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株式市場はバカ。インフルエンサーはなぜ壮大なビジョンを語り続けるのか。

久しぶりに札幌市の実家に滞在している。去年の年末年始は帰省しなかったから、実に2年ぶりに正月を地元で過ごすことになった。

普通は12月30日くらいに移動日を設けると思うけれど、僕は年内のタスクがひたすらに山積みだったので、1月1日に移動することにした。年越しの瞬間までずっと仕事をしていた。「睡眠不足は来年の僕が取り戻す。飛行機で寝る」と言いながら。未来の自分に希望を託すのは慣れている。

でも結局、元日から札幌はとんでもない豪雪で、飛行機はまったく飛ばなかった。年内に仕事納めできなかったアンポンタンを神が狙い撃ちにしている。


それから、取り直した翌日の飛行機も4時間遅れた。遊ぶ約束は次々にリスケしまくった。新年早々先が思いやられる。

今年も、多分なにひとつ予定通りにいかないのだろう。予測不能な世界にひたすら振り回されるだけだ。そうやって生きてきたし、これからもそうやって生きていく。


マジメに考えるのがアホらしくなる本

飛行機は予定通り飛ばないし、会う予定だった旧友とは会えずに終わる。それでも、それなりに楽しく過ごせるのだから人間はたくましい。成田空港で時間を潰しながら読みたかった本を読み終えたし、先延ばしにしていた情報理論の勉強もできた。遅刻しながら合流した地元の飲み会は、十二分に楽しかった。

予定はどうせ破壊されるものだとしたら、あまりマジメに考えない方がいいのかもしれない。その場の空気に身を任せ、テキトウに揺蕩っているのがいいのかもしれない。


空港で『ヤバい経営学』を読みながら、そんなことを考えていた。

ハチャメチャに面白い本だった。「ほとんどの企業買収は失敗する」「アナリストと経営者は癒着不可避」「既存の企業分析本はだいたい的外れ」など、衝撃の事実が次々に羅列される。

そして、この本を読めば読むほど、「事業計画など、マジメに考えるのはアホらしい」と思えてくる。


この本の中で、一番衝撃だった事実はこれ。

・経営者の報酬に対してインセンティブ制度(株価が上がれば報酬が増え、株価が下がれば報酬が減る)を導入することは、株式市場で好意的に受け取られる

・したがって、「インセンティブ制度を導入します!」と発表すると、それだけで株価が上がる

・その後、実際にはインセンティブ制度を導入しなかったとしても、投資家はあまり気づかない。株価は上がったままである。

・投資家は発表しか見ておらず、内実を見ていないので、実態は株価に反映されない。

・つまり、株式市場はバカ

(『ヤバい経営学』p.185~189 )


衝撃のデータと、株式市場はバカであるというおもしろすぎる結論に、大笑いしてしまった。


「株式市場はバカ」というフレーズ、僕が無理やり生み出したワケではなく、普通に本の中に書いてあった

もしかして、株式市場はバカなのだろうか。その答えは、ある程度「正しい」だろう。

(『ヤバい経営学』p.189)

学者が書いた本は語り口が退屈になりがちだが、この本の著者はめちゃくちゃ上手い。たとえ話もジョークもめちゃくちゃハマっていて面白い。

ちゃんとした経営学者が、膨大な論文を紐解きながら、ウィットに富んだ語り口で経営のおもしろ話をする、「これぞ王道の面白い本だ」という感じだった。文句なしにオススメ。経営学者の口から「株式市場はバカ」と聞けて嬉しい。


さて、前述の「制度の導入は発表だけが重要で、実際にはやらなくても構わない」という話、何かに似ていないだろうか?

そう、インフルエンサー界隈に似ているのである。



株価を支える『新世界』

3日前、キングコング西野さんの『新世界』を読んだ。

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