだと思ってたけど実は意味があったもの、とかない? そういうのがあるとオチが締まりそう」と振られて、「あ、あるわ。宇宙マイクロ波背景放射じゃん」「何それ?」「こういうヤツ」「それいいじゃないですか。それでいこうよ」といった調子で、何度かオチを書き直しさせられた。

もちろん、僕も言われっぱなしだったのではなく、「ここの話は散らかるから丸ごと削ろうぜ」「これヒキが弱いんだけどもっと足せる話ない?」とガンガン注文をつけた。お互いに「こいつうるせえな」と思いながらベストを目指すのがクリエイティブな共同作業である。良い作品は馴れ合いの中には生まれない。

そんなワケで、何だかんだ一人で書いているときよりもブラッシュアップができてよかった。皆さんぜひお買い求めください。公式発売日は4/7なのでAmazonでも書店でもまだ売ってませんが、バリューブックスで既に売ってます。バリューブックス限定の特典動画もついているので、ぜひこちらで買ってくださいませ。


「作家は儲からない」は本当か

1年ぶりに著書も出たことだし、せっかくなので今日は本の話をしようかと思うのだが、『言語沼』についてはゆる言語学ラジオの中で語り尽くしてしまった。(今週末、改めて発売記念動画も出る)

だから、今日は表で言いにくい、お金の話をしたい。書き物に関する収入の話。

「作家はあまり儲からない」とよく言われる。本当だろうか。ある面から考えると、たしかにそうかもしれない。僕もよく「書き物の仕事よりYouTubeの方が儲かる」と話している。YouTuberは本を書くよりは動画をいっぱい作る方が儲かる。

とはいえ、必ずしも「作家は儲からない」とはいえないんじゃないだろうか、とも思う。本が100万部売れれば印税が1億円入ってくるワケだから、それなりに夢のある世界でもある。

「いやいや、今どきミリオンセラーなんて夢物語だから」というのも正論である。ほとんどの本は5000部すら売れない。取らぬ狸の皮算用はいつもそのはるか手前で打ち砕かれる。ミリオンセラーを夢見て書いた本は、達成率0.5%にも届かない。

そうであるとするならば、作家業は宝くじのようなものなのだろうか。大儲けすることもあれば、雀の涙で終わることもあるのか。うーん、それもあまりピンと来ない。


ということで、今日のテーマは、「ビジネスとして見た作家業」だ。

作家だって自営業者なのだから、金勘定なしの芸術家気取りで生きていくのはあまり賢明とは言えない。作家業をビジネスとして捉えて、効率よくお金に変えていくための戦略を考えていくべきだ。

だから、今日は率先して僕がやろう。僕は作家でもあり、経営者でもあるのだから。

せっかくなので、本の印税とか雑誌の原稿料とか、思い切り明らかにしながら書いてみたい。実際の支払調書の写真なども見ながら、臨場感たっぷりにお届けする。これを読むと作家の収入を推定する能力が上がる。(上がったからといって特に何も良いことがないのは言うまでもない)

リアルなお金の話をするので途中から有料になるが、気になる方はぜひ課金して読んでほしい。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。いつ入っても今月書かれた記事は全部読める。金の話が好きな下世話な人には特にオススメ。


連載の原稿料。「やっと金に変わった」感。

つい先日、小説新潮(3月号)の原稿料が振り込まれた。この号から始まった、『読むだけでグングン頭が良くなる下ネタ大全』なる僕の連載の原稿料である。

実際に原稿をガリガリ書いていたのはもう4ヶ月ぐらい前なので、「あ、やっと金に変わったんだ」という驚きがある。物書きは気長な稼業なので、書いてからお金に変わるまで時間差があるものだ。

連載を持ったのは人生初なので、連載の原稿料をもらうのも初めてである。今後は毎月、原稿料が振り込まれてくるワケだ。僕みたいな根無し草には珍しい、安定収入がひとつ増えた。


その金額は……行儀が悪いので表では書かない方がいいような気がする。ここから有料部分に入ろう。


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